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12.


「…私の何を知っているの…?あなたとはまだ数日しか会っていないわ!私の素顔もまだ見ていない!何で何も知らないのに受け入れれるの…!?」


エシンの腕を払いのけた。

気づいたら夕日が指しており、2人の影が伸びる。


完全にエシンにやつ当たりしているのが自分でもわかる。好きな人と結ばれない悲しさとエシンの思いが今は理解が追いつかない。


目的である和親公主としてエシンに気に入られる事は幸運な事である。だが、頭では分かってても感情がついていけない。


「確かに()顔を見ていなかったな。そうだな。俺がお前を選んだ理由を教えよう」


エシンは私に近づき私の背中を触る。


「何を…!?」

バチッッッ!!!

突然目の前が真っ白になり背中に電流が走る感覚が起こる。この感じは前に貴妃に触られた時と似た感覚だ。全身の血が沸り背中の肩甲骨らへんが燃える様に熱い。


「ああ!!!」

我慢ならず声を上げ自力で立っていられずエシンにもたれ掛かる。エシンが手を当てている箇所が光っている。


「もう、覚醒しかけていたものを呼び起こした。お前は、女神の生まれ変わりだ。」


エシンの声を最後に意識が切れた。


――――――――――――――


遠い過去のお伽話。世界は一つの民族しかいなかった。自らを龍の民と名乗っていたが、そして徐々に民族は別れていき北の草原地帯に風の狼の国。中央に龍の国、西からは別の神、光の女神が現れた。光の女神を狼の民が守護した。光の女神は告げる。世界の王を私が選定すると。


「女神よ、誰を王にするか示してくれ…」


人々に請われていた。混沌の世を終わらしてくれと。

多くの民が血を流していた。世界の終末の日に最後の審判を下し、善なるものと悪しきものを再び分離させる。善なる絶対的王を決めなくてはいけない。


背中に大きな翼が生えた白髪の少女が多くの民衆から手を伸ばされている。側に1匹の巨大な狼が寄り添う。


その光景を見た後夢から目覚めた。


「今のは夢…?」

「起きたか。無理やりしたから耐えれなかった様だな」

エシンが膝枕してくれている状況にびっくりして起き上がった。

「もう起きたから!!…それより説明して。私に何したの?」

エシンと向かい合って座った。

「お前は、光の女神の生まれ変わりだ。その証拠に背中に翼の刻印がある。」

「え!?そんなの私ないわよ?」

「刻印の封印は今解除した。今浮かび上がっている。風の狼にしか解除はできないからな」


さっきから背中が熱くヒリヒリしてる感覚があり、襟をめくってみたが見えなかった。だが、明らかに違和感があった。

「風の狼?」

「龍の国の建国の話の中に出てくるだろう。光の女神を守護する存在として」

「確かにそうだけど…あれは伝説でしょう?」

「伝説ではない。俺はその狼の生まれ変わりだ。」


そういうとエシンは徐に手を上げた。その瞬間風が発生しかまいたちの様に飛び周りの草原の植物を切り捨てていった。


「すごい!…あれ、あの風何処かで見た…もしかして!長安に来てた?林の中で変な化け物から助けてもらった人が出してた。」

「バレたか!そうだ。一度お前に会っている」


衝撃的な事だったから覚えている。

「あの化け物は呪いの様な物だ。また今度説明しよう。それより、普段はそんな話し方なんだな。」


ハッ!?しまった!今王に話しかける態度じゃない!


「か、可汗様!申し訳ありません!」

「いや普段通りの方がいい。お前らしくて好きだ。」


エシンは何だか嬉しそうに微笑んだ。

好きって言葉に反応して顔が熱くなる。

「またすぐその様な事を…!?」

「俺はずっと女神の生まれ変わりを探していた。俺もお前も悠久の時からずっと輪廻転生を繰り返していた。だが、一度も会えずにいた。それがやっと叶ったんだ。お前をずっと愛していた。女神ミスラン」


エシンが私を抱きしめてきた。

その瞬間私の心が冷めていく気がした。この人がずっと話しかけていたのは私ではなく女神だったのか、と。

エシンを押し返して離れる。

マスク越しにエシンの目を見て身構える。


「…やめて。私は女神じゃない。生まれ変わりだろうとそんなすごい力もない。私はチェンシーよ。あなたが愛した人ではない。」

「姿形が違っても魂は一緒だ。長らく器だけで覚醒出来ずにいた。ミスランの魂が覚醒できたのはお前が初めてだ。お前はミスランでもありチェンシーでもある。」


急にお前は女神だ、なんて言われても分からないし私はチェンシーとしてしか生きてきてない。エシンの考えが理解できずにいた。


「女神って言われても、分からないわ」

「なら、そうだな。チェンシーとして愛そう。女神ミスランとしてではなく。俺としては一緒なんだが、納得できない様だからな。今のお前を見よう。」


エシンは私の手を握って手の甲に口付けしてきた。

真っ直ぐすぎる愛情に動揺する。

急いで振り払い、草を食べていた馬の元に向かう。


「私はあなたを見れるかは分からないですからね!!」


「ああ。それでいい。」

含み笑いしていたエシンはエーデルワイスに目を向けた。

「必ず振り向かせる。他の誰でもない。この俺に」

風に白い花が揺れる。辺りはすっかり暗くなり夕日は沈みかけていた。


馬が乗せてくれなくて困ってるチェンシーの元にエシンは歩い行った。








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