第35話 異次元図書館編4
ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴ!!!!!!!!
「ん〜〜〜・・・・・・・・」
ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴ!!!!!!!!
「むぃ〜〜・・・・・・・・」
ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴ!!!!!!!!
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴ!!!!!!!!
「・・・・・・・起きるよ、起きりゃいいんだろ」
ぴぴぴぴ『カチッ』・・・・・・・・・・・・・
目覚ましのアラームを切り、むくりと起き上がる。窓からは朝日が差し込んできて、刹那の部屋を明るく照らしていた。
手を伸ばし、目覚まし時計を取る。時刻は7時を指していた。ちゃんとセットした時間だった。
ベッドから出てのびをし、リビングに向かう。おそらくレオたちはもう起きているだろう。(ただ、レナは目覚まし時計を壊したので起きてるかどうかはわからない)
部屋のドアを開けると、レオとリリアは食事を口に運んでいた。ぱっと見料理がまともなので、レナは起きているようだった。
「お、やっと起きたな」
「おはよ〜、刹那さん」
「おはよう二人とも」
刹那も席に着く。それと同時に、レナが朝食を持ってひょっこりキッチンから出てきた。
「あ、刹那起きたの?それじゃこれ食べてて」
「ああ。ありがとう」
「どういたしまして」
レナが刹那の前に自分の持っていた朝食を置く。トーストとサラダ、それにミルクだった。空腹で刹那の腹がぐぅ、と鳴った。が、まだ口に運ぶわけにはいかない。
しばらくしてレナが自分の分の朝食を運んできた。
「あれ?食べてていいって言わなかったっけ?」
「作ってくれた人を置いて食べれないって」
「そう。じゃ一緒に食べようか」
レナも自分の席に座って朝食をテーブルに置いた。
「それじゃいただきます」
「いただきます」
こうして少しだけ遅い刹那とレナの朝食は始まった。レオとリリアがニヤニヤしながら刹那とレナを見ていたのは言うまでもない。
++++++
食事の後片付けが終わったあと、オリアスが使った本を使い刹那たちはゲートの中を移動していた。これからどうするか、という刹那の質問に対し、レオがオリアスに聞いてみればいい、と言ったからだった。
ゲートの中、刹那は隣にいたレオに話しかけた。
「これから俺たちどうなるのかな?」
「どうなりたいんだ?お前は?」
「もっとたくさんの世界を見てみたい。たくさんのきれいな場所とか景色を見てみたいな」
「・・・・・・・そうだな、たくさんの世界があるからな。きれいな場所も景色もたくさんあるかもしれない。でもな・・・・・・・・・」
「?」
「少なからずとも薄汚れた場所や見たくない景色だって存在する。ひょっとしたら二度と見たくない光景だって何回も目にするかもしれない。・・・・・・世界っていうのはそういうものだ。数え切れないほどあるんだったらなおさらな」
「・・・・・・・・・・・ああ」
レオの言った通りだ。きれいな場所や景色があるのであれば、逆の薄汚れた醜い所も必ず存在する。人間同士で戦う世界、弱いものが死に強いものが生き残る世界、上下の激しい世界。これらの他にもまだまだそういう世界は存在するだろう。これから自分たちはそういう世界を旅して回らなければならない。そう思うと、途端に気が重くなった。
「おいおい。別にそういう世界ばっかりなんて言ってないぞ。少なからずともある、ってだけの話だ。そんな顔するなよ」
「そうだよな。そんな世界ばっかりじゃないよな」
できるだけ前向きに考える。これから世界を回るのなら、楽しみながら回らなければ損だ。
そんなことを考えていると、やがて光が見えてきた。もうすぐ異次元図書館に到着する。その光が刹那たちを包みこみ、眩しさのあまりに目を瞑る。
「あら、おかえりなさい。どう?よく眠れた?」
不意にオリアスの声が聞こえてきた。目を開けると、湯気がたっているティーカップに口をつけてこちらを眺めているいるオリアスの姿があった。
「ああ、とってもよく眠れた。良い家をありがとう」
