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ミメーシス・エイドロン  作者: すばる
1章

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27/30

英雄の素質

俺の胸から槍が生えていた。


「無様ですねぇ…敵はワタシだけじゃ無いでしょう?」


幸い、身を捩ったおかげでしいなは無事だったが、俺が死ねばすぐにでも…

槍が抜かれて、引っ張られて後ろ向きに倒れる。


「……お兄さん!?」


倒れ伏した俺に、しいなが縋り付いてくる


「くははは!無駄じゃ無駄じゃ!それはもう助からぬ!大丈夫じゃよ!すぐに貴様も後を追わせてやるから安心せい!くははははは!!!」

「お兄さんっ!いやっだめっ…いやぁ!死なないでっ!」


しいなは、高笑いする女王に一瞥もくれずに、俺に縋り付いて泣いている。

これは、やばいなぁ、明らかに血が足りないし、なんなら生き残るイメージができない…


「世話ないですねぇ…油断して死ぬなんて」


ここぞとばかりに笑い猫がバカにしてくるが、頭に血が回らなくてなんと言っているのかもわからない


「これで、エルス・レルクレムは死亡しましたしぃ、アリスも必要ありませんねぇ…殺していいですよぅ」

「そうか!それならさっさと小娘もやるのじゃっ裁判長!」


ニヤニヤと笑った男が言うと女王が裁判長に命令を下す。

裁判長がしいなに向かって槍を振りかぶり、しいなが怯えて体を縮める。

槍が振り下ろされる様が、どうしようもなく遅く見えて俺の命が尽きるのを感じる。

俺の体はもう動かなくて、どうしようもないような、明らかに絶望的状況なのに…やはりなぜか、諦められない。


『諦めないからって、お前に何ができんだよ?』


魂に宿った英雄が、問いかけてくる。


『それに、もう体もうごかねぇだろ。数分、下手すりゃ数秒で死ぬぜ?お前』


でも……やくそく、したんだよ…

しいなを…守るって……あいつらと…やくそくしたんだ…


『だからなんだ?補助輪がねぇとまともに戦えねぇくせによォ』


それでも、まだ…死ねねぇんだよッ!しいなを…守り切るまでッ…誓いを果たすまでは…まだッ…!


『良いねぇ…お前、英雄の素質あるよ。特別に命は繋いでやっから、あとは頑張れ補助輪付きの英雄(ヒーロー)


