内定軍人
なんか、何書くか迷い始めてます。
階段を降りると、リビングで母さんが洗濯物を畳んでいた。
「あら、エルお風呂行くの?」
「うん。今誰も入ってないよな?」
「入ってないわよ。お風呂入るならついでにシャンプー足しといてもらえる?リリィがなくなりそうって言ってたから」
「……あいつめ、自分で足せよ」
母さんから受け取った乾燥から上がったばかりのタオルを持って脱衣所に行き、服を脱いでからシャンプーを詰め替える。
全身を入念に洗った後、湯船に浸かってしっかり100秒数えてから外に出た。
風呂で眠ってしまいたかったが、水回りでの油断は事故の元なのでやめておいた。
寝間着に着替えて、リビングに戻るとすでに母さんはいなかった。
部屋に戻ると、俺のベッドをリリィが占拠していた。
……あれ、俺部屋に戻れって言わなかったっけ?
とはいえ、すやすやと眠っているリリィを起こすのはかわいそうだったので罰は水性ペンでおでこに肉と書く程度にとどめておいた。
仕方なく俺は、誰かが泊まりにきた時用の敷布団を引っ張り出してそこで寝ることにした。
中学3年間で一度も日の目を浴びなかった布団は、ぺったんこにつぶれていて寝心地が最悪だった。
やかましいコール音が耳元で響き、未だ寝ていた俺は目覚めを強制される。
寝ぼけた目で画面を見ると、夢乃めると書かれており実験の連絡だった時に困るので出ないという選択はできなかった。
それに、ここで出ないと、また酔った面倒臭いめるの相手をさせられそうだし……
「もしもし、エルスだけど」
『ぁ、エルスくん、ぉはようです』
「うん、おはよう。今日、なんか実験するのか?」
『ぃや、そうじゃないですけど……その、昨日の夜、酔ってめるすごい色々言ったきがしたですから……謝ろうと思って……』
「あー、うん…すごい面倒臭かった」
『がーん!そんなはっきり言われるとは…ひどいですね』
なぜか責めるような声音のメルだが、俺は何も悪くないので気にしない。
昨日自我がなくなるまで酔って電話をかけてきためるが悪いのだ。反省しろ
『あ、そうです。2ヶ月くらいは実験しないと思うです。』
「え、そうなの?」
『ですです。なので、実験のついでに『ラプラスの悪魔』の特訓ができないです』
「あー、確かにな」
実験がないと言うことは、めると顔を合わせることもなくなるってことか。
『ラプラスの悪魔』の制御は流石に俺一人でするわけにもいかないし……どうするかな。
『なので、エルスくんの暇な日を教えて欲しいです。制御の特訓をしてあげるですから』
「え、それはありがたいんだけど、大丈夫なのか?仕事とか」
『大丈夫ですよ!基本的にめるは戦争が起こらないと仕事はないですから』
「……戦争?」
『あれ、知らないですか?銀河を開拓してたら時々起こるアレです。『緋凰学園』のカリキュラムには開拓実習もあるですから知らないとまずいですよ?』
めるによると銀河を開拓とは、その名の通り偉人の才能で宇宙への進出を果たした人類が人の住める惑星を探して開拓することらしい。
それによってこの作られた地球がある『原初の銀河』の外に、幾つも人が住める惑星が発見されそれを貴族は軽井沢に別荘を持つくらいの気分で別荘にしている……らしい
一部の大物貴族は、先住民が居る星を国から賜っているらしくその中には獣人やエルフといったファンタジー生物もいるらしい。
「……で、それで起こった戦争がめるの仕事になんで関係するんだよ」
『え?こっちは絶対エルスくんに言ってると思うですけど、めるは『偉人軍』の軍隊長ですよ?戦争が起こったら、『ラプラスの悪魔』で作戦を立てたりするです』
あのロリっこが…?
『あ゛?』
「ごめんなさい」
怖いめぅ…
『ちなみに、エルス君はもう内定してるから将来の心配はしなくていいですよ』
「え…?」
……なんてこったい。
近い将来俺は戦争に駆り出されるらしい。
なんとかして辞退できないかなぁ……
『辞退は無理だから諦めるといいです』
「脳内で考えてることに返事するのやめてもらえる?」
『顔に出てたですよ?』
「顔見せてないが?」
ビデオ通話でもないのにどうやって顔見たんだよ……?
