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第22話 女兵士長編1

刹那、レオ、リリアの3人はゲートを通っていた。一人で通った感じとはまた違うなんというか落ち着くような感じで、それがなんだか落ち着いた。


「なんだか変な感じがするね」


ゲートの中をきょろきょろと見渡してリリアは言葉を漏らした。今までは(といっても二回きりだが)ゲートの中をゆっくりと見渡すということをしなかった刹那はそんなリリアの言葉につられてゆっくりと見てみた。まわりは七色というか、虹色というか、そんなたくさんの色が混じった感じで、あまりじっと見ていると引き込まれそうな感じだった。


「刹那、これっていつ頃に到着するんだ?」


「何言ってるんだよ。まだ入って20秒ぐらいしか経ってないだろ」


レオが口を開いたかと思うと、いつも冷静なレオには珍しいせっかちなことを聞いてきたため、刹那は一瞬意表を突かれてしまった。


「そうだな・・・・一分ぐらいじゃないかな。正確な時間はよくわからない」


レオ達の世界に来たときに通ったゲートはだいたい一分ほど通ったような気がする。と、言っても計ったわけでもなく、ただなんとなく感じたというだけの話であるが。


「あ、光が見えてきたよ」


そうこう言っている間に光が見えてきた。刹那の世界か、はたまた違う世界なのか、その時点ではまだわからない。

徐々に光に近づいていき、3人の体は光に包まれた。3人ともまぶしさに目を閉じた。あたりの光が消えたことを察した3人は、ゆっくりとあたりを見渡した。周りは草木の生えている公園のような場所だった。しかしそんな周りの景色よりもひときわ目立つものが目に飛び込んできた。


「なんだ、あれ。城か。俺たちの城よりもでかいな」


白い城壁でとがった屋根、中世のお姫様が住んでいそうな感じの城だった。ただし、その城はやたらと大きく、明らかに東京ドームの広さの10倍はあった。


「わぁ〜、すごいなぁ。あんな城に住んでみたいな〜」


そのあまりに見事な情景にリリアは感想を一言。ただし、言った直後にレオに突っ込みを食らったが・・・


「いった〜い。何するのよ兄さん」


「んなこと言ってる場合じゃないだろ。刹那、どうする?しばらく滞在するか?それとも次の

世界に行くか?」


レオが城に見入っている刹那に声をかけた。刹那はレオのほうを向き、微笑んだ。


「レオの父さん探さないといけないんだろ?ここに滞在しよう」


「いいのか?おまえも家に帰りたいんじゃないのか?」


「いいよ別に。せっかく来た世界だし、ゆっくり見てみたいよ。ここは争いとかはなさそうだしさ」


刹那の気遣いに感謝しながら、「そうか」と一言言った。


「じゃあ行ってみよう。いけばレオの父さんの手掛かりが見つかるかもしれない」


刹那の言葉と共に、3人は城のあるほうに歩き出した。

大きいと感じていた城は近づくにつれ大きくなっていき、やがて城門の前までたどり着いた。


「あれ?」


城門の前に来て疑問符を浮かべたのはリリア。

なぜかというと、城門の扉が開いていたからだ。普通城門は外敵を城に侵入させないために閉じているものなのに、この世界の城の城門はまるで入ってくださいと言っているかのようにはじのほうまで扉を開けていた。

おかしいと思ったのは刹那以外の二人だった。簡単には破れなさそうな城門をわざわざ開けておく意図が理解できなかった。


「どうしたんだ二人とも?」


そんなことに何一つ疑問を抱かない刹那は、なにやら考え込んでいるレオとリリアに問いかけた。


「いや、なんでもない。行こう。」


そう言って、3人は城の中へと足を踏み入れた。


「うわぁ〜。すげぇ・・・」


感嘆の声を刹那は上げた。城の中に町があったのだ。城の中なのに明るいのは上のほうに窓があるからで、それ以外はいたって普通の町だった。しかも、その奥には階段があり、どうやらそこの上がこの城の主がいるらしい。


