表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミメーシス・エイドロン  作者: すばる
1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/32

笑い猫

「……は、ハンプ?ダンプ?」


地面に倒れて、首から赤い液体を垂れ流す二人を見て困惑するしいなと、足元に転がってきた生気を失った二人の頭を見て正気にもどった俺は、刀を作り出す。


「お前っ!突然何しやがるッ!?」


刀を振りかぶって、俺は飛び込もうとしてーー

バチリと、右目が閉じて、爪を伸ばした男に殺されるのが観える

しいなを抱えて、飛び退いて、眼前まで伸びてきた男の爪を根本から切り落とす。

男の後ろで赤ピンクのしっぽが揺れて、男の姿が霧に溶ける

再び、目の前を爪が通り過ぎてそれを避けると男が首を傾げる


「おやぁ?あなた、何か見えていますかぁ?」

「お前が遅すぎるだけだろ」

「そうなんですかねぇ?うぅん…?あぁ!もしかしてぇ、帽子屋のやつから聞いてやがりましたかぁ?」


一方的に質問を繰り返す男の、その言葉を聞いて俺は、体が勝手に動いていた。


「お前が、笑い猫かッ!」


叫んで、男の首を狙って刀を振るう。

取り残されたしいなは、未だ呆然としている。

現実を受け入れられていないようだ。突然、さっきまで会話していた人間の頭が吹き飛べば、そうなるだろう。

多分、俺も『ラプラスの悪魔』がなければ動けていなかった。

すると、刀に裂かれた男が深紅の霧に変わって、消滅した男がはすぐそばの木の上に現れる。


「チィっ!降りてこいっ!首を落としてッ!獣の餌にしてやるッ!」


激昂する俺を見ながら、ニヤニヤと口端を歪めた男は突然指を鳴らした。


ポンと、警戒な音と共に男の手元に棒が現れ、その先についている物の理解を脳が拒否する。

棒が2本刺さったそれを、左右にゆっくりと振りながら男が口を開く


「『残念だが、吾輩は知らないな』ーー」


棒をカクカクと動かして、男はそれの口を開閉させる。


「ーーでしたかねぇ?」

「なんのつもりだ…」


俺は棒に刺された、帽子屋の頭を透かして男を睨みつけながら問う


「あぁ!こうも言っていましたねぇ?『机を割りたいだけなら、さっさと帰ってくれるかね?』とかなんとか。あんなに堂々と嘘をつくなんて、恐ろしい人ですねぇ」

「なんの、つもりだって聞いているッ…!答えろッ!」


俺の顔を見て、男は愉快そうに笑う


「いやぁ、才能に作られただけの肉人形を殺しただけでなぜそんなに怒っているのだろうねぇえ?吾輩には寡黙にして理解できませんよぅ」


カタカタと顔の前に持ってきた首の裏で笑いながら男が言う。

呆然としているしいなを、近くの木の裏に隠れさせて俺は男の手首に向かって刀を投げつける。

本来ならありえない軌道で飛んでいった刀が、男の手首を切り落として一緒に帽子屋の頭も落ちてくる。

地面につく前に、落ちてきた頭を抱き抱えて、汚れないように街灯に包んでから木の影にそっと置いた。


「後で、ちゃんと埋葬するから」


俺は死臭を纏った甘いジャスミンの香りに、確かな帽子屋の痕跡を感じて、頭が沸騰しそうになる。

目を見開いた男は、霧を纏って再生した手をふりながら降りてくる。


「ようやく降りてきやがったな……」


カタカタと、力を入れすぎた腕が震えて刀の切先がぶれる。

帽子屋に言われた通り、『ラプラスの悪魔』は使わない。

使えばすぐに片がつくのかもしれないが、帽子屋前で彼女の言うことを違えるのは違うと思った


「首を、落としてやる」

「おぉっとぉ?怒らせてしまったようですねぇ?」

「理解してるなら、抵抗せずに死ねよ」


刀を振って、首を落とそうとするが爪が刀を弾きーー切り落とす


「わお!?やはり、素晴らしい刀ですねぇ!」


