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ミメーシス・エイドロン-α-  作者: 名無し
3章

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反抗期

翌朝、リビングに行くと父が新聞を読んでいた。

…なんでいるんだろ?仕事クビになったのかな?


「わ、いたのか親父…仕事は?とうとうクビになった?」

「とうとうってなんだ…今日は半休を取ったんだよ。お前が帰って来てるって聞いたからな」

「え?何それ、きもい」

「……父さんも人間だってことを忘れるなよ?」


正直、別に話したいこともないからいつも通り仕事に行ってくれていいんだけど…

そんなことを思いながら、コーヒーを淹れているとリリィが二回から降りてきた。


「あ、お兄ちゃん。おはよ」

「ん?おはようリリィ、なんか元気ないな?風邪か?」

「え?別にそんなことないけど?」


明らかに元気がないように見えるのだが…今日のプールはやめておいた方がいいかもしれない


「な、なあエルス…父さん、リリィに嫌われてるのかな?一瞥もされなかったんだけど…」

「嫌われてるんでしょ」

「否定してくれよ…悲しむ父を慰める優しい息子はいないのか…?」

「在庫切れだから、事務所に問い合わせてくれ」


ナチュラルにリリィに無視された父さんがショックを受けている。

まあ、普段家で顔を合わせない父親とか反抗期の女子が矛先を向ける格好の的だろうからな。あと数年の辛抱だろうし、我慢すればいいんじゃないかな。


「普段から遅くまで家に帰ってこないあなたが悪いんでしょう?諦めなさい」

「わ、私は母さんや子供たちを養うためにだなぁ…」

「だからって毎日帰りが深夜を回るのは、仕事の後に飲み歩いてるからでしょう?文句を言うならまずはそれをやめたらどうかしら?」

「だ、だって…仕事の付き合いもあるからさぁ…」

「別に毎日じゃなくたっていいでしょうに。大体あなたはーー」


うじうじと言い訳を並べる父さんに母さんがキレている。

母さんそういうの一番嫌いだからなぁ…まあ、甘んじて受け入れて治すように努めてほしい。

冷蔵庫から麦茶と作り置きののナムルを取り出して、昨夜残ったご飯と一緒に食べながらそれを眺めていると、顔を洗ったのかタオルをクビにかけたリリィが入ってきた。


「あれ?お兄ちゃん何食べてるの?」

「え?ナムルだけど。お前もいつも食べてるだろ」

「ふーん、私はいいや」


そう言って、キッチンの棚から菓子パンをとったリリィが食卓に向かって歩いていく。

そして、父さんの座っている席へ向かっていく。

そして、椅子を引くようなそぶりをして…座ったぁ!!!

父さん、硬直しているぅ!

嫌われていると思っていた娘からの突然の甘え行為に現実が飲み込めないようですね。

おぉっとリリィ選手、首を傾げました。どうやら座り心地に違和感があるようだ。

そのまま、すっと振り返ってーー


「きゃああああ!?」


ーー悲鳴をあげたァァ!!

尻餅をついてのけぞりながら、全力の悲鳴です。


「きもいきもいきもい!なんでいるの!?まじきもい!」


自分から座ったにもかかわらず、道端で露出狂と出会ったかのような悲鳴です!

なんと手の込んだ嫌がらせでしょうか!?女子中学生の反抗期はここまでやるのでしょうか!?

父さん、絶望!効果は抜群だったようです!恐る恐る立ち上がって、リリィに手を差し出します!


「だ、大丈夫か?リリィ?」


やはり親心でしょうか?自らのショックよりも尻餅をついた娘の心配をしています。

しかし、リリィそんな優しさを仇で返すように睨み返します!


「近寄るな変態!」

「さ、流石に言い過ぎじゃないか?わ、私何かしたか?」

「そうよリリィ?反抗期だからってそんなに言うことないでしょう?謝りなさい?」

「なんでお母さんそいつの味方するの!?意味わかんない!」


流石に自分から座っておいて変態呼ばわりは怒られるだろ…

いやぁ、これが普通だと思っているっぽいのがすごいな…女子の反抗期こわ

そして、リリィと母さんが言い合い…いや、なんかすっごい父さんに飛び火してるな?父さんが泣きそうな顔してる…


「もういい!お兄ちゃん!プール行こ!プール!」

「え?お、おう…え?これ放置していいの?」

「こっちはお母さんがなんとかしとくからいいわよ…とりあえずエルはプールでリリィの機嫌なおしといてちょうだい」

「……善処はするよ」


こんなご機嫌斜めさんなリリィは見たことがないからな…確約はできない

女子の反抗期って、怖いなぁ…

リリィに手を引かれながら昨夜用意しておいたカバンを持って家を出る。

チリチリと地面に熱が反射して、じめっとした空気が体力を奪ってくる。太陽とかなくなればいいのに

そんな、太陽の攻撃を受けてもリリィの怒りは収まらないようで、ぷりぷりと文句を言っていた。


「なんで母さんはあんな奴の味方をするんだろ!?あいつなんてあのくらい言われて当然じゃんね!お兄ちゃん!」

「いや…リリィだいぶ言ってたぞ?俺、リリィがあんなこと言うの初めて聞いたもん」

「だってあいつが悪いんじゃん!あいつがあんなことするから!ほんっとうにきもい!」


あんなこと…?俺が知らない間に父さんがリリィに何かされたのだろうか?

……だったら、仕方ないな。父さんがきっかけを作ったなら、リリィは悪くない。

やられたらやり返す、倍返しの理論はハンムラビ法典にも載っているくらい古くからあるルールだからな。


「で、何やられたんだ?」

「え?……あー、ナイショ。大したことじゃないから」

「いや、たぶん大したことだろ。お前、結構な剣幕だったぞ?」

「えぇ?そんなにだった?」


不思議そうに聞き返してくるリリィは、少し落ち着いたようだった。

にしても、全く何をしたんだ父さんは…リリィが気を使ったぞ…

あのリリィがだ…多分、俺が知ると家族が崩壊するレベルのことをしでかしたのだろう…

とりあえず、今夜リリィが寝たら家族会議だな…議論は決まっている


「ま、私は私でなんとかするからさ、プール楽しもうよ」


そう言ってリリィは、市民プール前で降車ボタンを押した。

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