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第26話 不死編1

「それじゃ、私がいない間お願いね」


準備が全て整った。服装は比較的身軽なもので、手には刹那の大剣を受け止めるほどの強度の紅い太刀のしまわれた鞘が握られていた。あとは出発するだけとなったレナは自分の一つ下の階級の兵士、つまり副兵士長にあとのことを頼んでいた。


「そ、そんな。隊長がいない間に能力者が現れたらどうするんですか!?それにまだ国民に知られていないとはいえ、国王の死についてはどうなさるのですか!?」


当然副兵士長は引き受けるはずがない。自分よりもはるかに強く、人望もあるレナを異世界に行かせたくはなかった。


「仮に来たとしても、正気の人間だったら国に喧嘩売るような真似はしないし、王の件は大臣がなんとかしてくれるでしょ」


「し、しかし・・・・・・」


もっともな意見に、副兵士長は口を紡いだ。それを見たレナは笑って、


「大丈夫、あなたならやれる。しっかりね」


「はい・・・・」


納得ができなかったのだが、レナの笑顔と説得で返事をしてしまった。

レナはそのまま固まっている副兵士長のいる廊下をあとにし、まっすぐ刹那たちの待つゲートの前まで向かった。


「お、来たな」


「レナさん早く〜」


途中の王の間の扉を開けるなり、声はとんできた。ふふ、と笑いながらレナは急ぎ足で三人の近くに寄った。


「で、どうやって行くの?」


当然のことながらレナは異世界の行き方というものを知らない。異世界なんてあることすら知らなかったのだから当然のことなのだが。

それを聞くとにやっと笑い、刹那は右手を出した。黒い魔力が刹那の体からあふれ出て、大剣の形が形成される。


「こうするんだ!!!」


その漆黒の刃の大剣を握り締め、刹那は空に向かって勢いよく放った。

とたん、ごごごという音が辺りに鳴り響き、刹那が斬った部分に穴が開いた。ゲートだ。

レオとリリアは一緒に入り、刹那も入ろうとするが、


「レナ?」


レナが入ってこないことに気がついた。レナはゲートをじっと見つめている。何も言うことなく、ただじっと見つめている。


「どうしたんだよ?早く入らないと閉じちゃうって」


刹那の問いかけにも応じず、レナは硬直していた。レナがそうしている理由はわからないが、早くしないとゲートが閉じてしまう。


「・・・・・・わ!?」


刹那はレナの手をつかむとレナは我にかえった。刹那は構うことなくそのまま一緒にゲートに飛び込んだ。入るとほとんど同時にゲートは閉じてしまった。間一髪だった。

ゲートの中は前に通ったときと同じ虹色で、レナは物珍しそうに眺めていた。


「さっきはどうしたんだ?何にも言わないで黙ってて?」


「ちょっとね、怖かった。それだけ」


「怖い?」


レナの答えに刹那は疑問を抱く。


「うん。これからどうなっちゃうんだろう、とか、生きて帰ってこれるのかな、って。考えてたら、動けなくなっちゃった」


刹那が思っていたレナのイメージとはかけ離れた答えが返ってきた。戦っているときの姿からはどうやっても想像できなかい答えだった。


「どうしたの?」


「いや、驚いた。かなり」


正直に言うと、レナは怒るでもなくすねるでもなく、笑った。


「戦ってたときは強くて、凛々しい感じだったんだけどな。そんなこと言うなんて思ってもみなかった」


「それは刹那が敵だったから。今は異世界を一緒に旅する仲間でしょ?仲間にはもっと自分を見せないとね」


会話していると、光が見え始めた。レオとリリアはおそらく着いているだろう。


「そろそろなの?」


「うん、光が見え始めたらもうすぐ次の世界の合図」


まばゆい光が刹那とレナを包み、二人は目を閉じた。だんだんと光が消えていくことを察した二人は目を開けた。するとそこには刹那とレナを見てにやにやしているレオとリリアの姿があった。