「どおりで大きいわけだな」


町を歩く通行人、店の前で大きな声で宣伝している店員、隣同士仲良く歩いている恋人、手をつないで今晩のおかずについて話している親子。なんだか見ていてほっとした。

とりあえず酒場に行こうとレオが言った。RPGゲームでも酒場での情報収集は基本である。足を進め、どこかに酒場はないかと探してまわる。この町にはたくさんの店があってなかなかそんな雰囲気の店は見つからなかった。

そういえば酒場というのは夜から開くものではなかったか?と刹那は心の中で投げかけてみる。


「あ、あれじゃない?」


リリアが指を刺したのは少し古びた建物だった。その建物の扉は少し日焼けをした茶色の木で出来た扉で、上のほうにはビールジョッキによく似たグラスの看板があった。


「入ってみるか」


迷わず足を運んでみた。レオが扉に手をかけると扉はぎぃと音をたて開いた。

中はリリアの思ったとおり、酒場だった。木製の丸いテーブルに酒を置きにぎやかに話し合っている男たちは酒の飲みすぎで頬を真っ赤にしていた。


「ちょっと待ってろ」


そう言うと、レオはカウンターでコップを磨いているバーテンの方に向かっていき、話しかける。レオの話を全部聞いたあと、バーテンは首を横に振った。

少し残念そうな顔をしてレオは戻ってきた。


「やっぱり最初から見つかるわけないか。情報0だよ」


言い終えるとははは、と苦笑いをした。予想はしていたとはいえ、実際に起こってみるとやっぱりがっかりする。


「それじゃ、少しまわってみるか。色々見ておきたいんだろ?」


そういえばと、刹那は思い出した。せっかく来た世界、できることならこの世界にしかないものを見てみたかった。いろんな建物の中にも入ってみたかった。


「うん。実はまわってみたかったんだ」


嬉しそうに言う刹那。レオは苦笑いを微笑みに変え、行くかと言って酒場を出た。

酒場を出て、にぎやかな通りに出てきた一同。どこから行こうかな、と楽しそうに考える刹那であったが、


「あ、あれ面白そう」


リリアがそう言って二人の袖をつかみ小走りでその場へと向かう。リリアが面白そうと言ったのは砂時計のようなものだった。ただ刹那の世界と違うのは、砂が上に落ちているということだった。重力を無視しているこの砂時計の仕組みはどうなっているんだろうか。


「あ、あれ可愛い」


再び二人の袖をつかみ、人形を売っている出店に向かった。なんというか、可愛いというか奇妙なぬいぐるみだった。虎と熊が合体したようなへんてこりんな人形。女性はこんなものが好きなのか?女心などわかるわけもない刹那は頭の中でつぶやいた。


「あ、あれおいしそう」


またもや二人の袖をつかみその場へと向かう。おいしそう・・・・・とはずいぶんかけ離れたものだった。果物なのだが、皮は紫で果肉は茶色をしていた。これの一体どこがおいしそうなのか、こっちが聞いてみたかった。

こんな感じで、リリアの強烈な女の子パワーでレオと刹那は強制的にリリアのあとをついていくはめになってしまった。





++++++





「あ〜、面白かったね。他の世界って楽しいものいっぱいあるね」


「・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・」


「どしたの二人とも?せっかく珍しいもの見れたのに・・・・・」


二人は言い返せなかった。まさかリリアがこんなに歩くものだとは思っても見なかった。この世界に来たときはまだ朝だったのに、今では太陽は西に傾きかけている。その間、休みなしで歩き続けていた。刹那はもちろんレオまでもくたびれていた。