槍がしいなの体に届く直前、俺の体が、動くはずがなかった体が、手を伸ばして、振り下ろされた槍を握り込んでいた。


「俺は、まだ死なねぇ…」

「は?」

「んなッ!?なぜたてる!?胸を貫かれたのじゃぞ!?数刻とて動けるはずがないじゃろうっ!!」

「やくそく…したんだよ…」


体が訴える痛みは全部棄却して、槍を振り回す裁判長を蹴り飛ばす。


俺たちを匿ったせいで、あの男に殺された帽子屋と…

俺たちを庇ったせいで、皮を剥がれて殺された三月うさぎと…


「しいなを……命に代えても守るって、俺はッ!約束したんだよ!!!」


魂に刻まれた才能が、ただの真似事だったはずの才能が、俺の魂を震わせて、この世界の、一人の少女の英雄たれと叫んでいる。

潰れた俺の心臓を、脈動させて俺に呼吸を続けさせる。


俺を突き動かす鼓動に才能に応えて、俺は女王と男をを見据えて叫ぶ


「誓ったんだ。この子の笑顔は…それだけは…誰にも奪わせないって…!」

「そんな誓い、死んだら無効に決まってるじゃろうが!?」


かぶっていた帽子が、風に乗って空を舞う


「さっさと!さっさとその男を殺せぇッ!!!」


女王は絶叫して、裁判長に命令を下す。

裁判長の拙い槍遣いをいなして、裁判官の槍の穂を切り落とす。

バランスを崩した裁判長の髪を掴んで、壁に叩きつけ意識を失ったのを確認して、未だ鼻を啜っているしいなを抱き上げて目をあわせていう。


「しいな、俺は大丈夫だ。ほら、血も止まった」

「……本当?」


ペタペタと、俺の体を触ってくるしいなを抱き抱えて飛び退くと爪が地面に突き刺さる。

睨み合った俺と男が、同時に口を開く


「「お前は、ここで殺す」」


三日月のように、口を割いた笑い猫は姿をぼやけさせながらバカにしたように言う


「残念ながらぁ死ぬのは貴方ですよぅ?動けると言っても、相当無理しているのでしょうぅ?」


変わり映えのしない爪を切り落として、刀を突きつけて俺も笑ってやる


「本物は殺せば死ぬんだろ?どんだけ持つか試してやるよ」


青筋を浮かべて喋るのをやめて、一心不乱に振るわれる爪をつくづく全て切り落とす。

その爪を拾い上げて、それを投げて男の右腕に突き刺してやる。俺の手も少し切れたが、これくらいなら治るイメージができるから問題はない。


「うぐぅ…!」

「どうした?自傷行為ならよそでやれよ」

「バカにっ!するなぁ!!」


爪を伸ばすたびに切り落とされて、自分の爪を攻撃に転用されてようやく学習したのか男は急接近してくる。

大丈夫だ。見えてる。距離もぼやけないし、刀もちゃんと当たる。

すぐ近くで伸縮する爪を避け切れず身体中に突き刺さるが、痛みを感じる暇もなく体を動かし続ける

動くたびに、開く胸の傷跡はなんともないと思い込むことで再生する。


「死にそうなのを誤魔化しても無駄ですよぉ!!」

「残念だけどっ!俺、守るものがいれば無敵なんだわ!」


刀で伸びた爪を切り落として、地面に刺さったそれを蹴り飛ばす。

刃物と同等の切れ味を持ったそれを蹴った足はボロボロになるが、男も膝が抉れているからおあいこだろう。


「ふざけるなよッ!貴様ァ!」


口調が崩れた男の爪をいなして、ガラ空きの腹を蹴り飛ばす。

傷口が開いて、死にそうな痛みを感じて一瞬悶えるがすぐに意識を外す。

この世界はほとんどがイメージで形成されてるみたいだからな……多分本気で死を意識したら本当に死ぬどころか、世界から消滅しかねない……


全力で痛みから意識を逸らして、震える足を拳で黙らせる。


しいなに当たりそうな攻撃だけ意識して弾きながら、他の場所は多少の被弾を許容して刀を振るう