ふふふ、と笑ってオリアスはソファーに座るよう刹那たちに促す。昨日と同じ場所に刹那たちはゆっくりと腰をかけた。
コト、と自分の机の上にティーカップを置き、オリアスは話を切り出す。
「さて、あなた達にはこれから異世界に行ってやつらの仕掛けた『罠』を外してもらうわ。そのまま放置しておくには危険だからね」
ありとあらゆる異世界には刹那を殺すための罠が張ってある。神の魂の入った刹那を殺すための強力なものだ。そのため、仕掛けられた世界の人々の身は常に危険にさらされていることになるのである。
「それはわかったけど、異世界って数え切れないくらいたくさんあるんだろ?どこに仕掛けられてるのかわかるのか?」
「確実、とまではいかないけどね。大体ある場所は想定できるわ」
オリアスは、自分の机の上で山のように重なっている本の中の一冊を取り出し、刹那たちの前で広げて見せた。
「何これ?くもの、巣?」
本の中には、網目模様に連なっている線、くもの巣のようなものが書かれていた。
くもの巣は普通、糸と糸が何回も何回も重なっている部分は少ない。多すぎれば巣の主のくもが足を取られ、動きにくくなるからだ。だが、この本に書かれているくもの巣のようなものは、糸となっている線が何重にも重なっている部分がたくさんある。くもの巣を書いたものではない。一体これは何なのだろうか。
「異世界はこんな感じでつながってるの。線が何重にも重なっているところが異世界、それらを結んでいる線がゲートね。これから何が言えるかっていうと、一つの世界にはたくさんのゲートがあって、それぞれが違う世界につながってる、ってこと」
「それが罠が張られている世界と何の関連性があるんだ?」
「話は最後まで聞く。やみくもに罠を張っても引っかからなければ意味がない。かといって、確実に刹那君が通る世界がわかるわけでもない。だったら、少しでも来る可能性のある場所に罠を張るはず。言ってる意味がわかる?」
「つまりはゲートの数が多い世界に罠が仕掛けられている可能性が高いってことか」
「そういうことね」
パタン、と勢い良く本を閉じ、自分の机に放り投げる。勢いの付いた本は重なっている本の山にぶつかり、ぶつかった本の山は崩れてしまった。
オリアスは構うことなく、びっしりと本が詰まっている本棚に向かった。左から右へすー、と流すようにして本を探す。手が真ん中あたりに差し掛かったとき、オリアスは緑色の本を手に取り、ソファーに座っている刹那に手渡した。
「まずはこの世界の罠を外してきてちょうだい。あなた達が行ってる間、私とゼールは敵の本拠地を調べてるから」
「わかった。じゃあ行ってくるよ」
刹那は、手渡された本をゆっくりと開く。ゴゴゴ、という音が聞こえてきて、空間にゲートが創られた。
刹那たちは順番にゲートに入り込む。そして最後にレオが入ると、ゲートは何事もなかったかのように閉じてしまった。
しばらく刹那たちの入ったゲートを眺め、オリアスは再び本棚に手を伸ばした。
「・・・・・・・まずはあいつらを起こさないといけないわね。ちゃんと時間通りに起きなさい、って言ったのに・・・・・・」
ぶつぶつ文句を言いながら、寝坊したゼールとダンの部屋に向かう。師匠と弟子はやっぱり似るものらしい。二人そろって寝坊なのだから。
ゆっくり本を開き、ゲートの中を通ってオリアスは二人を叩き起こしに行ったのであった。
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昔々、神様がいました。神様はなぜそこに存在しているのか、そしてなんのために存在しているのかわかりませんでした。ある日、いい加減同じ毎日に飽きた神様は光を作りました。しかし、光だけ作っても面白くないので美しい大地を作りました。広い土、自然に草木は生えてきました。同時に海もできました。光に照らされ美しくきらめく草木、そして深い呼吸をしているかのように波を立てている海。こうして世界はできあがりました。神様は毎日それを眺め、楽しみました。そしてある日、妙なことに気がつきました。自分も眠るのだ、ということです。目を瞑り、光を遮断して初めて眠りにつくことができると理解した神様は、闇を作りました。自分の作った光はずっと照らしているので、照らし続けているその『時間』の半分を闇に覆わせる時間にしました。こうして昼と夜はできあがりました。