買い物
なんやかんやで、俺はリリィとトウキョウで一番大きいショッピングモールAEOMに来ていた。
最後はNじゃないぞ。勘違いしないでもらおうか。決済するたびに白い犬がなくカードとかもないからな。
そして、リリィは前方で振り返って足踏みをしている。
「おにーちゃん!早く歩いて!時間は有限なんだよ!」
「いや、落ち着けよ。今急がなくていいように昨日泊まったんだろ」
「たしかにっ!」
本当にわかったのか本当はわかっていないのか、俺がリリィのところに辿り着くまでにその場でぐるぐると回転していた。まるでベイブレード…いや、ベイリリードと呼ぶべきだろうか?
たかが数秒を待つのがそんなに大変か!?
「落ち着けって…摩擦で地面から湯気でてるぞ」
「落ち着けないよ!お兄ちゃんとお出かけっていつぶり!?1年ぶりとかなんじゃない!?」
「いや、才能検査の前日に行ったろ…お前が調理実習用の火災報知器が足りないとか言い出して一緒に買ったじゃねぇか」
「でも半年ぶりとかだよ!!」
いや、3月とかの話だから半年も立ってねぇよ
どうしよう、うちの妹だいぶバカかもしれない。来年には受験だっていうのに大丈夫か?こいつ
「リリィ、円の面積言えるか…?」
さすがにこれくらいはわかるだろう…ほぼ小学生の内容だからな…
「え?半径かける…」
よかった…流石にこれくらいはわかーー
「高さ割る2でしょ?」
ーーってないのかぁ
「リリィ、今度テストで赤点取ったらもう一緒に出かけないから」
「え!?なんで…ってなんでお兄ちゃん私が赤点取ってること知ってるの!?お母さんにも隠してるのに!」
いや、多分母さんは気づいてるぞ…あえて言ってないだけで…
絶対に進級が危ぶまれた時とかにまとめて起こってくるつもりだ。
「今度勉強教えてやるから…赤点だけは回避しよう、な?」
「えぇー…でもお兄ちゃんと一緒なら…ちょっとくらいは?」
なんでこいつが妥協した雰囲気なんだ…?
まあいいか…今度死ぬほど扱いてやる…
「お兄ちゃん!このお店!」
「ん?あぁ、朝行きたいって言ってた店か」
「そう!なんか色んな水着が売ってるんだって!」
「じゃ、俺は外で待ってるから決まったら呼んでくれ」
お、ちょうどいいところにベンチがあるな。
女子の買い物は長いっていうし、そこで最近読めていなくて溜まっているウェブ小説でもよもう
「お兄ちゃんちょっと待ってよ!」
「ーーあんぶれら!?(訳:雨傘・保護、援護)」
せ、背骨が…修復を繰り返し過ぎてそろそろ背骨だけ骨密度が他の半分以下とかになりそう…
「一緒に選んでよ!?」
「ちょ、ちょっと待って…それ以上に背骨の痛みがやばいから…」
「えっと…大丈夫?」
…誰のせいだと思ってるんだこいつ?
ま、まあ大丈夫だ…
「お兄ちゃんは背中が治るまで休んでるから、その間に選んできてくれ」
「え?それくらい待つよ。一緒に選ぶんだから」
「いや、時間もったいないだろ?」
「ううん、大丈夫だよ。せっかくお兄ちゃんと買い物来たんだし」
いや、いいから。行ってくれよ。
妹の水着を一緒に選ぶとか気まずい以外の何者でもないから。本当に。
にもかかわらず、リリィはベンチまで付き添ってきた。なんなの?
「………」
「………」
これはこれで気まずいって!申し訳なさそうな顔すんなよ…
いつもみたいに騒いでろよ!まじで!!頼むから!
はぁー…しゃーねぇ…原括るか…
「座ったらだいぶマシになったから、行くか…」
「うんっ!いこ!!」
なんだこの店…右を見ても左を見ても水着しかない…しかも結構際どいの多いし…普通のはないのか普通のは!?
ほぼ紐みたいな水着の間を潜りながらリリィはキラキラと目を輝かせている…
そんなにいいものかな?これ??もしこういうのを着たいって言い出したら全力で止めるぞ俺は!?
だったら来てよかったな!?何も知らずにこんなのを買ったリリィを海に送り出さなくてよかったまじで!
「わ!これ可愛い!」
少し進んだところで、リリィが立ち止まり大量に吊られている水着の中から一つを取り出した。
ど、どの紐だ…?できればおとなしめの色の紐にしてくれ…いや、それでも止めるけど
「どう?結構可愛くない?」
「お、お兄ちゃんはそんな破廉恥な水着許さなーーってあれ?紐じゃない?」
勢いよく宣言した俺に、リリィが見せてきたのは、水色のワンピースタイプの水着だった。
不思議そうな表情のリリィに、俺は安堵のため息をついて目を覆った。
そりゃそうか。うちの妹がこんな破廉恥なものを着たいと思うはずがない。
「え?紐?」
「いや、なんでもない。忘れてくれ」
「…お兄ちゃんはああいうのが好きなの?」
「好きじゃない!」
好きか好きじゃないかで言ったらそりゃ好きに決まっているが…そんなこと言えるわけがない…
…で、リリィ俺は好きじゃないって言ったんだが。なんでその紐みたいな水着をカゴに放り込んだのかな?
「お兄ちゃんになら、見せてもいいよ?」
「やめてください、ほんとに、お願いだから」
あぁ…俺のせいでリリィが興味を持ってしまった…俺は何て罪深いことを…懺悔します
その後、定期的に挟まる紐みたいな水着を棚に戻させつつ店内を物色し、最終的に買ったのは最初の水着だった。
「お兄ちゃんさ、私お小遣い貰ってるから自分で買えるよ?」
「いや、せっかくだ。甘えとけよ」
それに、リリィに支払させたら紐を買いそうな予感がしたからな。
俺の反応を見ながらこっそりスマホでメモしてたし。
「いつもお兄ちゃんが出してくれるから、私のお小遣い全然減らないんだよ?」
じゃらじゃらと、財布を振って小銭をぶつけるリリィ。
やめなさい。はしたないから。
「いや、俺以外とも出かけろよ」
「えぇ〜お兄ちゃんとの方が楽しいもん」
いや、タメの奴らと遊べよ。友達いなくなるぞ…?
「あっ!ここも寄っていい?」
「別に好きにすれ、ば、い…?」
ら、ランジェリー?
いや、何かの間違いだろう…あぁ、もう一個奥のハンバーガーショップと間違えたのか。
もう昼時だもんな…はやる気持ちが抑えきれなかったんだな…食いしん坊な妹である
「あぁ、確かちょっと前に特番でやってたよな。チーズバーガーがうまいんだっけ?」
「ちょっとお兄ちゃんそっちじゃない!行き過ぎ!!こっちだよ!!」
ランジェリーショップの前を通り過ぎた俺を、中に入ったリリィが手招きしている。
いや、嘘だろう?どう転んでも気まずくなる未来しか見えないのだが?
「流石に、それは一人で選んでくれ…」
「えぇ〜」
ぶーぶーと文句を垂れるリリィをひっぺがして、ハンバーガー屋に入る。
すると、諦めてくれたのかリリィは一人でランジェリーショップに入って行った。
なんとか、わかってくれたらしい。
分別のある妹でよかった…本当に…




