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第27話 不死編2

小一時間程度経ち、刹那とレナは待ち合わせの場所に戻っていった。案の定レオとリリアは何か会話をしながら待っていた。

帰ってくる二人を見るなり、やっぱりというかニヤニヤしながら見て、


「遅かったじゃないか。時間が経つのを忘れるくらい楽しかったってか」


「実は刹那さん、レナさんを口説いてたりして・・・・」


根も葉もないことを言うやつらである。絶対にそんなことないのに刹那の必死な否定のせいで、まるであったかのように見えてしまうのであった。(もちろんレオもリリアもからかっているので本当にあるわけなどないと思っている)


「だ、だから!・・・・・」


「でも楽しかったのは本当。私の世界じゃ見れないものもたくさんあったしね」


「へぇ、そうか。異世界の旅も悪くないだろ?」


「うん。これから珍しいものとかたくさん見れると思うとね」


そこで刹那がレオに突っ込む。


「なぁレオ。俺とレナに対しての扱い方がまるで違うじゃないか。俺が楽しかったって言えば絶対からかってくるだろ」


にひひ、と笑って正直にレオは答える。


「お前の反応がおもしろいんだよ。見てて飽きない」


「そういう問題じゃないだろうが!!」


年齢の割には子供っぽい一面もあるレオであった。

ったく、と刹那は言って話は元に戻った。


「それじゃ、次の世界かな?レオも情報集め終わったんだろ?」


「ああ、俺のほうは問題ない。見るもんも見たからあとは次の世界だな」


そうレオが言うと、刹那は再び水晶を取り出した。太陽の光を水晶に当てると一筋の光がでて、この村に来たほうとは逆の方向の林を指した。


「あっちにゲートがあるね」


「それじゃ行きましょうか」


4人がその林の中に向かおうとしたその瞬間だった。


「おい!!あんたらどこに行くつもりだ!!!!」


後ろから叫び声を思わす大声が飛んできた。見てみると中年の男が顔を真っ青にしてその場に立っていた。


「この林の先に用があるんだが・・・・・」


「いかん!!絶対に入っちゃいかん!!!その先に入ったら・・・・・」


「入ったら?」


リリアが聞き返すと、その男は黙ってしまった。


「とにかく、忠告はしたからな!!」


そう言い残すと、男はそそくさと立ち去ってしまった。

どうすればいいのか、そういった表情で刹那はレオのほうを見た。ふ、と笑ってレオは言った。


「あっちに行かないと次の世界に行けないだろ。行くしかないさ」


「でも、兄さん。林の先に何がいるんだろ?」


リリアの問いにう〜ん、とレオはうなり、しばらくしてから結論を出した。


「わからないな。まぁ行けばわかるだろう」


と、男の忠告をさほど気にしていないようだった。



しかし


これが間違いだった。


これから4人はおぞましく、


恐ろしいものを見ることになる。




++++++




林を抜けると、古ぼけた家があった。屋根の端は崩れ、壁にはひびが入っていた。水晶の光はその家を指していた。


「あの家の中だな」


4人は家に近づいた。無人かどうかを確かめるために、刹那は壊れそうなドアをノックした。


「すいませ〜ん。誰かいませんか〜」


返事はない。


「!?」


レオの耳に妙な音が入ってきた。シュンシュン、と周りの空気を吸い込むような音だ。通常の音ではない。何の音だか未だ判断できない。

シュンシュン、という音がキーン、と響くような音に変わった。戦闘の経験のあるレオの頭に一つのことが浮かんだ。いや、それしか考えられない。確信があった。レオにはそれがなんだかはっきりとわかった。何かエネルギーを溜め、放つときの音だ。


「刹那!!離れろ!!!!」


「え?」


叫んだと同時にレナが飛び出し、刹那に突進した。刹那の体は横に吹っ飛ばされ、レナの体も勢い余って同じほうに飛んだ。





ドォーーン!!!!





