第57話 戦争編1
一同はオリアスから貰った家でこれからのことを話し合っていた。
雷牙、雷光、風花、風蘭の4人が仲間に加わったことで人数は8人となっていた。そこでその人数を見たレオはある提案をした。パーティを2つに分断し、罠解除の効率を上げよう、というものだった。
確かに、この方法ならばより早く罠を外すことができるし、人数が多くなくていい。8人で旅をするとなれば、宿や食料の確保が難しいからだ。8人より4人のほうが、どう考えても確保が楽になる。
話を聞いた一同はその意見に賛成し、頷いた。
「さて、気になる決め方だが、くじにしようと思う」
「くじ?」
「あぁ。ここに枝がある。短いのと長いのだ。それでパーティを決めたいと思う」
言うなり、レオは手を差し出す。手には枝が握られており、もう一つの手で下のほうを隠し、長さをわからないようにしていた。
一同はレオの手から枝を一本ずつ取り、最後に余った枝をレオが取った。組み合わせは次の通りとなった。
第1組、刹那、雷光、リリア、風蘭。
第2組、レオ、雷牙、レナ、風花。
もの見事、というほどうまく散らばったようだった。まだ冒険したことのない人との旅、刹那は少し嬉しかった。一体、このメンバーでどんな世界を旅するのだろうか、と。
でも、なぜか・・・ちょっぴり寂しかった。なぜだか理由はわからない。ただ、何だか足りないような、そんな感じだった。
でも、とりあえず組み合わせは決まった。あとは図書館のほうへ行き、オリアスから新しい世界の本を貰えばいい。
「それなら行くか。みんな、うまくやれよ」
レオの一言で、一同は図書館へと向かったのだった。
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道っていうのはやっぱり自分で決めるもんなんだ
人が人の道を決めることができるんだったら
俺はこいつを絶対に連れては行かなかっただろうからな
刹那たちの組が降り立った世界は、争いをしているようだった。ゲートの場所が町から少し離れたところで、そこから町の様子が見えた。・・・何やら、武器を作っているようだった。火薬のにおいも充満している。それで十分だった。武器を作っているのは使うためだ。武器が使われるのは、戦うときしかない。この世界も、戦争をしているのだ。
「ねね、あれって何作ってるんだろ!」
「・・・火薬のにおいですから、銃火器、ですかね」
「? じゅうかきって何?」
「武器ですよ。・・・まぁ、僕たちの世界では珍しいものですからね」
「それじゃあ何で雷光さんが知ってるの?」
「レオさんから教えてもらいました。火薬を爆発させて弾丸を発射するものや、そのまま火を出すものとか、色々な種類があるって」
鉄砲や火炎放射器のことだろう。どちらにしても、人を殺す道具だ。そんなものを作ってる町に入りたくはないが、情報収集をして罠の有無を確認しなければならない。
「町に行こう。情報を集めないといけないし」
刹那の一言に頷き、一同は町へと歩き出していった。
町の入り口で、2人の武器を持った男がだべっていた。見張りのようだが、こんなに不真面目にやっていては見張りの意味がない。
でも、まともに仕事をされて怪しまれれば少しめんどうなことになる。ここはうまくやり過ごして、とっとと町に入ってしまうのが一番だ。
町の中は、外から見たよりもずっと工業が発達していた。ガタン、ガタン、と機械の音が絶える事無く聞こえ、時折聞こえるフシュー、という蒸気の音で武器の1つが出来上がる。それの繰り返しだった。
作られた武器は箱に詰められ、工員の人がシールのようなものを張ってベルトコンベアに流す。そこから先の作業は工場の奥で行うので見えないが、おそらく何か移動用の物の荷台に乗せて運ぶのだろう。戦争のために、わざわざ。
「さて、どこで情報を集めますか?」
「ん〜・・・そうだな・・・。ん?」
「どうしたんですか?」
「いや、あそこ。ほら」
「何か人が集まってんね。何やってんだろ」
刹那の言うほうを見てみると、そこには人だかりが出来ており、ガヤガヤと何か騒いでいるようだった。何について騒いでいるのかは、人ごみが邪魔でよくわからない。
「ちょっと見てくるよ」
そう言って、刹那は人ごみの中に飛び込んでいった。
人ごみの中は老若男女問わず色んな人がごたごたとしており、何をそんなに夢中になっているのか、壁のほうに行こうともがいていた。
刹那も何とか壁のほうに行こうとはするが、どうも人が邪魔になっていけない。右から行こうとすれば右に人が来るし、左から行こうとすれば左に人がくる。・・・これではいつまでたっても壁のほうに行くことができない。
よし、と、刹那は人と人の間に手を入れて少し隙間を作り、その間に無理矢理体をねじ込んで入り込んでいく。
{・・・・お!}
ひたすらひたすら進んでいくと、壁に大きな紙が貼り付けてあった。人々がこんなに集まるくらいだ、どんな内容なのだろう、と思って目を凝らして見て見る。だが文字が少し小さくて見えにくい。もう少し寄ってみようとするが・・・・・
「うぉ!!!」
突如人ごみが崩れだし、集まっていた何人かが刹那の上にのしかかった。少なくとも十人くらいは乗っているだろうから・・・・大体600kgくらいだろうか。そんなのに、刹那が耐えられるわけがない。
{ぐ、ぐ、ぐ、ぐ、ぐるじ・・・・ぐぇ・・・}
どいてくれ、と言おうとするが、呼吸ができず声が出せない。それに加え、刹那の上ではなにやら口論が始まっていた。
「おい!!誰だ押しやがったやつは!!」
「うるせぇ!!いつまでもいるから悪ぃんだろが!!」
「あぁ!?なんだその口の聞き方はぁ!?」
「なんだ!やんのかよ!どうせ最終戦が始まっちまえばみんな死んじまうんだ!やるんだったら盛大にやってやるぜ!」
{い・・・・息・・・・が・・・ぐ・・・ぐ・・・・}
そんなのどうでもいいから早くどいてくれ、と言いたかったが、やはり喋れない。そのうえ呼吸ができないのだから、刹那が気絶するのも無理はないことだった。
「ん・・・・・おい!!下敷きになってんぞ!!」
「え?・・・おい!!やべぇ!!気絶してる!!」
「運べ運べ!!!」