『で、いつ暇なんです?早く送るですよ』
「えっと…あ、明後日以外今日から入学式までずっと暇だわ」
『そうですか……じゃあ、今日のお昼から特訓するですよ。エルスくんの家の近くにある緑地公園で待ち合わせです』
「え、今日からやるの……?」
『暇なんですよね?』
「そうだけど……」
『じゃあやるですよ』
渋々了承して、12時30分ごろに家を出る
「ふにゃあああああ!?お兄ちゃん!何これ!?」
家を出る直前に、顔を洗おうとしておでこの肉に気がついたリリィの叫び声が聞こえてきて非常に愉快だった。
緑地公園に着くと、親子連れの家族で賑わっていた。
え、俺ここでぶっ倒れたくないんだけど……
待ち合わせ場所近くのベンチに腰掛けて、めるが来るのを待つ。
数分後、めるがきた。大袈裟な荷物背負ってきた
「何ふざけた顔してるですか、シャキッとするですよ」
「あいにくと、生まれつきこの顔なんだわ」
「……かわいそうですね」
「あ゛ぁ゛ん゛?(男女平等パンチ)」
生意気なめるに男女平等パンチを繰り出したが、避けられてしまった…
カウンターは来なかったのでセーフだと思う。
「じゃあ、行くですよ」
めるが立ち上がって言った。
「え、どこに?」
「個室があるところですよ。こんなところ何回もぶっ倒れられるわけないじゃないですか」
ちゃんと考えてくれてたらしい、俺は安堵の息を漏らしてめるについていった。
「世界に〜ひとつもない花〜♪」
数分後、なぜか俺はカラオケボックスにいた。
「なんでカラーオーケストラ!?」
「わざわざ正式名称で言わなくていいです。
そしてその質問の答えはCMの後です。もうすぐ歌詞が始まるので」
めるは、『世界に一つもない花』とかいう明るいのか暗いのかよくわからない歌を歌っている。
特訓するんじゃないんですか……?
歌い終えためるがマイクを持ったまま振り向く。
「ふぅ、それでさっきの質問の答えですけど…ただ、エルスくんがぶっ倒れても気が触れて何かおかしなことを叫び出してもなんとかなるのがここくらいしかなかったからです。カラオケなら延長もできるですし」
「え、気が触れて何かおかしなことを叫び出す可能性があるの?」
「あるです。めるは今でも時々目が覚めた瞬間にSAN値をゴリゴリ削られる化け物を見せられて殺意が湧くです」
寝起きにそんなもん見せられたら確かに発狂するわ…
「まぁ、とりあえず訓練をするですよ!まず、2秒くらい発動して解除してを繰り返して脳を慣れさせるです」
「了解」
言われた通りに、バッチをスロットに移す…
一瞬、燃えるような緋色が右目で弾けて、ぐるぐると確定しない未来が歪んだり捩れたりしながら交錯する…
ひどい頭痛と吐き気に襲われた俺は、脳内でバッチををスロットから移動させて才能を解除する。
「やっぱり3秒くらいが限界ですね。常時発動しても頭が耐えられるくらいまで特訓頑張るですよ!ほら、もう一回やるです!」
「ちょっと、休ませて…?」
その後、3回くらい発動してから休んでを繰り返すことでなんとか30分までなら未来を見続けても頭痛が起こらなくなってきた。
途中何回か才能に呑まれかけたが、めるが色々(ビンタや水ぶっかけ)して意識を引っ張り出してくれたからなんとかなった。
時計を見ると、すでに20時を回っていたので解散することになった。
財布を持っていなかった俺の分までめるが全額払ってくれたのだが、店員さんに小学生に養われてるクズみたいな目で見られたので次からはちゃんとお金を払おうと思う
才能をつけたり消したりを繰り返していたせいか、時々右目でチカチカと勝手に才能が発動するようになってしまった。
勝手に起動して勝手に中断されるから別にいいのだが、ちょっとびっくりするからやめてほしい。
再び緋色が弾けて視界が暗転する。
視野を失った右目は赤に染まったリリィを見つめていて、数瞬後、闇を纏った何かが襲いかかってくる。
未来の俺はそれになすすべもなく殺されて、勝手に才能が中断され未来から現在へ視界が戻る
すぐさまスマホを開いて、リリィに電話をかける
『もしもし?どしたのお兄ちゃん、普段は電話とかめんどくせーって言ってL◯NEで済まそうとするのに…愛しい妹の声が聴きたくなっちゃった?』
「そんなところだ。」
『ぇ、お、お兄ちゃん、急にそんな……』
「お前、今から出かける予定は?」
『え、お兄ちゃんが遅いから駅まで迎えに行ってあげようかと思ってたけど?』
「そうか。それなら、もう家に着くから待っててくれ。それじゃ」
『え、うんわかった。じゃあね…』
リリィは電話を切る直前にバタバタと布団を足で叩きながらむきゅむきゅと謎の鳴き声を発していた。
とりあえず安心した俺は、走る速度は緩めずに『ラプラスの悪魔』で未来を確認する。そのために、プレートを呼び出すと一覧に見覚えのない才能とバッチが増えている。
『大人のための絵本』ーー28%
『ラプラスの悪魔』を通して見た才能も学習できるのか……!?