朝になって起き、自分の作った世界を見渡し、そして夜に眠りにつく。その繰り返しでした。ある日、神様はいいことを思いつきました。自分に似せたものを作ろう、ということでした。一人だけ自我を持っていても面白くない。自分のほかにも自我を持っているものを作ろう、と考えました。自分だけができる物を創造する力。それを使い、自分の姿に似せた初めての生き物を作り出しました。初めてできた人間でした。が、その人間は動きもしないし、なんの反応も見せません。なぜだろうと神様は考えました。考えた末、神様は自分の魂をちぎってその人間にいれました。今度はちゃんと動きました。楽しい、うれしい、苦しい、つらい、などの反応も見せるようになりました。しかし、その人間は一ヶ月もたたないうちに死んでしまいました。なぜだろう、神様はもう一度原因を考えました。簡単なことだったのです。草や木も水を欲しがるように、人間もまた食料を必要としたのです。神様は草を食べるものを作り、そのあとにそれを食べるもの、さらにそれを食べるもの、そして草に栄養を与えるもの、最後に人間を作りました。今度はうまくいきました。世界のバランスは見事にとれ、一種類の動物が世界を支配するということはなくなりました。しかし、そんな毎日にも飽きた神様は人間に知恵を与えました。考える、という力を与えました。どんな面白いことになるのだろう、そんな安易な考えでとんでもないものを与えてしまったのです。人間たちはとたんに繁殖しました。生き残る術を知り、身を守る手段を学び、そして狩るということを覚えました。人間が繁殖してきたので、他の生物が減ってきたことに腹をたてた神様は人間に災いを与えました。病気、という災いです。最初は人間たちもどうすればよいのかわからず、どんどん死んでいきました。いい気味だ、と神様は思いました。しかし、人間たちの知恵は恐ろしいくらい発達していたのです。病気の原因を探り、治療法を見つけ、そしてその病気で他の生き物を殺す術を覚えたのです。さらに、人間たちは伝える能力、すなわち言葉を使い、今までのあらゆる方法や手段を後世に伝えました。そのため人間は栄え、バランスのよかった世界は消えてしまいました。見かねた神様は自らその世界に君臨し、人間にいまの行為をやめるように言いました。人間たちはもちろん嫌だと言って首を縦には振りませんでした。仕方がない、と神様は人間たちに新たな知恵を教えるから今の行為はやめなさい、と言いました。人間たちはその知恵を教えてくれたらやめる、と言ったので、神様は新たな知恵を授けました。それは自分の中の魂の力、自分の肉体を動かしている力を利用するというものでした。その力はとてもすばらしく、今までできなかったことを簡単にできるようにしたり、不可能だと思われていたことを可能にしてくれたりしてくれました。その力は後に『魔力』と呼ばれるようになりました。力を得た人間たちは素直に神様の言うことを聞き、今までの行為をやめました。しかし、その人間の間である考えが起こりました。神様を倒せ、と言う考えです。神様を倒せば今までの良い暮らしが帰ってくる。邪魔な神様を倒せ。そこで人間たちは協力することにしました。人間と言っても、4種類の人間がいます。闇を好み、もっとも魔力を使いこなすことのできる魔族、光を好み、もっとも使う力が神の使う力に近い神族、もっとも残忍で戦いを好む鬼族、力が強く、魔力がなくても十分に戦える獣族。それらの族長は団結し、神様に戦いを挑みました。しかし神様は圧倒的に強く、人間のほとんどは神様に触れることなく死んでいきました。怒り狂った神様は自分の作った世界を無限に裂き、作った世界とは違う次元、異次元にその世界の破片を封印しました。こうして異世界は出来上がったのです。異次元に封印された世界に住む人間のほとんどが神様に恐怖し、敬い、服従しました。が、二つの世界だけ、神様に再び戦いを挑みました。あれだけ力の差を見せ付けられたにもかかわらずです。もちろん二つの世界は敗北しました。神様はその世界に罰を与えました。もっとも攻め込んできた世界に与えた罰は、頭脳を退化させ、格種族ごとに言葉をわけ、さらに種族ごとに大陸を分断し、団結できないようにした、というものでした。もう一つの世界に与えた罰は、破壊、創造、死、生、時間を司った神を作り、それぞれに見張らせるというものでした。