表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/150

第5話 初世界編4

刹那はというと、走っていた。全力で入り口まで逆走していた。

 

{ダン、俺が戻るまでなんとか持ちこたえてくれよ}


ダンの事を心配しながら刹那は入り口を目指してひたすら走る。

 

{もう・・・少し・・・}


刹那の呼吸はどんどん荒くなり、ぜいぜい息を切らしながら走り続けた。

そのとき、刹那の目には一際大きい弓とすぐ横にある矢が壁にたてかかっているのが映った。


「これだ・・・」


息を切らしながら近づく刹那。弓を背中に背負い、矢を肩にかける。


「待ってろよ、ダン」


+++++


一方、刹那が弓矢を入手したとき、ダンの体力は限界に達していた。


「はぁ、はぁ、き、きつい・・・」


愚痴を言いつつもダンはひたすらラチスに向かって行った。刹那がいなくなったので、いままで二人で受けてきたダメージが一気にダンにくる、きついのも無理はない。太い鋼鉄の腕二本の攻撃をダンは剣一本で受け止めていた。例えて言うならば、金属のバットで電柱を思い切りたたくようなものである。こんなことがしばらく続いていれば手の感覚がなくなってしまう。


「くそ、こんなときに魔力が使えたら・・・」


そんなことを言っても魔力が使えるわけでもなく、ダンは手の痺れを我慢しながらラチスに向かっていった。剣で腕を受け止めるたびになる金属音、激しい痺れ、悪化する疲労。ダンはこれらに耐え、死ぬ気でラチスと戦った。すでに体力は限界を超えている。しかし、いつまでも耐えれるわけがない。


{くっそ、だめか・・・}


諦めかけた次の瞬間だった。閉まっているはずの扉がいきなりバァンッと開き、刹那が息を切らしながら入ってきた。

ゼィ、ゼィ、と、取ってきた、ぞ、はぁ、はぁ」


ダンはすぐにラチスとの間合いをとると、刹那に作戦の続きを話した。


「いいですか、いまから僕はもう一度ラチスと斬りあいます。その隙に後ろに回りこんで今とってきた弓矢を使ってラチスの頭を射抜いてください。いくら腕が二本あるからといっても激しい斬撃を連続してくらわせば後ろががら空きになります。そのときを狙っって矢を放ってください」


