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第50話 殺戮人形編6

昼食が終わったあと、話を切り出したのはレオだった。


「さて、これからどうするか、だな。まさか昨日みたいにのんびりってわけでもないだろう」


「ええ、今日で決着をつけようと思います」


昨日のことで、敵がどういった姿をしているのか、また何体なのかがはっきりとわかった。姿は人形、雷牙の話だとそれぞれ武器を持っているらしく、数は4体。壊しても襲ってくる可能性があるため、粉々に粉砕しなければならない。

そして、こちらの人数は8人。戦闘員は5人、回復員は4人。数が合わないのは、レナは戦いも回復もできる優秀な人材だからだ。

敵が4人でこちらは8人、つまり敵一体に2人で戦うことになる。そう、こちらは現在有利な状況なのだ。この状勢のうちに畳み掛けなければならない。


「2人組で戦います。メンバーを決めましょう」


組はできるだけ戦い方を熟知している、戦闘員と回復員がいい。

例えの話だが、雷牙とレオが組になったとしよう。お互い会ったばかりでお互いの戦い方の深さを知り得ていないし、何よりも一緒に戦ったことがないのでやりにくい。

それに、万が一戦いで負傷したとして、2人は回復、治療する術を持ち合わせてはいない。致命傷を回復するのが遅れてしまえば取り返しのつかないことになってしまう。


「あぁ。なら俺たちのほうのメンバーは、刹那とレナ、俺とリリアだ。3人とも問題ないな?」


刹那とレナはいつも一緒に訓練していて互いの攻撃パターンなどを理解しているはず。それに、刹那の戦闘経験不足もレナの実力が補ってくれる。この組は問題ない。

レオとリリアも、小さい頃一緒に父親と訓練していたからこちらのほうも大丈夫だ。問題ない。

3人とも頷いてレオの問いに答えた。


「僕達のほうのメンバーは、兄ぃと風花さん、僕と風蘭さんです。問題ないですよね?」


「あぁ問題ねぇぜ」


「う〜ん・・・・・風花がちゃんと治療の役に立つかが心配ぃ〜」


「な!?ちょっと姉さん!!あたしだってちゃんとやれるよ!!」


「ホントかなぁ〜?」


「本当だってば!!!」


一同は風花と風蘭のやり取りを見て笑い、すぐに表情を引き締めた。

不意に、レオがテーブルに弾丸を4つ置いた。薬莢の部分が赤くなっている。おそらく火属性の弾丸だろう。


「1組につき1発持っていけ。こっちが分かれてても、敵が分かれてるとは限らない。1組のところに集中攻撃される可能性がある。そうだった場合、これを離れてる木にでもぶつけろ。大爆発が起きて一発で居場所がわかる」


こちらが2対1で戦う気でも、敵もそうであるとは限らない。運が悪ければ3対2になる可能性もあるし、敵全員を2人で戦わなければならないことになる。

それを避けるため、レオはそれぞれの組に弾丸を渡したのだ。万が一の場合は弾丸を爆発させれば居場所がわかる。そうなればほぼ戦いは2対1になる。つまり、敵が分かれて戦おうが集まって戦おうが、自分達の有利な状況は変わらないのだ。


「それじゃ行きましょう」


雷光の言葉で皆は席を立って小屋を出ようとしたが、不意に雷光が雷牙を呼び止めた。


「あ、ちょっと兄ぃ。これを」


「お、わりぃわりぃ。忘れてたぜ」


雷光が投げて雷牙に渡したものは、金色に輝く鈎爪だった。手の甲から手首までを保護する役割を持つ篭手に、先が折れ曲がっていて切り裂きやすく仕上げてある爪。

仕上がり具合や見た目は普通の鈎爪。いや、違う。ただの鈎爪はこんな雰囲気などない。なんと言えばいいのか、神々しい・・・とでも言えばいいのか?何とも言えない、言葉では表現できない威圧感がある。


「雷牙、それって?」


「あぁ、これか?昔じっちゃから貰ったヤツでよ。何つったかな・・・・・えっと・・・・・」


「『神裂爪・龍』です。爪は立ちはだかる敵を容赦なく切り裂き、篭手は爪では葬れない敵を砕く攻撃のみに特化した武器、そして数ある『神器』の中でもっとも射程が短いとされているものです」


神器、その単語を聞いて納得した。やはりこの鈎爪、神裂爪から感じた神々しいような、そんな雰囲気は気のせいではなかったのだ。


「あぁ、そうだったそうだった!!んでお前のやつが・・・・・」


「『神裂爪・虎』です。まぁ兄ぃのやつと同じですよ」


雷牙の神裂爪の篭手は濃い緑色だが、雷光の篭手は濃い黄色だ。色から容易に龍と虎のことが想像できる。

敵に臆することなく、敵軍に突っ込んでいく龍。相手の出方や動きを、ぎりぎりまで見てから反撃する虎。まさしく雷兄弟だ。

雷牙と雷光にぴったりだということを理解して雷兄弟の祖父は2人に神器を渡したのだろうか?―――たぶんわかっていて渡したのだろう。


「まぁ、つけるのは後でいいだろ。めんどくせーし」


「駄目ですよ兄ぃ。小屋から出た瞬間に出くわしたらどうするんですか?」


「出ねぇって。出ても刹那たちに任せりゃいいだろ」


「はぁ・・・・・。どうなっても知りませんよ」


ため息をついて、雷光は自分の持っている神裂爪を左手にはめ、篭手のほうについている紐を口で引っ張り固定する。

神裂爪は、よく見たら『龍』が右手用で『虎』が左手用だ。対となっている2つが1つになることで両手用になり、1人でも戦闘力が上がるようになっているのだろう。

そのことから、神裂爪は1人用の武器なのだとわかる。その神器を2人で分けたから、1つずつという形になってしまったのだろう。

雷光が紐を結び終わると、一同は今度こそ小屋の外に出た。天気は刹那とレナが訓練していたときと変わらず曇り。しかもだんだんと雲が厚くなってきているのか、さっきよりも薄暗いような感じがした。―――敵を探索しているときに降ってきたら厄介だ。なるべく早く決着をつけたい。


「敵は見つけ次第撃破、2体以上現れたときはレオさんから渡された弾を使って仲間を呼ぶこと。それでは行きましょう」


一同はさっき決めたメンバーで散り散りになって探索し始めた。

刹那とレナは北のほうへ、レオとリリアは東のほうへ、雷牙と風花は南のほうへ、雷光と風蘭は西のほうへ、それぞれ移動し始めた。


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