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11.


数日後、チェンシー達は無事にウテュケン山まで辿り着いた。


ウテュケン山の麓には数万人の人々が天幕を張り遊牧生活をしながら暮らしていた。みなエシンの元に集った人々だ。

ウテュケン山の頂にエシンの天幕があった。巨大な天幕で王が住んでいると一目でわかるほど豪華な造りだ。入り口は東向きに設置されており、これも突厥の可汗の伝統らしい。


太陽を一番にあたる位置に暮らし、その恩恵を与えてもらうとの事。


突厥の暮らしは長安とは違って自然と共有して生きている人々だと感じた。

無事に着いたということで、長安の忠臣達の兵士たちは帰り、ワンと元徳だけ残った。


2人はそれぞれ近場に天幕を与えられ生活する事となり、私はエシンの天幕に住む事を強制された。

元徳が頑なに反対していたが、天幕の中では一節触れないと約束してくれた。

突厥は将来の花嫁を自分で守る文化だと言う。

部屋の中に敷居を設け相対しない様にされた。


そしてワンと共に突厥人の侍女が1人ついた。

「ヤルカと申します。チェンシー様、お召し物を替えさせていただきますね。」

流暢な漢語を話してくれた。


ヤルカから漢服から突厥の服装に替えさせられた。

ワンが何か言いたげだが、もうここは突厥の領地。私達の文化は優先されない。


真紅色の絹製の長い外衣を纏い袖口は漢服と違って細く体にピッタリとそう。そして刺繍が沢山はいる。外衣の前をベルトで閉めズボンを履く。ピアスや指輪などの装飾をされる。エシンの前にも立てる様にその上からフードつきの外衣を着てフードを被り目元だけ隠せる刺繍されたマスクを付けられた。


顔を見えない様徹底した配慮はしてくれた。


「漢服と違って暖かいわね。それにすごく動きやすいわ」

「馬に乗る事が多いですから貴族でもこの様な

出立です。」

最後に髪を三つ編みにして団子状にしてくれた。


「さぁ支度ができました!エシン様がお呼びでですよ。ワンさんも私がお着替えしますね。」

「あ、ありがとうございます」

ワンは戸惑いながらも着替えさせられていた。


外に出るとエシンは、家臣達と何か話し合っていた。

私に気づくとすぐに近寄ってきた。


「そっちの格好の方がいい。顔は見えんのが残念だが」

といたずらっ子の様に笑った。


「ありがとうございます…」

「それじゃ、行くか!」


エシンは私の手を取り歩き出す。

「え!?ちょっと約束!!それにどこにいくのですか!?」

「外ではいいだろ。それに手だけだ。他は触らん。」

早速約束破るし謎の決まり作った!!


「俺の領地を軽く見せてやろう。2人だけで行くぞ」

すぐに馬に私を乗せて二人乗りで颯爽と出発した。


ワンが慌てていたり元徳が後ろから叫んでたけど、すぐに小さくなって行った。


「あの、もう少し私にも言い分を聞いてもよろしいのでは?」

「こうでもしないと2人っきりにはなれないだろ。他の者じゃなくお前の言葉を聞きたかったんだよ」


エシンの顔を思わず見てしまい、向こうもこちらを見てきた。

マスク越しだが、目があってしまいあの赤い目を近くで見てしまった。


しまった!!すぐに目を逸らす、

「やっと目があったな!」


エシンは嬉しそうに微笑み馬を走らす。

ただ目があっただけじゃない…なんとなく照れ臭さが出てきた。


「それより何処にいかれるのですか?」

「お前に見せたいものがある」


暫く走った後、目の前に木製の小屋が何軒か現れた。そこには漢人達が畑作業をしていた。

チェンシー達に気づくと彼らは作業をやめ嬉しそうに歓迎してくれた。

「ここは…!?」

「国境沿いの漢人達だ。ここに住まわしている。俺達に隷属した。」

隷属と言ったが、彼らの顔からはそんな酷い扱いを受けている様に見えない。

「エシン様!どうされましたか?今日も野菜をお持ち帰りください!」

数人やってきて私たちの乗った馬の周りに集まる。

「少し様子を見にきただけだ。ありがとう!美味そうだな!」

「その方は?もしや…」

「ああ。和親公主だ。」

それを聞いた瞬間彼らは跪く。

「公主様…!この地に来てくださり感謝申し上げます!ですが、我々のことはどうか見なかったことにしてください!」


「どう言う事?」

「国境沿いで彼らは国から酷い扱いを受けていた。重い重税に国境を守る様、兵士でもないのに武器を持たされていた。見るに堪えんので全員連れてきた」


噂で聞いていた村が全滅というのは、死んでいたわけではなくエシンが連れてきたと言う事だったのか。

唐からの扱いを聞いて私は世間知らずな事を痛感した。長安以外で暮らしている者たちの苦しみを知らなかった。


「だが、阿波が治めてる西側はもしかしたら殺戮もあったかもしれん。あいつは弱いものには容赦しないからな」


エシンの顔に眉根に皺がいく。無駄な殺戮を嫌がってるんだ…


漢人達にお礼を言ってその場を離れる。

その後草原を風を切る様に走り抜ける。見える景色が全ては平地と草しかない。遠くに天山山脈があり白く美しい山並みが見える。天山山脈から流れる雪解け水が透き通っており太陽の光でキラキラと輝く。


この世界にこんな綺麗な場所があるなんて知らなかった。


「この見える大地全て突厥の地だ。馬と草原と共にお前はここに住むんだ。」


チェンシーはもう一度エシンの顔を見る。

燃える様な赤い瞳と漆黒の長い黒髪が風で靡く。

エシンは真剣な目で私を見てきた。

そうだ…私はこの地に嫁ぎにきたのだ。この人の伴侶になりに。

胸が高鳴る。


ふと風が強まり目を逸らした先に白い花が咲いていた。

その花を見た瞬間、マーフヴァルドの顔を思い出した。

「降ろして…。あの花を見たい。」

「ん?わかった。」


チェンシーは降ろしてもらい白い花を見に駆け寄る。

マーフが子供の頃にくれた花だ。とても綺麗で栞にしてまで持っていた。


「この花…」

「この辺り一帯に咲く花だな。確か、テングリ・チェチェク(天の花)といったか。」


後の世にエーデルワイスと名付けられた白い花は星型の花びらが美しい。本来なら夏に咲くが日当たりがいいのか数本だけ早く咲いていた。


「これ、くれた人がいたの。」

「そうか。この花は長安では咲かない。お前の為に持って帰ったのだな」


きっと旅の途中で出会ったんだ。私が喜ぶと思って。

長安からここまでの道のりの厳しさを私は今回初めて知った。マーフが歩いてきた道、まだずっと先の砂漠地帯にも向かう。彼の環境の過酷を知る。


色々な感情が溢れる。

マーフへの想いも、エシンとの未来も。


涙がマスクから伝って落ちる。

エシンが後ろから私を抱きしめてきた。


その力強さに驚いた。

「お前はもうここの人間だ。もう、俺のものになる」

耳元で言われた言葉に頭が回らなくなる。




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