ダンは刹那にそう言うと、ぎゅっと剣を握り締めた。


「ゼイ、はぁ、わかった。やって、はぁ、みるよ」


息を切らしながらも刹那はラチスの後ろへ回り込もうと走った。ダンは刹那が走ったのを確認すると、深く息を吸い込み、疾風のごとくラチスに切りかかっていった。




風魔連斬




ダンは剣が見えないくらい素早く攻撃を繰り出した。と同時にラチスめがけて突風が起こる。剣の速さのせいで突風が起きているのだ。

雨のような斬撃をラチスに浴びせる、さすがのラチスもこの速度と斬撃の多さでは両手を使わざるをえない。

両手がふさがる、それはつまり後ろからの攻撃に対応できないということ。

この時を待っていた、刹那はラチスの後ろに回りそして、弓を構えた。

決して力まず、冷静に相手の弱点を狙い、そして・・・放った。

ひゅんと風を切ったかと思うと、いつの間にか矢はラチスの頭にふかぶかと刺さっていた。

ダンは矢が刺さったのを確認すると切るのを止め、剣をおろした。ラチスは両腕をだらりと下げ、白目をむいていた。


「お、終わった・・・」


ダンはそう言うと剣を地面に突き刺し、その場にうずくまり、はぁはぁと荒い呼吸をしていた。

刹那は、急に足が崩れ、しりもちをついてしまった。いまさらだが、足も震えてきた。

戦いが終わった、刹那もダンもそのことは疑わなかった。

しかし、そう思えたのもつかの間、ダンの体に黒く、大きな影が覆いかぶさった。

ダンがそのことに気づき、上を見上げる。そこには頭に矢が刺さって死んだはずのラチスがいた。ラチスはにやりと笑うと腕を伸ばし、頭の矢を乱暴に抜きとった。

これには刹那もダンも驚いた、生き物は脳を傷つければ死ぬと思っていたからだ。

完全に意表をつかれたダンはあわてて剣を握り応戦しようとする。

しかし、立てない。さっきの技がよほど体にこたえたのか、ダンは立つことが出来なかった。

そんなダンをラチスは遠慮することなく拳を放った。


「!!が・・・は・・・・・」


10メートルほど吹っ飛んだダンは、口から血を吐き気を失ってしまった。


「てめぇ、このやろう!!」


刹那は無謀にも武器を持たずにかかっていった。当然、真正面から武器も持たずにかかっていった刹那はあっけなくラチスに鉄拳をもらい5メートルほど吹っ飛ばされてしまった。