そして、神様はそれぞれの神に『神器』という強力な武器と強力な防具を授けました。破壊には剣の神器を、創造には銃の神器を、死には鞭の神器を、生には爪の神器を、時間には槍の神器を、自分には自らを守るための防具の神器を、それぞれ与えました。神器を持った神は、神様と同じくらいの力を持ちました。が、それぞれの司った神は絶対に神様と戦おうとしませんでした。なぜなら、心の底から神様を尊敬し、忠誠を誓っていたからです。各神が見張りについた世界は平和に時間が流れていきました。しかし、見張りの神の目が届かないところで、再び神様を倒そうという考えが広がっていきました。全ては自分たちが世界を支配するため。水面下、徐々にではありますが、その計画は進行していきました。やがて、人間たちは行動に出ました。と言っても、まともに戦っても勝ち目はないので、見張りの神が所持している神器を盗み出すことにしました。夜中に忍び込み、そして強力な武器、神器を盗み出すことに成功したのです。しかし、神々も黙っているはずがありませんでした。奪われた神器を取り返そうと、本気で人間たちにかかっていったのです。人間たちの犠牲はものすごいものになりました。でも、命がけで手に入れた神器をわざわざ返すような真似はしませんでした。文字通り、本当に必死で神器を守りぬいたのです。そして戦争は始まりました。これまでにないくらい、壮絶な戦争でした。人間たちは神器を使い神々を退けさせ、神々も与えられた力を容赦なく人間たちに使っていきました。双方とも実力は同じくらいだったので、長い間決着は着きませんでした。しかしある日、人間の世界で妙な動きがありました。神器がいくつか消えていたのです。人間たちは必死で神器を探しました。神器がなければ、神々とはまともに戦えないからです。調べた結果、一人の青年が盗み出し、単身で神々の拠点に向かったことがわかりました。人間たちはあせりました。神器を駆使し、しかも大人数で挑んでも勝てない神々に、たった一人の人間が敵うはずがない。それどころか、その人間が敗れてしまえば命がけで盗んできた神器が神々の手に渡ってしまう。それだけはなんとしてでも避けなければなりませんでした。人間たちは残された神器を持ち、その青年を追い神々の拠点にたどり着きました。青年を助けるなどという理由ではなく、神器を取り返すという理由でここまで来たのです。人間たちは神々の拠点となっている王宮に入っていきました。向かってくる敵を倒し、倒し、そしてひたすら進みました。全ては人間の勝利のため。やがて、人間たちは創造主、神様のいる部屋までたどり着きました。ここまで来る間青年など見かけなかったのだから、いるとしたらここしかありません。人間たちは覚悟を決め、突入しました。扉の向こうは、信じられないことが起こっていました。自分たちがどれだけ団結しても、どれだけ時間をかけても、どれだけ踏み込んでも、どれだけ犠牲をだしても敵わなかったあの神が、血まみれで地面に倒れていたのです。その近くには、神器を持っている青年。そのときでした。自分たちの後ろから走るような足音が聞こえてきたのです。振り向いてみると、4人の神々が顔を青ざめさせてこちらに向かってきました。人間たちは戦おうとしましたが、神々はそれどころではないのでしょうか、人間たちに構うことなく神の倒れている部屋に入りました。神々は絶句しました。自分たちを創った創造主が、こんなにもあっけなく倒されてしまったのだから。青年はやっと人間たちや神々の存在に気づいたのか、ゆっくりと体を向け、言いました。
「こいつが神を名乗る時代は終わった。今日から、俺が神になる。人間の住む腐った世界をみんなみんなぶち壊して、俺が新しい世界を創ってやる」
青年の言葉を聞き、人間たち、神々、共に様々な反応を示しました。頭がおかしいのではないか?と疑問符を浮かべる者、笑う者、怪しがる者、戦闘体勢に入る者。青年は無表情、無言で神器を構え、再び言いました。
「貴様らは邪魔だ。俺の理想の世界には、貴様らは必要ない」
