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第13話 偽者編1

{AIも元にもどったし、クリスもロックスも大丈夫だって言ってたし、後は何とかなるだろうな}


そんなことを思いながら、ゲートの中を移動するは刹那。前に移動するときには気が付かなかったが、移動のときは体がふわふわ浮いているような感じだ。それを感じ取ることが出来たのは、前の移動よりも大分余裕があったからだろう。

安心、出来たからなのだろう。ダンのときは命が危険かもしれなかったが(刹那の見た限り)、今回はAIが命に別状はないと言ってくれたおかげで、だいぶ楽な気持ちになっていた。


{次は、家の前だったらいいな。何事もなかったみたいに、家に帰りたいな。}


こんなことを思っているうちに、周りが光に包まれて、いつのまにか新たなる世界へと、たどり着いていた。


「・・・・・・・・・・・ん?」


気付いたときには、その場に倒れていた。が、痛みはない、ただ倒れていただけだった。

やれやれ、とゆっくりと立ち上がって周りを見渡す。そこに広がっていたのは、荒れた地帯、荒野というやつだった。草が、一本も生えていない。何もない、文字通り、ただ荒れている地。


「なんだ?ここは・・・・・」


何があったのだろう、どこに行けば良いのだろう、何をすれば良いのだろう、行く当てなんてない、自分は何をーーー


『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!』


突如、前後から鳴り響く怒声が耳に入り、我に返る。

前を見ると、鎧を纏った兵士が馬に乗って、一列にこちらへと向けて走ってくるのが見える。後ろを見ると、武器を持った人間がこちらに押し寄せてくるのが見える。


{あれ、もしかして・・・・・・・}


双方激突するつもりだ。ということは、間にいる自分が何よりも危ない。


{や、やべえ!!}


思った瞬間、刹那の足は動いていた。方向は前でもない、後ろでもない。右方向。

どちらの軍に逃げたとしても、命の保証などどこにもない。とりあえず今は自らの命が先決、ここから一刻も早く逃げ出す、ということが刹那の頭に一瞬にして浮かび、自然と体が動く。その行動は、自分の命の危険を感じた刹那の脳が、勝手に信号を送ったための行動だったのかもしれない。

自分の全速力がこんなに遅いものだと、刹那は初めて感じた。

右の方の普通の人間は問題ないとして、左の方の馬はものすごい速さでこちらに向かってくる。人間と馬とでは、圧倒的に馬の方が速い。人間の足では、どうがんばっても逃げ切れない。


{だ、だめだ・・・・・・}



思った瞬間、異変は起きた。

馬の足元が爆発したのだ。一列に並んで走ってきた馬、兵士たちは一斉に空へと舞い、後ろの部隊に激突する。まるでそれはドミノ倒しのようだった。激突した部隊はその場に止まり、後ろから来た部隊にぶつかる。ばたばたと倒れていく姿に面白さも覚えてくる光景だが、空に舞ったのは、何も兵士たちだけではなかった。


「うわああああああ!!!!!!」


先ほども言ったが、だめだと思った瞬間に爆発したのだ。刹那が空に舞っていてもおかしくはない。爆風により、2メートルほど空中に上がった後、背中から地面にたたきつけられる。


「あ・・・・・・・・・・ぐ・・・・・・・・・・・・」


味わったことのない痛撃に、刹那は気を失ってしまった。


「はははははは!!さすがレオさんだぜ!みんな帰ってくよ!」


「あれ?あそこに誰か倒れてるぞ」


「本当だ。国王軍じゃないみたいだ。どうする?」


「連れて行くに決まってんだろ。こんなところに放置してちゃ危険だ」


「ええ!こんな得体の知れないやつを?」


「レオさんが居たら絶対連れて行くって。あの人ならな」


こんな言葉が、気を失う直前に耳に入ってきた。



++++++



決して柔らかくはないほこり臭いベッドの上で、刹那は目を開けた。地雷の爆風によって空中の吹き飛ばされたということを、徐々に、鮮明に思い出していく。痛みに怯えながらゆっくりと体を起こしてみるが、なんともない。大丈夫のようだ。

