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第61話 操り人形編1




やっぱりあいつは優しすぎる

何であの時俺を殺さなかった・・・・

あの時俺を殺していれば

あいつが死ぬことなんてなかったのに・・・・






レオ達が向かった世界は、都会だった。王国とか、町とか、そんな古い都市ではなく、刹那の世界がもう少しだけ発展したような感じの大都会。

時間は夜であるからか、人の姿はほとんどない。あちこちには高層ビルが立ち並んでおり、街灯が夜の暗闇を照らしている。しかし・・・不気味だった。街灯のおかげで暗闇が和らいでいるものの、人がいないだけでこれだけ不気味になるものとは知らなかった。

都会の不気味さを感じている4人だったが、何よりも初めて見る高いビルに目を奪われていた。それもそのはず、4人の世界はこの世界よりも発展はしていないのだ。こんな建築物、見る機会などなかったのだろう。どうやって建てたのだろうか? なぜこんな高い建物があるのか? などと、それぞれ考えながら興味深そうにビルを見上げていた。


「・・・ん?」


何か黒い物体が、見上げているビルから落ちてくる。・・・何だ? 暗くてよく見えない・・・。目を凝らして見てみるが、周りが暗くてどうしても見えない。

その物体は自分達めがけて落ちてくる。このままだと誰かに直撃してしまうかもしれない。そう思ったレオがみんなに避難するように呼びかけようとしたそのときだった。

その黒い物体のほうから、パパパパ、という重なった銃声が聞こえきた。銃に詳しいレオは音を聞いただけでわかった。軽くて連なっている音を出しているこの銃は・・・・・マシンガンだ。つまり、黒い物体は自分達にマシンガンを発砲し、攻撃したということだ。


「っち、いきなりか・・・!!」


レオは舌打ちをし、ホルスターに入っている神爆銃を両手に取り、構えた。レオの手がぽぅ、と黒く光り、マガジンの中に一発の弾丸が装填される。瞬間、レオは引き金を引き、闇属性の弾丸を自分たちよりも少し離れた地面に発射した。

マシンガンの特徴は、短い時間で何発もの弾丸を撃てる連射性能。だが、連射できるといっても狙いは確実ではない。連射の代償として、狙いの性能はハンドガンに比べればずっと低い。

だが、それを利用した撃ち方として弾幕を作り出す、というものが挙げられる。単発としての命中率は低くとも、弾幕ならば話は別だ。この撃ち方ならば広範囲に弾丸が撃てるし、命中率だって格段に上がる。

レオはそれをわかっていて弾丸を放った。広範囲に撃たれたのなら避ける術がない。かといって防げるというわけでもない。だったら、『弾幕そのものを自分達から逸らせばいいのだ』。

地面に打たれた弾丸は黒いドーム状の空間を作り、空中から放たれた弾丸は軌道を変更し、全てその黒い空間に入っていった。・・・弾丸そのものはあまり重量がないので、レオが短時間で作った弾丸でも簡単に引き付けることができたのだ。

弾丸を全て飲み込んだドーム状の空間は弾の効果が切れて消え去った。それを確認すると、一同は弾丸をばら撒いてきた原因である落ちてくる物体に目を向けた。街灯の明かりが暗闇を照らす範囲に物体が入った瞬間、その物体の正体は明らかになった。


「・・・あぁ? 人かぁ?」


落ちてくるものは物体ではなく、人。暗闇に紛れていたのは身に着けている黒い服のせいだろう。黒いフードは顔から頭をすっぽり隠しているため、顔からは男か女か判断できないが、ガッシリとした体から男を連想させる。その男が真っ直ぐに伸ばしている手には・・・・・自分たちを撃ってきた小型のマシンガンが握られている。丸くて細い銃口に、銃全体が角ばっている。弾丸を一回で大量に放てるような構造になっていることは、ハンドガンよりも大きいサイズそのものが物語っていた。

男は落下しながらも、もう一度レオ達にマシンガンの銃口を向け、引き金に指を当てた。そして指を引き、弾丸が発射されるという一瞬のタイミングで、男の手からマシンガンが離れた。

いや、離れたというのは正しくない。弾かれた、もしくは破壊された勢いで吹っ飛ばされた、というのが正しいか。・・・そう、レオが反射的に神爆銃で男のマシンガンを撃ったのだ。時間がほんの一瞬しかなかったため、何の属性も付加されていない弾だったが、男の手から銃を奪うには十分。男は武器を失ったまま落下してくることになる。そこで、捕獲する。


「・・・・・」


フードで表情がわからないが、男は武器を持っていないというのに動揺した態度は見せなかった。このまま落下すれば敵の中心に突っ込むというのにだ。・・・・・おかしい、何か隠しているのか? 隠す? 武器を・・・・・隠している?

男が懐に手を突っ込んだ瞬間、雷牙は足を曲げ、男に向かって跳んだ。・・・勘が働いたのだ。懐に手を突っ込んだ以上、何かを出してくるのは十中八九間違いない。それを・・・防ぐ!!