「お〜お〜御二人さん、出会って間もないのに仲良く手なんてつないじゃって」


「お似合いですよ〜、二人とも〜」


言われて刹那は気がついた。そういえば、あれからずっと手をつないでいたのだ。当然今も手をつないでるわけで・・・・・


「うあああああ、違う!これにはわけが!!」


あわてて手を離すがもう遅い。レオの野次は続くのであった。


「言い訳がましいなぁ刹那。そんなに照れてるんじゃ自供してるもんだぜ」


「だから違うっての〜〜〜〜!!!」


あわてる刹那をからかうレオ、二人の様子を面白そうに眺めているリリア。思っていたよりも、ずっと楽しい旅になるかもしれない。レナ自身も気がつかないうちに自然と笑っていた。





+++++++





騒ぎが一段落したところで、一同は何をすべきかを検討することにした。現在の場所は竹やぶの中。しかし、竹はそれほどなく、真上からの太陽の光が十分に感じられる所だ。


「それで、どうするんだ?レオ」


「どうするも何も、まずはゲートの確認から始めないとな」


そうか、と言って刹那は服の中から水晶を取り出し、それを太陽の明かりにかざした。光は水晶の中に吸い込まれていき、一筋の光が水晶から出た。


「あっちみたい、早く出発しよう」


「うん、じゃ行こっか」


光の指した方角目指して4人は歩き出した。数歩歩いただけで竹やぶのをぬけ、代わりに少し険しい上り坂が目に入った。

そういえば、と上り坂を登っていく途中、刹那はレナのほうを向いてたずねた。


「なぁ、なんでレナの剣は俺の大剣じゃ斬れなかったんだ?他の兵士の剣は斬れたのに」


「簡単だ。その剣も俺の銃と同じ『神器』だからさ」


レナが答える前にレオが答えた。


「そう。この神器の名は『神抜刀・炎』。私の家庭に代々伝わってきて、二十歳になったらこれを先代の保持者から正式受け継いできたの。でも、これを持っていた父が亡くなってしまったから二十歳になる前に受け継いだの。て言っても最近のことなんだけどね。」


通りで斬れなかったわけだ、と刹那は苦笑した。


「それから父のあとを継いであの国の兵士長になったってわけ。小さいころから父に剣を教えてもらってたから、実力のほうは問題なし。周りからは歴代兵士長の中で一番強いとまで言われたときもあったっけ」


レナは少し自慢げに話した。


「へぇ。じゃあレナさんも私たちと同じだったんだ。私も兄さんと一緒にお父さんから訓練を受けてたんだ。まぁ私は全然だめだったけどね」


あはは、と笑いながらリリアもレナに話しかけた。短い時間でも、レナはこの三人の中に溶け込めたようだった。


「おい、村が見えたぞ」


上り坂を登りきったとき、レオが三人に言った。険しい坂を登った先には数件の家の集まり、つまり村が見えた。

4人は少しはしゃぎながらその村に向かった。人気はそれほどなく、レナの国の町のような活気とは比べほどにならないほど静かだった。といっても何か争いごとのようなことはないようだった。目が死んでいなかったからだ。

さて、と言ってレオはこれからのことを相談するため、3人に話しかける。


「これから俺は村の人に親父の情報を聞いてくる。お前たちはどうするんだ?」


「私は兄さんと行く」


「う〜ん、少し見てまわるかな。散歩みたいな感じでさ」


「私も見てまわりたいな。刹那と一緒にまわる」


っと、ここまで順調に話が続いていたのだが、レナの言葉に再び二人がニヤニヤして刹那とレナを見る。


「お〜お〜、仲がよろしいことですねぇ〜、二人とも」


「さっきなんて、ぎゅって手をつないでたしねぇ〜」


ひやかしの言葉が刹那を襲った。レナははっきり言ってあまり気にせずははは、と笑ってやり過ごしていたが、刹那は単純なのでそうことにすぐ反応してしまう。


「う、うるさいなぁ。解散解散!待ち合わせはここだからな!!」


「あれ〜?刹那さん顔が赤いよ〜?気のせいかなぁ〜?」


「いいから早く行く!!」


「はいはい、わかりましたよ」


なんとかその場はやり過ごしたが、帰ってくるとまたひやかされそうだなと心の中で刹那はつぶやいた。


「さて、行きましょうか。どんなものがあるのかな〜」


「ああ、行こう」


そう言って二人は村の探検、―――見学に行くのであった。


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