それらとほぼ同時にドアは中からのビームのようなものによって破壊された。あと少しレナの突進が遅ければ刹那の体は跡形もなく吹き飛んでいただろう。それほど激しい攻撃だった。


土ぼこりが舞い上がり、家の中に人影が見えた。男、いや青年だった。レオと同じくらいの青年だった。冷たい目をしており、目の下にはくまができている。表情も暗く、明るいとは絶対にいえなかった。手には何も武器を持っていない。ならばさっきの攻撃は一体・・・・


「・・・・・・・殺す殺す殺す、みんな殺してやる。」


その青年の乾いた唇から、そう一言漏れた。


「っち」


レオは舌打ちをし、ホルスター右側のほうから黒光りが美しい神器、『神爆銃・闇』を取り出した。話し合いにならないのは目に見えていたからだ。はっきり言ってあの青年は正気じゃない。


銃を構える前に青年はレオめがけて突っ込んできた。いや、突っ込むというよりもレオのほうに走ってきた。


{こいつ、何を考えている?}


ぱっと見、武器らしきものは一つもない。武器を持っている相手に素手で挑むということは得策ではないことは明確だった。それに銃などの飛び道具を持つ敵に戦いを仕掛けるのならば正面からは絶対に行ってはならない。銃口を向ける速さとたかが人間の足の速度、どちらが速いかは言わなくともわかるだろう。それなのになぜこの青年は身を投げるような行為をするのだろうか。はっきりいって意味がわからない。

頭を狙うわけにもいかず、レオは青年の足めがけて弾丸を放った。


「ぐぁ・・・・・」


体を支えるべく足がもつれ、青年の体は崩れるようにして倒れた。


「何考えてるのか知らないが、戦う意思のないものにそういう行為をするのは―――」


レオの言葉は途中でさえぎられた。足を撃たれ、痛さで立てもしない青年が再び体を起こしこちらに走ってきたのだ。

あわてて弾丸が貫通した足を見た。しかし、あるべき場所に傷がなかった。

レオは嫌な予感がした。まさか、いや、そんなことあるはずがない。

その嫌な予感を確かめるため(もちろんもう一度青年の動きを止めるためもある)、レオは再び青年に弾を放った。弾は青年の足を貫通し、その傷から血が出たのが見えた。だが、


「!?」


今度は倒れなかった。傷に構うことなく向かってきた。自らの射程圏に入ったところで、青年は足を折り曲げ、そして跳んだ。ふと足を見ると、付けたはずの傷がなくなっていた。レオの嫌な予感は的中していた。致命傷にならない軽傷はすぐに再生してしまうのだ。


「くそっ!!」


距離をとろうと後ろに跳ぶが青年のほうが早い。レオは青年につかまれてしまった。


「レオ!!!」


「来るな!まだつかまれただけだ!!」


刹那が自分のほうに来ようとしたところを制止する。まだ青年の戦い方もわかっていなかったし、刹那を危険な目に合わせるわけにはいかない。が、



スバッ!!!



刹那の代わりにレナが来ていた。さらにレナは、レオをつかんでいた青年の腕の片方を神器『神抜刀・炎』で斬りおとし、自分も青年と距離をとった。レオもその隙に後ろに跳び、距離をとった。

腕を斬られた青年の腕からは、なぜか血が流れていなかった。


「来るなと言ったのに!」


「よく言うね。あんなに距離をつめられてるのに行かないわけにはいかないよ」


不機嫌にそういうレオだが正直、レナが腕を斬ってくれたのはありがたかった。おかげで青年との距離が取れた。


「おまえもか・・・・おまえも、僕を・・・・・・」


腕を斬られた青年は斬られたほうの傷を抑え、そうつぶやいた。

とたん、青年から出ていた殺気が明らかに増したのが感じられた。いや、殺気というよりも憎悪というべきか。

戦闘の経験がある二人には次にしてくる行動がわかった。攻撃だ。十中八九、攻撃がくる。


「ああああああああああああ!!!!!!!!!!!」


青年が叫び声を上げたその瞬間、刹那、レオ、リリア、レナ、4人は信じられないものを目の当たりにした。

青年の斬られた傷から無数の触手が出てきたのだ。いや、触手というにはそれほど太くはなく、よく見ると一本一本が針金のような大きさで、それらがひとつのまとまりとなってレオとレナのほうに向かってきたのだ。それはおぞましさを通り越し、恐怖を与えるに等しい光景だった。