自分の間合いまで跳んだとき、男はやはり懐から武器を取り出した。俗に言う、サバイバルナイフだ。鋭く研がれたナイフは、暗闇の中でも光ほど磨きあがっていた。

男は迷うことなく、その鋭いサバイバルナイフで雷牙に切りかかった。空中にいる以上、身動きが取れない。こんなに近い距離だ、身をよじってかわすことなど不可能。つまり、目の前にいる敵にほぼ確実に命中させられるということを前提に、男は切りかかったことになる。

・・・だが、そこに生まれる油断と隙が命取りとなった。


「おらぁッ!!!」


「!?」


絶対命中するという一瞬の隙を、雷牙は逃さなかった。自分を切りつけに振るわれたナイフの軌道に、自らの足をうまく合わせて男の手首を蹴り、ナイフを弾き飛ばした。鋭利なそのナイフはくるくると回転しながら飛んでゆき、コンクリートでできたビルの壁に深々と突き刺さった。


「ッしゃぁあ!!」


「!!? ッが・・・」


蹴りの勢いを使い、雷牙はそのまま男の腹部に拳を入れた。男はたまらず声をあげ、そのまま脱力し、落下していった。


「よっと」


そのまま落ちていけば、この男の体は容赦なく地面に叩きつけられる。それを避けるため、雷牙は気絶している男を空中で抱きかかえて着地した。


「そんで、何でこいつは俺たちを襲ってきたんだ?」


「それはわからないが・・・・・・」


レオは銃を構えて、ビルの一角に銃弾を打ち込んだ。ビルの壁に弾丸が突き刺さり、1つの穴が開いた。


「出て来い。なぜ俺たちを襲う?」


レオがそう言うと、弾丸がめり込んでいるビルの陰から男と同じ格好の女が出てきた。全身が覆われているのに女だと理解できたのは、小柄で体が華奢だったからだ。

女は顔を隠していたフードを取る。・・・・・歳はレオよりも少し下くらいだろう。幼い顔立ちには似合わない鋭い眼光をしている。その目でこちらを睨みつけている。威嚇のつもりだろうが、レオは別に動じた様子を見せず、落ち着いた声で女に言った。


「なぜ俺たちを襲う? 俺たちは別に何もしてないし、何もしようとしていない」


「・・・・・こんな時間に外を出歩いていて、何もしようとしていないなんて信じられない」


「だからそれは・・・・・・」


「だから、排除する」


レオの言葉を無視して一方的に喋ると、女はすっと体勢を低くし、腰のホルスターにセットされていた拳銃を取り出した。手にした拳銃は、男の放ってきたマシンガンタイプではなく、単発式のリボルバータイプのものだった。

女は一瞬で銃を構え、弾丸を放とうと人差し指に力を入れ、発砲しようとした。だが、






ズガンッ!!!






女の拳銃は弾丸を発射せずに女の手から離れた。レオがグリップの底を狙い撃ったのだ。

レオの銃は神器で、弾丸は結晶だ。並の金属で出来た銃など、その2つの前では紙で作ったおもちゃに等しい。拳銃は弾き飛ばされるというよりも、分解されながら女の手から離れていった。


「・・・・・」


「もう一度言う。俺たちは何もしてないし、何かしようともしてない。、俺たちはここら辺に着いたばかりでこの町のことがよくわからなかったんだ。どうすればあんたと戦わずに済むんだ?」


女はレオの問いに答えず、じっとレオ達を睨みつけていた。レオも言うことは言ったのだから何も言わない。他のメンバーも同じだ。お互い何も喋らず、硬直状態が続いた。

数秒か、はたまた数分か経った頃、鋭い視線をレオ達に注いだまま、女は口を開いた。


「・・・・・夜に出歩かなければいい」


「そうすればあんたらと戦わなくていいのか?」


「そうなる。私達はこの町の警護をしているから、あなた達みたいな夜遅くに出歩いている人間を始末する必要があった」


「なるほどな。そんじゃ、こいつはあんたの仲間ってわけか?」


雷牙は抱えている男を差し出すようにして女に尋ねた。


「・・・そう。返してもらえる?」


「ほらよ、気絶してるだけだから安心しな」


女は男を雷牙の腕から受け取ると、器用に背中に背負い込み、そのままレオ達に背を向けて歩き出した。先ほどまで敵視していたレオ達に、背中という隙を見せて堂々とだ。これは・・・・・もう敵意がない、ということなのだろうか?


「おい、ちょっと待ってくれ。俺たちはこれからどうすれば―――」


「適当に宿を取って今夜は大人しくしていればいい。真っ直ぐ行って突き当たりにあるはず」


それだけを言い残して、男を背負った女は闇の中へと消えていった。

女の気配が完全に消えたところで、風花が最初に口を開いた。


「・・・・・なんだったの〜? さっきの女の子〜?」


「警護してるって言ってたよな。そんじゃ、この世界には何かあるってことじゃないのか?


「それは早とちりすぎだと思う。警護なんて、町じゃ当たり前。私の世界も、夜は絶えずに見張りを立ててたよ」


レナの言う通りである。夜は薄暗く、敵が来ても認知しにくいため奇襲にもってこいの時間帯である。そのため、いつ敵が来てもいいように、夜は絶えず見張りを立てておかなければならない。見張りを立てず敵に侵入され、あっけなく町を制圧されて国をのっとられました、ということになっては遅いからだ。

しかし、見張りはそういった外敵からの侵入を防ぐためだけに存在しているのではない。国内や町中で起こる事件、犯罪行為を抑制する効果もある。例えば放火をするとする。時間帯はやはり人気のない夜を選ぶ。ならば場所は? もちろん見張りのこないところや、目の届かないところでやるだろう。理由は簡単、見張りに見つかれば全てが台無しになるからだ。

つまり、見張りがいるだけで放火できる場所は少なくなるのだ。見張りがいなければどこで放火しても構わないのに、見張りが居れば途端に場所が限定されてしまう。

だから大半の国は夜の警護は欠かさない。雷牙の言うように、外敵がいるから、というだけで一時的だけ見張りを置く国はそうそうない、とレナは言っているのだ。


「・・・とりあえず、移動しよう。この国の警護があいつら2人だけとも限らない。他のやつらに見つかればまた面倒なことになるぞ」


レオの言葉に一同は頷き、その場を後にした。


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