「油断しましたねぇッ!!アリスの守りが甘いですよぅッ!!」


形勢逆転とばかりに、男が笑い、弾き損なった爪が外套に突き刺さる。

一気に飛び退くと爪が抜けて、真っ赤な液体が飛び出る。


「しいなッ!」


男の爪を叩き折ってから、急いで外套を脱ぐ。

ガラガラと音がして、穴の空いたポッドが外に落ちた。


「しいな、大丈夫か!?」

「……大丈夫。ポッドのおかげ」


ポッドからどろりと木の実の果汁がこぼれて、それが貫かれていない事実がポッドがしいなを守ったことを示していた。


「残念、しいなは無事だ」

「くそぅ……なぜっ!なぜワタシが追い詰められているのですか!?」


それでも、逃げることはせず近づいてインファイトを仕掛けてくる男の爪をいなしながら、一歩下がって地面に散らばるトランプ兵を蹴り上げる。

ハートを8つ胸に抱いたそれで笑い猫の視線を切りつつ、横薙ぎにそれごと切りつける


「8切りって知ってるか?俺、ローカルルールはアリ派になったんだよ。最近な」

「知らないッ!知るわけがないでしょうっ!わからないッ!ワタシは貴様が微塵も理解できないッ!消えろッワタシの前から今すぐにッ!」

「おいおい、そんなこと言っていいのかよ?お前、笑い猫なんだろ?理解不能は専売特許だろ」


爪すら再生できなくなった笑い猫の顔面に膝を叩き込んで、倒れる笑い猫の腹部を蹴り飛ばす。


「ワタ、ワタシが死ぬなんて、認めないっ!認められないッ!」


逃げようとする男を追いかけて近づいて、俺は刀を投げつけて、よろけながら避けた男の胸にパイルバンカーを突き立てる。


「首を切ってやろうかとも思ったが、お前にみんなと同じ最後は贅沢すぎるな」


引き金を引くとドゥッっと、空気が震えて男を杭が貫く。

貫かれた男の体が霧に溶けて、消滅する。


「どうやって抜け出しやがった…?」


塀の上に影を見て、俺はそれを追いかける


「逃してたまるかっ!」

「貴様らっ!行かせると思うとるのかっ!?」

「黙れッ!邪魔するなら殺すぞッ!」

「ヒィッ!?」


腰が引けた様子の女王を放置して、塀を飛び越えて笑い猫を追いかける。


「逃すわけッ!ないだろッ!?」

「なぜッ!見えるのですか!?ワタシは笑い猫ですよ!?森の中でッ!!見つけられるはずがないッ!!」

「アリスを案内するのが、俺の仕事なんだよッ!!」


長針を生み出して、木に着地した笑い猫の足に投げつける


「ぐあっ!?」


投げた長針が刺さり、男が飛び乗った木から落下した。


「まだッ!逃げるのかっ!」


落ちてきた男の背中を斬りふせて、霧が吹き出した男を踏みつける。やはり、治ってはいない

笑い猫は、足を振りはらって穴の空いた足で無理やり立ち上がり、木を手すりがわりにしてなんとか逃げようと足を動かしていた。


「なっ!なぜっ!どうしてッ!おかしいでしょう!?ワタシがッ学生ごときに遅れをとるなんてッ!そもそもっ!なぜワタシ以外の人間が同じ才能を持っているのですかッ!?おかしいでしょうっ!!おかしいだろうっ!この世界でッ!自我を持たない人を殺すだけの簡単の仕事じゃなかったのかッ!?」

「お前も、帽子屋たちを殺しただろうがッ!お前の才能が生み出したからといってッ!あいつはッ!あいつらはッ!お前如きにッ!殺されていい存在じゃなかっただろうがッ!!それを殺しておいてっ!自分だけはなんてっ!ふざけるなよっ!?」


足をもつれさせて倒れた笑い猫が絶叫する


「なんなのですかっ!なんだと言うのですっ!お前がッ!お前のような人間がいてたまるかッ!ふざけるなよッ!どうしてッ!ワタシはこんなところで死んで良い人間ではないっ!あんな役割に従うだけの肉人形を殺したからなんだとーー」