というか、もうバッチがある!?ウェルチェさんとめるの才能は45%を超えるまではバッチが出てこなかったのに?
慣れた手つきでラプラスの悪魔を起動して、弾けた緋色の先で先ほどの場面を見る前に今このバッチをつけた時に起こることを確認する。
右目に映るのは先ほど見たのと同じような闇を纏った怪物だった
…しかし、どこか様子がおかしい。
胡乱な目をしたそれはぐにゃぐにゃと変形して形が安定していない。そして、なぜかひどく俺を恐れていた。
危険がないことを確認した俺は、『ラプラスの悪魔』でリリィが襲われる時間と場所を確認しながら『大人のための絵本』も同時に起動する
先ほど確認した通り、生み出されたそれは俺を畏れながら粘土のような体を歪ませていた。
それから、才能を通しておそれが伝わってくるから、俺も才能を通して意志を送るとちゃんと伝わった。畏れているからか、それは質問に素直に答えてくれた。
それが畏れているのは俺ではなく、ラプラスの悪魔に魅入られた右目らしく、試しにラプラスの悪魔を外した未来を確認するとそれは襲いかかってきていた。
それは一応、対価があれば言うことを聞いてくれるらしいが命とか寿命とか言い出したのでとりあえず、『ラプラスの悪魔』と同時に使用して、無理やり言うことを聞かせることにしよう。
その後、電話したことが功を奏したのかいくら右目で探してもリリィが見つからないので一旦家に帰ると、「遅いっ」と怒っているリリィに出迎えられた。
一気に安心したせいか、アドレナリンで誤魔化していた疲れが一気に襲ってきて、俺は『ラプラスの悪魔』と『大人のための絵本』をスロットから外しながら崩れ落ちるようにソファに腰を下ろした。
すると、丈の短いスウェットにホットパンツを履いて、名前の通り白百合のように真っ白な肌を惜しげもなくさらしたリリィが俺の膝の上に腰掛ける。
なんでだよ。ソファまだ空いてるだろ…
「どしたの?お兄ちゃん、めっちゃ疲れてるじゃん」
「そう思うなら、俺の上に座るな。隣か、下で正座しろ」
「選択肢の温度差がひどいよ、鬼の鬼いちゃん」
「お前今鬼に鬼重ねただろ…はぁ、ほらクッションやるからさっさと退け」
「えぇ〜仕方ないなぁ……よいしょっと」
膝の上にちょこんと座っていたリリィは、体を反転させて俺の方に体を向けてくる。
おい、クッションを投げるな。また花瓶に当たったら今度は大目玉じゃすまないぞ?クッションで俺の頭を叩くのもやめろ…チンパンジーか何かかお前は。
やっとクッションを手放したリリィはぎゅーっと抱きついてから不思議そうに俺の顔を見つめて、悲しそうに顔を歪める
「お兄ちゃんが私に手を出してこない…!?これは重症だよ、、、!」
「なんだ、俺は盛りのついた犬か何かか?えぇ?」
「違うの?(純粋な瞳)」
「ちがうわ(平手)」
ひどく不名誉で人聞きの悪い称号を押し付けようとしてくるリリィに張り手をお見舞いするが、避けられてしまった。
再び、クッションで俺を攻撃しだしたリリィがニッと笑って顔を覗き込んでくる。
「でも、お兄ちゃん、元気出たでしょ」
むにぃ〜っと口角を持ち上げて嬉しそうに言ってくるリリィは頭を頭を撫でてやると少しくすぐったそうにしながら、頭を手に押し付けてきた。
ぐりぐりと手に頭を擦り付けてくるリリィを横目に、『大人のための絵本』によって呼び出されたもののことを考えていた。
あれは、結局なんなんだったんだ?『ラプラスの悪魔』が発動している間はおとなしいし、悪魔系統の才能なのだろうか?正直、絵本には詳しくないから見当がつかない。
めるは絵本とか似合いそうだし、知ってるかもしれないな……明日の特訓の時にでも、相談してみよう。
今のところ出てきた女の子が全部ロリなのあぶないですね