「おまえのせいでくたくただっての」


「ええ、なんでよ〜」


リリアにしてみれば本能赴くまま行動しただけらしい。


「とりあえず、休憩しよう・・・足が・・・・・・」


刹那が死にそうな顔をしていた。比喩ではない、本当に。


「そ、そだね・・・・・あそこで休もっか・・・」


刹那の顔を見てさすがに悪いと思ったのか、リリアはベンチに座るよう促した。刹那はふらふらしながらベンチに座り込んだ。


「あ〜〜〜、生き返る〜〜〜」


だらしのない声を上げて刹那は足の疲れを癒した。


「座るか・・・・・・・」


「そだね・・・・・・・」


レオとリリアもベンチへと向かった。






数十分が過ぎた。刹那とレオの疲労も少しは和らぎ始め、それと同時に辺りは暗くなり始めてきた。


「さて、次の世界に行こうするか」


「え!もう夜だぜ!?」


驚く刹那にレオは笑って言う。


「だから行くんだよ。今のうちだったら奥の方にゲートがあっても忍び込みやすくなる。確認したらゲートの近くで休めばいい。もちろん見つからないところでな」


相変わらず頭の回転は速かった。おそらくもう手順は考えているのだろう。

休んだことで疲れは少しだけ楽になった。たぶんいけるだろう。刹那はふところから水晶を取り出し、月の光に水晶をかざした。光は一直線にのび町の奥、すなわち城の中を指した。


「やっぱりな。どうも嫌な感じがしたんだよな」


レオは笑っていた。苦笑いではなく、自分の勘が当たったことを喜んでいる笑いだった。

3人は奥の城へと向かった。夜になっても町のにぎやかさは消えることはなかった。さすがに完全に人がいなくなるとまではいかなかったものの、夜には夜なりのにぎやかさがあるらしい。

そのにぎやかな町並みを抜け、城へとつながる階段を一段一段上っていった。段数はあまり多くはなかった。学校の階段を上るような感じだった。

そして3人は城の前へとたどり着いた。さすがに城の前には鉄格子があり、さらにその前には見張りがいた。やはり見張りは付き物なのだなと心の中でつぶやいた。


「さて、どうする?って・・・・・」


言い終わる前に、レオはぱっと飛び出していた。何者か気が付かれる前に一人、声を出される前にもう一人、銃で頭を殴って気絶させた。

ばたりと倒れたところで刹那とリリアはレオのそばに寄った。


「手馴れてるな」


「まぁな」


刹那の関心はレオの一言で終えられた。


「で、どうするんだ?真正面からつっこんでいくわけじゃないだろ?」


刹那はレオにたずねた。実は刹那は心の中ではなにか考えがあるのだろうと思っていた。


「ああ、あるぞ。二人とも今から言うことをよく聞いとけよ」


刹那とリリアはレオの近くにより、その作戦の内容を聞く。見張りが気絶しているとはいえ、油断はできない。レオはなるべくわかりやすく、的確に内容を伝えた。のだが、


「お、おい。そりゃないよ」


「そうだよ兄さん。そんなの刹那さんがかわいそうだよ」


作戦を聞いたとたん、刹那とリリアの反対の声が飛んできた。レオもあまりこの作戦を気に入っていない様子だったが、


「仕方ないだろう。この城の内部の情報は絶対町のほうになんか流れないし、城の中を知るためにはこれがベストなんだ」


と、作戦の意図を二人に告げた。

刹那は苦虫を噛み潰したかのような渋い顔をし、いやいや首を縦に振った。よし、とレオは手を叩いて立ち上がり気絶させた二人の見張りの鎧を脱がし始めた。完全に気絶している見張りの鎧を脱がすのはそう難しいことではない。2分もかからないうちに鎧は見張りの体から離れた。


「ねえ兄さん、ホントに良いの?」


レオの脱がした鎧をつけながらリリアは不安そうにレオに聞いた。兜をすっぽりとかぶったレオはそんなリリアに言う。


「よほどのことがない限り大丈夫だろう。それじゃあ刹那、あまり無理はするなよ」


鎧を着け終わったレオは少しむくれている刹那に言い聞かせた。


「危ない役を俺に回しておいてよく言うよ」


やはり刹那は自分に回ってきた危険な役に納得していない様子だった。



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