「う・・ぐぐ・・ぐ」


あまりの痛さに声が出なかった。幸いなことに吐血はしていない。

ラチスは刹那よりも先にダンを殺そうと、ダンの方向へゆっくりと歩いていった。


「や・・・やめ・・・ろ」


無理矢理声を絞り出し、刹那は叫ぶ。しかしその叫びは弱く、小さかった。

ラチスは構うことなくゆっくりとダンの方へと近づく。


「やめ・・ろ・・・やめて・・・くれ」


そんな願いもむなしく、ゆっくりと、しかし確実にラチスはダンのところへと向かう。

10メートルから5メートル、5メートルから3メートル、次第にダンのところへと歩み寄る。


「・・・やめろ・・・・」


自分の拳が届く距離にたどり着き、右腕を構える。

そして、その剛健な腕が、今振り下ろされた。


「やめろおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」


刹那が叫ぶと同時に、ラチスは異様な気を察知し腕を止めた。

独特の気配、まがまがしい気。

それらが示すもの、それは紛れもなく、魔力であった。それも、そんじょそこらの小さな魔力ではない。おそろしく大きく、強大な魔力だった。

ラチスは声のしたほう(魔力が感じられたほう)に体を向けた。

そこには誰もいなかった、しばらく動けなくなるほどのダメージを喰らわせた刹那の姿も。

気のせいか、そう思ったラチスは再びダンの方へと体を向ける。

そして、もう一度右腕を振り下ろす。


そのときだった。


いきなり黒い風が自分の右腕を通り過ぎた。ラチスは構うことなくダンに右腕を振り下ろす。

その時にゴトンと何かが落ちる音がした、自分の足元から。

なんだろう、と音の発信源を見る。

そこにあったのは腕であった。自分のと酷似している太く、大きな右腕が。




まさか。




あわてて自分の右腕を確認する。




ない。




振り下ろしたはずの自分の腕がない。

ラチスは激しく動揺した。何が起きたかが全然わからなかった。

ないないないない、腕が、誰にも傷つけられることのなかった腕が、なくなっている。

このときラチスは気が付かなかった、正面に先ほどの強大な魔力の根源が存在するのに。

我を失って動揺しているラチスの足元に再び黒い風が通り過ぎる。

ずるずると風の通った足の部分がずれる。足で支えきれなくなったラチスの体は仰向けにひっくり返った。ラチスは残った左腕で体を支え、ゆっくりと起き上がった。

ラチスの目に入ったもの、それは刃が黒い大剣を構えている刹那の姿だった。先ほど感じた強大な魔力も刹那から感じられる。

ラチスは刹那の持っている大剣を見てはじめてわかった、自分の右腕や足は切られたのだと。黒い風はすさまじい速度

で自分の体を切った黒い大剣だったのだと。

不意に刹那はパッとラチスの方へと攻め込む。ラチスは残った左腕で刹那を迎え撃った。

鋼鉄の拳が刹那を襲う。

ところが刹那はこの拳をひらりとジャンプしてかわし、左肩めがけてそのまま飛んだ。

大剣を振り上げそのまま左肩へと振り下ろす。

一度放った拳は急には戻せない、ラチスの残った最後の腕もあっけなく宙へと飛んだ。

手足が切られ、もうラチスはもう芋虫のように胴体をぐねぐねさせることしか出来なかった。必死に抵抗するラチスをよそに、刹那はゆっくりと頭の方へと近づく。

ぎゃぁぎゃぁと耳が痛いくらいに叫ぶラチスの顔へ到達した刹那はゆっくりと大剣を振り上げる。


「だから・・・やめろっていったのに・・・」


そう静かに言うと、勢い良く首めがけて大剣を振り下ろす。

大剣が首を通過すると、急に叫び声が途絶え、ラチスの体(離れた手と足も)が青い炎に包み込まれる。ごうごうと勢い良く燃えたと思うと、だんだん火が小さくなっていき、他の怪物と同様、ラチスの体がなくなっていた。

ラチスの体が消えると刹那の持っていた黒い大剣が黒い霧になり、刹那の体に染み込んでいった。


{なんだったんだ、あのでかい剣は・・・}


刹那はふとそのことが頭に浮かんだ。大剣が手に収まっていた時の情景を思い出し整理する。


{えと、確かラチスがダンを殺そうとした時に・・・・ん?ダン?・・・・}


考えている途中でダンという単語が頭に浮かぶ。そして、


「あ!!ダンは!!!」


気づいた。

きょろきょろと辺りを見回しダンを探す。


「・・・・・・・・・いた!!!!」


ダンを見つけた刹那は、倒れているダンの元へと駆け寄る。やっぱり口から血を吐いている。

刹那はダンを手で起こし呼びかける。


「ダン、ダン、終わったぞ・・・」


ダンを揺さぶり声をかける。


「う・・・・・・うう・・・」


ダンの口から声が出る。そしてゆっくりと目を開ける。


「せ、刹那さん・・・」


ダンが刹那に気づき、声をかける。口から血が出ているので無理に立たせてはまずい。

刹那は起こした体をゆっくりと地面に寝かせた。


「ダン、終わったぞ。ラチスも俺が倒した」


刹那はダンに報告する。弱っているダンの顔が一変、驚きの表情に変わった。


「せ、刹那さん、本当に一人でラチスを?」


「ああ、俺が一人で倒した」


刹那はふふんと胸をはり、すごいだろうと言わんばかりの顔をした。


「ど、どうやって?」


刹那はダンのその質問にう〜んとうなってから答えた。


「それがな、ラチスがお前を殺そうとした時になんか急に体の周りから黒い霧みたいなのが出たんだよ」


ダンは刹那の説明に疑問を覚える。

「?黒い霧?・・・まさかそれで?」


「違う違う、話は最後まで聞け。それでな、その霧がなんかでっかい剣になったからさ、それもってラチスにかかっていったんだよ。」


{なるほど、それでか・・・}


黙って何かを考えているダンをよそに刹那の説明は続く。


「そのでかい剣もったらな、なんか知らないけど体がすごく軽くなってさ、ラチスの攻撃かわしてそのまま左肩切ってやったんだよ」

ダンは、自分は心の中で喜んでいることがわかった。


{すごい、魔力を発動させたばかりだけじゃなく、いきなり結晶化までさせるなんて}


そんなことを思っていると、不意に刹那の後ろからごごご、という音が聞こえてきた。

刹那はぱっと後ろを振り向いた。ゲートがあった、しかしそのゲートはどういうことか、消えたり広がったりしてひどく不安定だった。ひゅうひゅうと風を吸い込んだり、吐き出したりしている、それがだんだん激しくなり一つのことが刹那の頭に浮かんだ。




このままだと、閉じてしまう。




刹那は迷った、行くべきか、とどまるべきか、頭の中の天秤に二つの考えがのしかかる。


{このまま行ってしまうとダンが死んでしまうかもしれない、でも俺の望みはなんだ?家に帰ることじゃないか。どうする、どうすればいい!!}


冷静に頭を働かすことなんて出来やしなかった。心臓の鼓動が激しくなる、どくんどくん、と自分の心臓がなっている。こんなことを考えている間に、ゲートはだんだん小さくなる。

そのときだった。地面に寝ていたダンがゆっくりと起き上がる。


「ダン・・・・?」



ドン!!