「殺すぞ」


顔面を踏みつけて、笑い猫を黙らせる。

足を上げると、笑い猫がニタニタと笑っている


「ほら、もう諦めました…ワタシはもう無理なのですよぅ」


顔とは裏腹に、か細い声を放つ笑い猫に俺は確信を持って問いかける


「お前、俺が殺しても死なねぇだろ?」

「なっ、何を突然ーー」


表情を凍り付かせて、とぼける笑い猫の顔を蹴り飛ばす。


「俺さ、ずっと考えてたんだよ。お前、ずっと瀕死にはなるけど死なないのはなぜかって」


確実に殺したはずだ。

パイルバンカーを胸で受け止めて、死なない人間がいるはずがないし、正真正銘あれが本体で傷が治らないのも確認してあった。

なのに、逃げられたのはなぜか考えて、考えて、俺の役柄を思い出した。


「白うさぎってさ、アリスを不思議の国まで案内するだけなんだよ」

「それがどうしッーー」


笑い猫の口の端を斬って男に喋ることを許さない。

笑い猫の髪を掴んで、無理やり目線を合わせて笑って言ってやる。


「しいなが、肩にナイフを刺した時、血が出てたなぁ?」

「アァ、アァァァァァ!!!」


意味深に笑ってやると笑い猫は絶叫して、飛びかかってきたので蹴り飛ばす。

割れた机にぶつかって、赤茶色の紅茶が笑い猫の頭から降り注ぐ。


「まだ、まだだ……まだやれるはずだァ…!」


爪を伸ばして、立ち上がった笑い猫が飛びかかってくる。

イメージで負けたのか、爪を受け止めた刀が切り飛ばされて、爪が俺の肩を切り裂いた。


「まだッ!私は死ねないのですよぅ!」

「チィッ!本当に面倒くさい世界だなァ!!」


俺も何度もたすけられたが、イメージでできたこの世界は精神が保っている限りいくらボロボロでも動区ことができる。

おそらく、こいつはアリス以外に殺されても死なない…いや死んでも復活するから、再生にも戦闘にも慣れていなかったのだろう。


「それでもぉッ!心を折っちまえば終わりなんだよッ!!」


再生成した刀で今度は爪を切り落として、笑い猫を蹴り飛ばす。

転がった笑い猫を踏みつけて、土山に刺さった手に馴染んだ墓碑《木刀》を抜き取る。

木刀で、笑い猫の足を砕く。


突風が、笑い猫の顔に落ち葉をぶつけて、優しく俺の頬を撫でる。

その風に乗って、帰ってきた帽子をかぶって俺は笑った


「あぁ、そうだ。帽子、見せに戻ってきたぜ。似合ってるだろ?」


手に取った木刀で、刀すら切りさいた爪を叩き斬る。

切られた爪が宙を舞って、地面に刺さる。

背中に重さを感じて、甘いジャスミンの香りが鼻をつく。


『あぁ、よく似合っているよ。

 よほど、センスのいい人からもらったのだろうねぇえ?』


すぐに、振り返るが、そこには誰もいない。

溜まった涙を強引に拭って、墓碑を失った土の墓に、俺は笑いかける。


「あぁ、俺の友達、センス最高なんだよ」


視線を逸らして、顔を青くして、「アァ、アァ」と掠れた声を漏らすだけになった笑い猫の前で、しいなに木刀を手渡す。


「俺が、お前を殺せねぇのは残念だが、あいにく俺にできるのは案内までだからな」


しいなが、木刀を振りかざす


「最後はアリスに任せるとするよ」

「……私のお友達に、あの世で謝ってね」


そう言って、しいなが笑い猫の首を切り落とした。


「いや、多分こいつは地獄行きだろ」

「……確かに。みんなは、天国にいるはず」


血を吹き出しながらゴロゴロと首が転がって表情を失ったそれが止まった時、世界から色が消えた。

モノクロの世界で、震えるしいなの手を握り、音が消える。

世界が眩んでーー夢が覚める

あとがき

現在11時30分のすばるなのですが…直前までこの話の推敲してたので投稿が本当にギリギリです…

先週にも推敲はしたはずなんですけど、読み直すと気持ち悪いところが多くて多くてそのへんを直してたら時間がめちゃくちゃかかっておりました…

そして、最近は投稿するミメーシスの推敲以外してないせいでギャグを全然書いて無いです…そのせいかわからないんですけど、今回もついつい途中にネタを挟んで緊張感を消滅させそうになって大変でした…

心の中の天使と悪魔がずっとバトルロワイヤルしておりましたよ…


悪魔『緊張感なんてなくして、めっちゃしょうもない下ネタ入れようぜ』

天使『ダメですよ!どうせ入れるならもっとまっすぐ笑えるネタにしないと!』


ギャグを入れないんだよ!?


天使『じゃあ、読みかえしたらクスッと笑える隠しネタ的なやつを入れましょう』


だから笑わせちゃダメなんだって!?


悪魔『いやいや、そんなの考えていたら時間が足りねぇだろ』


そうだよ!!がんばれ悪魔!!

っていつの間にか悪魔を応援している!?


悪魔『だからやっぱり、下ネタだろ』


いや、下ネタは通常時でも嫌だよ!?やっぱり悪魔も敵だった…!


天使『時間なんて問題になりませんよ』

悪魔『は?作者にそんなギャグセン無いだろ』


すっごい癪だけど悪魔の言う通りだよ!


天使『いやいや、パクればいいじゃ無いですか!』


ダメに決まってんだろうが!?

悪魔より思考が悪魔だ!?この天使!?


みたいな感じで…あれ?

ずっと俺が戦ってましたね??悪魔も天使も敵だったようです…

エルスくんにすら仲間がいるのに…しかも美少女の!!


エルス「仲間…?美少女…?」


ルナもめるも相当な美少女に描いたわクソが!!!

自分で書いといてなんだけどこいつ嫌いっ!!


エルス「ひどくない!?めるはともかくルナは仲間じゃねぇだろ!?」


……はぁ、だからこいつはこれからこんなことになるんだよ


エルス「え?俺これからまたなんかあんの?今話でやっと敵倒したところなんだけど?」


まあ、それ以上はネタバレになるから何も言わないけどね…


エルス「言えよ!?」


では皆様!2日後に会いましょう!

それでは、さよーならー!!



コメント・評価ぜひおねがいします!!

作者のモチベーションがアップします!

更新頻度は上がりませんが作品のクオリティーがあがりますよ……!!

あ、コメント評価できない方も大好きですよ。

作者はアクセス解析みながらにやにやするタイプなので。

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