「リリア、刹那!!!!物陰に隠れろ!!!!良いというまで絶対に出てくるな!!!!」


いままで聞いたことのないレオの本気の叫び声だった。レオにもう余裕なんてまったくなかった。


「リリア、早く行こう!」


「はい!」


す、と刹那はリリアの手をとり、二人は急いで近くの茂みに身を隠した。それを見届けたレオは今度こそ本気でかからなければならなかった。

するすると伸びてきた触手はスピードを緩めずレオとレナのほうに向かっていた。チャ、っとレオは銃を構え、その触手めがけて弾丸を放った。発砲音が響き、弾は触手を貫通した。が、その瞬間、まとまりとなっていた触手は離れ離れになり、改めてレオとレナに襲い掛かった。


「はああぁぁあ!」


レナは太刀を構えて飛び出し、向かってくる触手めがけて振り下ろす。触手の耐久力はそれほど高くなく、普通の鉄でできた剣でも斬れるという感じの強度だった。触手が分離したことを確認すると、レナはすぐに後ろに跳んだ。

しかし、斬れたはずの触手はあっという間につながり、悪いことにレオの方に向かう触手、レナの方に向かう触手と、二手に分かれてしまったのだ。さらに今まで動かなかった青年も斬りおとされた腕を手に取り、レオのほうに向かって走った。


「くそっ!!」


レオは青年に銃を連射し、寄ってくるのを阻止しようとしたが、触手がちょうど盾になり、邪魔で当たらなかった。弾も触手を貫通するものの、弱まった弾の威力は青年にダメージは与えられない。青年はレオが射程圏に達したことを悟ると、斬られた腕の指先のほうをレオのほうに向けた。すると、一瞬で指先が鋭く尖り、そのまま凄まじい勢いで伸びていった。


「っく!!」


前方から触手と槍の如く指先。後ろに逃げれば伸びてくる指の餌食。左右に逃げれば触手に捕縛される。残りは上空。足に力を込め、青年を飛び越えるように跳んだ。指と触手は空をきり、青年はレオのいる上空をみるため、ぐぃと顔を空のほうに向けた。

レオはそのまま青年の背中に弾丸を撃ちまくった。一発二発三発四発五発、青年はよけることができず、弾はすべて青年の体を貫いた。青年はさすがに効いたのか方膝を地面につき、口から血を流した。それを見たレナは勢いが弱まった触手をかわし、青年に接近する。


「はっ!!」


倒れている青年に容赦なく攻撃を加える。体への斬撃を食らわせ、青年は地面に倒れてしまった。それと同時に触手も勢いを失い、青年同様、動かなくなった。その瞬間一気に周りの空気の重さがなくなり、それが戦いが終わったことを告げた。


「ふぅ。危なかったね」


「ああ。それより、何者だ、こいつ?」


「わからない。魔力は持ってないみたいだから能力者じゃないってことは確か」


「・・・・・・・。まぁ今は検証してる場合じゃないな。刹那、リリア!出てきていいぞ!」


そう叫ぶと、がさがさと茂みから少し青ざめた刹那と怯えたリリアが出てきた。リリアは出てくるなりレオのほうに走り出していき、飛びつくようにして抱きついた。


「怖かった。あんなのと戦って死ぬんじゃないかって、思うと、すごく怖かった」


こいつは自分の実力を知らないんじゃないか?レオはそう思いつつもリリアを抱きしめ返してやった。


「おまえは自分の兄貴の力も信じられないのか?俺は死なない」


「・・・・・・・・うん」


刹那はいつもならばここぞとばかりにひやかすのだが、今回はそんな気分ではなかった。初めて本当の戦闘というものを目の当たりにして肝が冷えていた。


「刹那、大丈夫?顔色悪いよ?」


「いや、大丈夫。ありがとうレナ」


刹那の顔色が悪いのを心配してくれたが、体自体はどこも悪くないので笑って見せた。


「死んだのか?」


「わからない。だが倒れてる今を逃すわけにはいかないだろう」


リリアの頭を撫でながらレオは刹那に言った。


「で、でも、このままじゃ・・・・・・」


「心配しなくても、こいつは再生力が並じゃない。ほとんど瞬時に回復してるから大丈夫だ」


その言葉通りだった。

レオの神爆銃に貫かれ、レナの神抜刀に斬られたはずの青年は、ゆっくりと立ち上がった。傷はさっきの間で全てふさがり、手には武器に変化する腕が持たれていた。腕はもう剣に形成されていた。


そしてその剣を

刹那めがけて

振り下ろした

もちろん

刹那は気づかない


「刹那ぁあああああああああああ!!!!!」


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