興味に駆られて、病み上がりの体であたりを見渡してみる。

ここには、このベッドにも負けないくらい、ほこり臭そうなベッドがたくさんあり、その上には腕に包帯やら、足にギプスやらをつけた人が寝ており、ベッドの半数はけが人で埋め尽くされていた。

見ただけでわかった。なにか争いごとをしている、まぐれでもこんなに人が傷つくはずがない。

とたん、前の二つの世界のことが思い出された。

両世界、争いごとをしていた。戦争、といっても良いかもしれない。

そのおかげで、死人もたくさんでた、大切な人が数え切れないくらい失われた。帰るべき場所も、大切な思いでも、なにもかも、焼き払われてしまった、壊されてしまった。たった戦争の二文字だけに。


{この世界もか。たくさん死んだ人がいるんだろうな}


思うと、なんだか悲しくなってきた。自分には何の関係もないのに、なぜか悲しかった。


「お、起きましたね。グッドタイミング、ってやつですか」


声のしたほうに顔を向ける。

てってと自分の方に歩いてくる若い男は、いかにも大臣といった服装だった。丸めがねに、右手には分厚い本、頭にはどこかの博士がかぶっていそうな帽子さえもかぶっていた。


「いや〜、男たちに担がれてきたときは驚きましたよ。一瞬死んでるんじゃないか、って疑ったくらいですからね」


「はぁ、と、とりあえず助けていただいてありがとうございます」


一方的な話し方に少々戸惑ってしまうが、とりあえず自らを助けてくれたことの礼を述べる。男は声では答えず、代わりににっこりと笑うことで答えた。

「さて、怪我も火傷もないようですし、さっそくあの人会ってもらいましょうか。あなた素性もそこでお伺いさせてもらいますよ」


にっこりと笑ってはいるが、やはり怪しがっているらしい。あたりまえであろう。むしろ、その怪しい者を救助すること自体間違っている。


「会うって、誰に?」


疑問を浮かべる前に、聞いてしまっていた。男は胸をはって、


「我らの英雄、また次期国王様のレオ・ヴィンスタール様です!!」


答えた。



+++++



部屋をぬけ、目の前の男についていく。見回すと、ここは城のようだった。石で出来た壁、無数にある木の扉、広い中庭。しかし、奇妙なものだった。普通は中庭に花やら噴水やらをつけるはずなのだが、広い中庭一面、畑で埋め尽くされていた。くわを持って耕す者もあれば、ブリキのじょうろで作物に水を与えている者もいた。変わった城もあるものだなぁと、刹那は頭に浮かべる。

ゆっくりと(病み上がりの刹那の体を気にして)歩いている男が階段にさしかかる。こつこつと上がっている途中、ふと壁の「2・・・3」と書かれた文字が目に入る。

あそこの部屋は2階だったのかと、素朴なこと(まぬけなこと、ともいう)を考えているうちに三階へとたどり着く。奥の方に一際大きい扉がある、おそらくあそこだろう。

男は歩を緩めることなく、その扉の方へと向かう。刹那もそのあとを追う。だんだんと扉に近づき、男は扉に手をかけ、ゆっくりと開ける。




カチャ、




突如、静かで、冷たい金属音がした。

見ると、つぎはぎの玉座に座っている青年が、右手の手に持った銃をこちらに向けていた。よくテレビなどで見かける警察の拳銃などというちんけなものではなく、ゲームなどに出てきそうな形であった。