ダンは強く刹那の胸を押した、押した先はもちろんゲート。

刹那には何が起きたのかわからなかった。わかることはダンが自分をゲートに向かって突き飛ばしたということだけだった。


「!? ダン!!」


混乱している中、必死になって絞り出した言葉がそれだった。

突き飛ばされ、ゲートに入る時間は決して短くはなかったが、ダンが言葉を放った時だけは時間が長く感じられた。


「大丈夫・・・死にはしません・・・・・・・・だから・・・行ってください・・・刹那さん・・・・あなたの旅路に・・・幸多かることを祈っていますよ・・・・・」


「だあああああああああああん!!!!!!!!!」


ゲートに入る直前、刹那は叫んだ。

精一杯、叫んだ。


+++++


刹那を送り出した後、ダンの後ろからざ、ざ、ざ、と足音が聞こえた。


「送ったのか、刹那を」


「ええ、送りましたよ。長老」


ダンが答えを返す、その足音の正体はダンの村の長老だった。


「・・・もう長老はよしてくれ、爺さん言葉にも飽きたところだ」

長老はそう言うと一瞬まばゆい光を体から出した。光が収まると、そこには老人ではなく一人の青年が立っていた。


「まったく、な〜んでこの俺がこんなことを・・・」


「あの人の命令ですから。それに逆らったらどんなことをされるか・・・考えたくもない」


「・・・もっともだね。あの人、怒ると怖いんだよねぇ」


ダンはその青年と親しげに会話している。また、青年もダンと親しげに話している。


「ところで、刹那の魔力は?」


「しっかりと発動しましたよ。それどころか、結晶化まで使いこなせてました」


ダンの話を聞き、青年はヒューと口笛を吹く。


「すごいじゃないの、魂と肉体からだがこわいくらいにフィットしてんじゃんか。それで、属性は?」


「黒い霧、と言ってたから、おそらく闇でしょうね。まぁ、魂の転生前が魔界の王だったから当然と言えば当然でしょうね」


ダンはそういい終えるとふぅとため息をつく。ダンの言葉を聞いた青年が驚きの声を上げた。


「マジかよ。闇って、大丈夫なの?ひょっとしたら刹那もリミッターが外れちゃって、マリスみたいになっちゃうかもよ?」


「・・・あなたはどうも勘違いしていますね。あくまで属性は属性。闇が悪になるとは限りません」


ダンのもっともな言葉に、青年は反論する余地がなかった。


「まぁ、そうだけどさ。もしもってことがあるじゃんか」


かろうじて、言葉を述べる。


「それは闇だけじゃないでしょう。ありとあらゆる属性の持ち主も同じ可能性をもっています」


「う・・・・」


青年の言葉は見事に一刀両断、切り捨てられてしまった。

青年は一方的に追いやられるこの空気を変えるように、ダンに言った。


「・・・・・・そろそろ帰ろうか、異次元図書館に。詳しい話はそこで皆に聞かせてやっておくれ。我が使い魔、ウィルゲール・ダン・セリマティ。」


「・・・・・・・・わかりました。我が師、我が主、時の神ゼール。」


初世界編、終了です

さて、いかがでしたでしょうか?この物語せかい

魔物に弾圧され、家族から自由まで奪われたこの世界は刹那とダンのおかげで救われました。


刹那はこの世界で、自分の中の『力』を見事使ってみせました。

それが、後の物語せかいにどう関係していくのか?

・・・・・それは見てもらわなければわかりませんね

さて、長々とすみません

次回の物語せかいは近未来編

どんなお話かは、見てからのお楽しみ


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