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ミメーシス・エイドロン-α-  作者: 名無し
3章

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49/53

アルティメットわがままモード

大量のお菓子を獲得して、ゲームセンターを出ると天窓から差し込む光の色は白から橙に変わっていて1日がもうすぐ終わることを教えていた(詩的)

詩的で素敵な状況評価をした俺だが、現在、少し困ったことになっている。


「ぜっっっったいにまだ帰らないけど?」


リリィがアルティメットわがままモードに突入してしまったのだ。

説明しよう。アルティメットわがままモードとは、リリィがどうしても嫌なことがあった時に突入する状態のことで、病院に行きたくないシバ犬かと思うほどにテコでも動かなくなるのだ!

レルクレム家では、こうなったリリィはどうしようもないので1、2時間放置することになっているのだが今日はそういうわけにもいかない。放置したらもう家に帰れるような時間ではないので、寮に泊めることになってしまう。

それは流石にダメだ。普通に怒られる。今日は許可も取ってないしな。


「いや、これ以上帰るのが遅くなったら家に着くのが22時超えるぞ?」

「別にいいもん」

「いや、危ないだろ……」

「お兄ちゃんが送ってくれるから大丈夫」

「それは送るけど……」

「じゃあいいじゃん!お兄ちゃんが送ってくれたら8時でも10時でも変わらないよ!!」


いや、変わるだろ…時間が遅くなれば遅くなるだけ危ないのは俺がいようがいまいが一緒だからな?

うーむ…これは、どうしようもなさそうだ…とはいえ、ルールを無視して寮に泊めるわけにもいかないし…

…仕方ないか


「じゃあ、今日俺が家で寝るってことならどうだ?どうせ夏休み中で明日も暇だしな」

「……明日プール行ってくれるならいいよ」

「まあ、いいだろう。ただ、明日の夜は寮に戻るからな?」

「それは、その時にならないとわかんないかな?」

「いや、わかれよ…お前の匙加減次第だろ」


リリィがそんなの知らないもーんと、明らかにテンションを上げながら走り出した。

あいつ…都合のいいことばっかり言いやがって…

やべ、追いかけねぇと…くっそ、あいつ…無駄に足が速い…鈍臭いくせに…


「きゃっ!」


リリィが曲がり角を曲がると、角の先からリリィの尻餅をつく音と共に小さな叫び声が聞こえた。

慌てて角を曲がると、尻餅をついたリリィとそれを見下ろす黒服の男がいた。

い、今時黒服サングラスって…ハンターかよ?

って、そんなこと言ってる場合じゃねぇ!


「す、すみません!ほら、リリィも早く謝れ!」

「ご、ごめんなさい!」

「あぁ、いや、大丈夫だ。君も怪我はなかったか?」


強面のハンターは、思ったよりいいやつだったらしい。

男は、立ち上がって俯くリリィの頭に手を置いて「店の中で走らないように」と言ってから横を通り過ぎていった。

通り過ぎる男の手から落ちた鱗粉は、茜色の光を反射しながら風に吹かれてすぐに霧散した。


「お兄ちゃん、あの人てに蝶々のタトゥー入れてたね」

「そうだな…ちょっと可愛かったな」

「うん、あんまり似合ってなかった」


まあそんなことは置いておいて、とりあえず帰らないとな…

てか、この時間の自由席って座れるのだろうか?


「はぁ、お兄ちゃん…座れてよかったね」

「てか、ガラガラだな…夏休みなのに」

「だって、うちの周りってでっかい市民プール以外何もないじゃん。誰も来ないよ」

「確かに」


新幹線の席に座りながら、リリィと雑談をしながら時折大きく揺れる景色を眺める。

作りものの富士山が、窓ガラスを通して悠々と聳え立っている。

変わり映えのしない整列された街並みをぼおっと眺めていると、ぽこんと音が鳴った。


「うわ…」


心底嫌そうな、リリィの声が響いた。

違和感を持ってそちらを向くと、顔を限界までしかめたリリィがスマホをタプタプと押しながら何かを返信していた。

り、リリィのこんな顔初めて見た……いや、昔友達がリリィの胸を触ろうとした時もこんな顔をしていた気がする…


「大丈夫か?」

「うん、ちょっと面倒くさいことを言われただけだから」

「そうか…なんかあったら頼れよ?」

「もちろん!頼りにしてるよ?お兄ちゃん」


そう言って、抱きついてくるリリィを押し除け……肩に頭を乗せるな……

だからといって胸はもっと押し付けるな!?

胸を触られそうになって顔を顰めていたリリィはどこにいったんだ!?

ふざけるリリィをいなしつつ揺られる新幹線は、これまでで一番長いように感じた。


「母さんただいま〜」


リリィと一緒に、玄関をくぐり手洗い場まで歩いていくと驚いた顔をした母さんが顔を出した。


「あら、エルも帰ってきたの?」

「あぁ、リリィがアルティメットしたからな…」

「そう、大変だったわね」

「あぁめっちゃ面倒くさかった」


母さんに、リリィがアルティメットわがままモードに突入したことを伝えると心底同情したような顔をされた。

やっぱり、母さんもあれは面倒くさいと思ってるんだな…


「失礼なんですけど!!」


その会話は全て聴かれていたようで、洗面所で手を洗っていたリリィが肩を怒らせながら出てきた。

夜ご飯は俺の分を用意していなかったようだが、父さんの分があったのでそれを食べた。

本当にいいのか確認すると母さんに、どうせ今日も飲み歩いて帰ってくるからいいわよと笑いながら言われた。一体、父さんの飲み代はどこから出ているのか、気になるところである…

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