青年が神々と人間にかかっていく、そのときでした。急に神様の体が光りだしたのです。神様は生きていました。その場にいたものは驚き、目を丸くして神様を見つめました。ただ、青年だけは驚きの目をしておらず、見下すような目で神様を見ていました。神様は最後の力を振り絞り、その世界を崩壊させました。神々に後を任せるためにも、ここで死なせてはならなかったのです。崩壊した世界の生き物全ては他の異世界にとばされました。神々、人間、神を殺した青年、そして神器。それらも例外なく、様々な異世界に召喚されました。異世界にとばされた神々は困りました。これからどうしよう、と。仇を取ろうと思っても、青年の現在位置が特定できないし、なによりも自分たちでは無理だ。自分たちを創った神様でも勝てなかったのだから。ならばどうすればいいか?・・・・・・・・・・簡単なことでした。勝てる可能性のあるものは、創造主である神様だけ。だったらもう一度戦ってもらえばいいのです。死んだ者の魂は新たな肉体に転生する。神様の魂も例外ではありません。神様の魂が新たに転生した肉体ならば、その青年を倒せるかもしれない。幸いにも、神々は全員一緒の世界に召喚されていました。死の神、生の神がいるから、神の魂の転生先に困ることはありません。問題は、どうやってその者に干渉するか、でした。たくさんの異世界、神々はどうやって他の世界に行くのか・・・・・・・これも簡単なことでした。他の世界に行く方法。それがないのならば創ればいいのです。異世界と異世界をつなぐ、『道』を。異世界から異世界へとつながる『道』を。神々たちは異世界と異世界をつなぐ図書館を創りました。創造の神の力によって土台を築き、破壊の神の力によって余計なものを削除し、時の神の優秀な弟子によって異世界間の時間が統一されました。神々は出来上がったその図書館の名を、『異次元図書館』と名づけました。しかし、その図書館を管理するには人手が必要でした。破壊の神と創造の神は関わりたがらないし、死の神と生の神は冥界で魂の裁判で忙しい。残された時の神の弟子も、前ぶれなく神になってしまったので、色々と勉強しなければなりません。やらなければならないことを教えてもらう前に師匠を亡くしたのだから。そこで5人の神は、異次元図書館を管理するための『神』を創ることにしました。自分たちの能力を少しずつ分け合い、結集させ、それ創った肉体の中に解き放ちました。そして、新たな神が誕生しました。次元の神『オリアス』が。次元の神が誕生したことにより、神の魂が転生した人間を探すことが始まりました。死の神と生の神が転生先を知っているので、探すこと自体に時間はかかりませんでした。問題は、神の魂が宿った肉体のほうです。せっかく強大な魂を受け継いでいても、相性が悪く、魔力が発動すらできない人間がほとんどで、たまに魔力を使える人間が現れても、神様のときの魔力と比べれば象と蟻のようなものでした。神を殺した青年も、神々の意図に気がついたのでしょうか、神様の魂の転生した人間を探すようになったのです。もちろん一人ではなく、同じ思想を持った部下と共にです。異世界崩壊のための準備には時間がかかります。その間に自分の天敵が現れるのをおそれた青年は、神の魂を宿した人間を探しては殺し、探しては殺し、を繰り返しました。神々も青年の間は、神の魂を宿した人間を探し続けるという硬直状態に陥ったのです。その間約2万3000年。神々の間では生きていることに疲れ、仕事を弟子に託し、その弟子もまた生きていくことに疲れ、自らの弟子にあとを託すということが続きました。しかも、その長い間で破壊の神と創造の神は自らの存在自体が脅威と自己判断し、どこかの異世界に自らを封印してしまいました。神を殺した青年のほうは、どういうトリックかは不明ですが、長い間姿形を変えず生きていることを確認されていました。長い長い硬直。神を殺した青年がいつ異世界を崩壊させるか、という重圧に耐えながらも、神々・・・・・・・、いや、私たちは『希望を』を探し続けました。ただひたすら、ひたすら。
世界を崩壊させないため、私たちは探さなければならないの。
それが私たちの神々の仕事なんだから。
あなたにも、いずれやらなければならない時がやってくるから。
さて、いかがでしたでしょうか?今回の物語は?
とうとう明らかになった刹那の秘密・・・
なぜ刹那が異世界へ召喚されたのか、これから何をしなければならないのか、明らかになりました
しかし、まだ明かされた秘密は全部ではありません
結局のところ、まだ謎だらけということです
さて、次の物語は約束編
『約束』の意味とその強さをお楽しみください