「なんだ爺か、脅かすな」


不適に笑うとその青年は、右手の銃を下ろした。

見た目は刹那より少し年上という感じだった。銀色の長い髪の毛に、海のような深い青い瞳。袖の短いシャツに長いズボン、身軽な服装だった。


「扉開けるたびに銃口をこちらに向けるのはよしてくださいよ、レオ様。それに、私はまだそんな歳じゃありませんよ」」


ふぅ、とため息をつき、レオと呼ばれる青年の前に近寄る、もちろん刹那もあとから続く。


「そいつかい?倒れていたやつは」


興味津々に男に聞く。先ほどの苦情は無視した。


「ええ、見た限り怪我もない、魔族のようです」


レオという青年はうんうんと頷いた。

刹那には爺と呼ばれる男の言葉に怒りを覚えた。魔族、といわれたのだ。ごく普通の少年(自称)が。

魔族といえば、人間に害を及ぼす存在だったはずだ。ごく平凡な人間がいきなり人類の敵だと、そう言われたのだ。


「俺は普通の人間だ!!」


自分が害のある人間だと言われて気分の良いやつなど存在しない。だから口に出してしまった。自分はそんな危険な存在ではない、と。

爺と呼ばれた男はぽかんとしていたが、レオと呼ばれる青年は大口を開けてはははと笑った。


「あたりまえだ。そうだよ、お前は普通の人間だ」


意味がわからなかった。魔族だと言ったり、人間だと言ったり、どっちなんだと言いたくなった。


「どういうことだ?」


少し挑戦的に言い放った。本当に意味がわからなかった。一体、自分は何者なんだ?苛立ち始めてきた。

「知らないのか、だったら教えてやる」

刹那の声にも動じず、それどころか笑いを抑え、レオと言う青年は語りだす。

「一般的に人型、つまり俺たちみたいな姿の生き物はみんな人間と呼ばれてる。その人間を更に4種類にわけたものを『種族』っていうんだ。分け方は実に簡単。目と髪の色で判断する。黒、紫系統の色だったら魔族、白、青系統だったら神族、赤、オレンジ系統だったら鬼族、黄、緑系統だったら獣族、という具合かな。まったく、だれがこんなこと決めたんだろうな」


説明に一生懸命頭を使う刹那。その姿を見て、ふふふ、と大人らしい笑いを浮かべたレオという青年は刹那に問題を出す。今習ったばかりの簡単な問題を。


「じゃあ、今言ったことをふまえて、俺の種族を言ってみろ」


本来は言ってやる必要なんてないのだが、単純な刹那はそのことに気付かない。

う〜ん、と頭をひねらせ青年の言葉と照らし合わせる。


銀髪、青い目、つまり、



「神族、ってことになるのか?」


青年は満足そうに頷き、

「その通りだよ、短気な魔族の少年さん」


先ほどの刹那のことを指摘する。いわれた刹那は少しむっとなるが、勘違いした自分が悪いので反論せず、しょんぼりとうつむいてしまった。


「そういえば、自己紹介がまだだな。俺の名前はレオ・ヴィンスタール。レオって呼んでくれ。んで、こっちが俺の側近の爺だ」


「爺って歳じゃないって言ってるのに。ああ、私は大臣とでも呼んでいただければ」


二人はそういって自己紹介を終えた。


「俺の名前は刹那、杉本刹那」


うんうんと首を少しだけ上下させ、本題へと話を移す。


「それで、お前はどこから来た?俺の策にひっかかったってことはこの城のものじゃないし、第一、服が変だ」


その答えについて、刹那は話し始めた。

異世界飛ばされたこと、その世界の事件のこと、家に帰りたいということ、もちろんゲートのことも。


「・・・・・・・・・・・・・・・・ということなんだけど」


大臣は口を開け、刹那の話に驚いていた。レオはあごに手をやり、いかにも何か考えているという格好を取っていた。


「なるほど、そうなれば全部説明がつく、な」


手をあごにやるのをやめ、次にレオが、


「よし、それじゃあ、今度はこの世界のことを話そうか」


語り始める。この国に起こっていることを。


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