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第49話 殺戮人形編5

「違う、あの時の技じゃない。黒い光が出てないもん・・・・・・」


「出てないって言われてもなぁ・・・・・」


何度大剣を振ってみても、いくらレナの言ったことを忠実にこなしても、あのときの黒い光は出てこなかった。試行錯誤しようにも、自分が今できることを全てやったため考えが浮かんでこない。困ったなぁと、頭を掻きながら刹那はため息をついた。

もうじきみんなが目を覚ます。そうなればこの世界の罠を外す話になってしまい、技の習得どころではなくなってしまう。

何とか今のうちに技を習得し、この世界の罠と戦うときに出せるようになっていなければならない。そうすれば、戦闘能力が低い自分だって何とか役に立つことができるかもしれない、そういう考えからの訓練だった。

でも、習得できないものは仕方がない。前にリリアから聞いた話によると、結晶の潜在能力は長い間の訓練によって会得できるものらしい。―――おそらく、レナの言っている黒い光は結晶の潜在能力を指しているのだろう。それならば、レメンと戦ったあの時に何かの拍子で偶然発動してしまったのだと説明がつく。偶然出したものだから、どうやって出したのか理解できないのも

納得がいく。


「やっぱり、まだ技を習得する時じゃないんじゃないか?」


「そうかな・・・・・刹那ならいけると思うんだけど・・・・・」


思いもよらないレナの評価に刹那は内心嬉しくなったが、表情には出さずそのまま続けた。


「買いかぶりすぎだよ。あせらない、ってのがレナの口癖だったろ?」


「まぁ、そうだけどね」


「それなら決まりだ。その時が来るまで、レナから教わった基本で何とかしていくよ」


レナは何だか納得のいかない顔をしていたが、刹那の言ったことがもっともだったのでしぶしぶ了承した。

刹那が結晶である大剣を体の中へ魔力として戻すと同時に、ぐぅという音が鳴った。腹の虫だった。そういえば、もうじきみんなが目を覚ます頃だ。朝食が出来上がるまでまだ時間がありそうだった。


「腹減ったなぁ・・・・・」


「そうだね、それじゃ戻ろっか」


訓練を終えた2人は、揃って小屋に入ろうとする。―――それと同時だった、中から爆発音が聞こえてきたのは。





ボォオオオオオン!!!!!





敵の襲撃かと思った。この爆発音、ただ事ではない。きっとこの世界の罠に襲撃されたに違いない、そう思った。

レナは何も言わず、小屋の戸を蹴り破り突撃していった。刹那もあとを追い、先ほどしまったばかりの大剣を再び出して手に握り締めた。

小屋自体はそれほど大きくはない。せいぜい普通住宅の2階がない感じの広さだ。だから、先ほどの爆発音がどこからしたのか、簡単に予想がついた。

レナは神抜刀の鍔に親指を掛け、いつでも太刀を抜けるよう準備をしていた。ここで戦うという気は十分だが、不安要素ももちろんあった。―――屋内、つまり狭いところで戦うということだ。

剣や刀、太刀等は振るってこそ効力を発揮する代物だ。もちろん突き刺すこともできるだろうが、それでもやはり斬るという攻撃には到底威力は及ばない。日本刀はなぜ切れ味がいいのか?相手に突き刺すためではない、斬るためだ。

斬る事が太刀、剣の真価。だが、狭いところではどうしても振るスペースが限られてしまう。それはつまり、自由自在に振ることができず、自分達が不利な状況になってしまうということだ。―――それだけが心配だった。





ボォオオオオオン!!!!!





再び聞こえる爆発音。聞こえた場所は・・・・・・キッチンのほうだ。


{え、キッチン?も、もしかしてッ!!!}


嫌な汗が出てきた。心なしか、血の気が引いていくような感じもする。恐る恐る刹那のほうを向いてみる。―――顔面蒼白、まさにその言葉がふさわしかった。

そう、レナと刹那の考えていることは同じだった。少し前、オリアスから貰った家で同じような音を聞いたような気はしていた。そして、その音源はキッチンから。この2つからの状況から想像できることはただ1つ。


「「リリアぁああ!!!ストップストップぅうううううう!!!」」


刹那は大剣を瞬時に体内へ戻し、とレナは神抜刀の鍔に掛けていた親指を外して同時に叫び、そして同時にキッチンへと飛び込んでいった。

キッチンの中は・・・・・大変なことになっていた。爆発のせいでキッチンの壁には黒いすすのようなものがこびりつき、床には得体の知れない緑色やら紫色やらのゲル状の液体が広がっていた。―――ある意味、下手なお化け屋敷よりずっと恐かった。

その中には、1つの笑顔。こんな惨状にはとても似合わないようなひまわりのような笑顔をしているリリアが立っていた。リリアのつけているピンクのエプロンはヘドロのような色が付け足されており、せっかくのうさぎさんの顔が台無しになっていた。―――うさぎ?あれって熊じゃないの?


「あ、刹那さんにレナさん。今ご飯作ってるから待っててね♪」


ちょっと待て、今なんて言った?朝食?毒物の間違いじゃないのか?


「風花さんがね、眠いから代わりに作っておいてくれない〜?って言うからね、今代わりに作ってるの。結構いい出来だよ」


それが原因だったのか、それが朝食を毒物に変えてしまうきっかけだったのかッ!!

ドタドタと走り回るような音がし、みんなが一斉にキッチンへ滑り込んできた。


「な、何でお前が料理してるんだ・・・・・」


「敵襲かと思ったぜ・・・・・」


「この有様は一体何があったんですか・・・・・」


「ど、どうすればあんな激しい音が出るのかなぁ〜・・・・・」


「ひどッ!!あたしのエプロン茶色になってんじゃん!!」


「みんな、もうちょっとでご飯できるから待っててね♪」




「「「「「「「もうそこら辺でやめてッ!!!」」」」」」」




えぇ〜、つまんな〜い、と言った直後リリアはキッチンから追い出され、みんなは一斉に掃除を始めた。そのおかげで、朝食の時間は大幅に遅れることになったのは言うまでもない。




ちなみに朝食後・・・・・




「朝食がまともで本当によかった・・・・・」


「レオの言う通りだ。飯がこんなにうまいのは初めてだぜ・・・・・」


「ですね。おいしく感じますよ、本当に」


「でも、魚焼いただけだよな?」


「刹那、そこは触れないでおいてあげないと・・・・・」


「みんなごめんねぇ〜・・・・・私がリリアちゃんに頼んだせいでぇ〜・・・・・」


「姉さん、あたしが起きれなかったせいでもあるんだから、そう謝らないでよ」


「ちょっと〜〜!!!何それ〜〜!!!全面的に私が悪いってことじゃないの〜〜〜〜!!!」


こんな感じになったことを報告しておこう。


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