刃が半分ほどになった刀を投げつけて、それが男の胸に刺さり霧が噴き出すのを確認もせずに手元に新しい刀を生み出す。

それを刺したまま、意趣返しと言わんばかりに首を狙ってきた男の爪を、こちらも刀で切り落とす。

再び爪を伸ばして、やはり首を狙ってくる男の腕を切り落とす。


「こちらも依頼を受けている身ですからぁ?この世界から出られたらたまらないのですよぅ」

「……は?依頼…?」


男がいった言葉に俺は思わず聞き返した。


「えぇ、えぇ!そうですともッ!ワタシはあなたを殺せと言われていましてねぇ?最初、この世界に取り込んだはずなのに、いなかったときは困りましたよぅ?わざわざ、親しげだったその幼女をアリスとして連れ込んだ労力が水泡に帰すかと思いましたしぃ」

「じゃあ、なんで、二人を殺した」

「そこにいられると邪魔ですからねぇ。面倒ですし、殺す方が楽ですしぃ?」

「命を、なんだと思っているんだ」

「別にあなたに関係ないでしょお?ワタシの才能で生まれたんだからぁ、ワタシに生殺与奪の権利がありますしぃ」

「それでも、あの二人は、この世界で、生きていたんだぞっ」


途切れ途切れに、震える声を吐き出した俺の言葉を一笑に伏して男は言う。


「だからなんだといっているのですよぅ。こんな世界の住人にぃ大した価値なんてありませんしぃ?」


俺は、刀を胸中に構える。


「帽子屋は、俺たちのために帽子を作ってくれたんだ」

「はぁ?」

「三月ウサギは、お茶を出してくれたし」

「なにをいっているんですかねぇ?それがぁ、殺さない理由になるとでもぉ?」

「ハンプは転んだしいなに真っ先にハンカチを差し出してくれて」

「だから、それがどうしたのかと聞いているのですよぅ?」

「ダンプは貴重な薬をしいなのために使ってくれた」


俺の呟きを聞いて、首を傾げた男は、爪を伸縮させながら言う。


「それを言ってぇ、何か状況が変わるのでしょうかぁ?結局全員死んでますしぃ、アレがワタシの才能の産物であることに変わりはないのですがぁ?」

「お前には理解できねぇかもしれねぇけどなッ!あいつらは!この世界で必死に生きてたんだよッ!それなら現実リアルと何も変わんねぇだろうがッ!!」


男の腕を斬って、それが再生する前に胸と腹を生き別れさせる。

足が霧に変わり、足を失った胸部は浮かび上がってゆらゆらと揺れる。

揺れるたびに、煙が吹き出して森が白く染まっては色を取り戻してを繰り返す。

依頼を受けたと言う割には、異様に戦闘慣れしていない単調な攻撃は簡単に避けられ、学生の俺でも攻勢に回れる。


爪を避ける、避ける、しいなが隠れている木に当たりそうだったから切り落とす、避ける、いなす、弾かれた爪を腕ごと切り落とす、ガラ空きの胴体に刀を突き刺す、刺さった刀を横に薙ぐ、再生した腕をもう一度切る、再生しかけている胴体をもう一度切り離す、邪魔な爪を切り落とす、腕を切り落とす、腕ごと胸を切り裂く


「お前はッ!なんなんだ!?お前はッ!何がしたいッ!!」

「私はぁ、仕事であなたを殺すだけですよぅ」


いくらやっても再生する男の体を斬り続け、いつの間にか、再生が遅くなり始めて、斬り落とした腕がとうとう生えてこなくなる。

霧を噴出するだけになった肩を気にした様子もなく男はニヤニヤと笑う


「いやぁ、まさかワタシの才能まで真似できるとは思ってませんでしたよぅ?」


腕を失っても、ニヤニヤと笑っている男が言う


「は?」

「特別に教えて差し上げますがぁ、才能がないとぉ、アリス以外は自我を呑まれるんですよぅ」


男はニタニタと三日月状に避けた口で笑う。

俺は、男の首を切り落としてそれを蹴り飛ばした

カラフルな霧を撒き散らしながら転がって、木にぶつかった頭が地面に落ちる


「残念ながらぁ」


体と無様に泣き別れした男の頭がゴロリとこちらを向いて言う。


「まだ終わらないですよぅ?」


体が、森の濃霧に溶けてその奥から男が再び姿を現す。


「笑い猫はぁそんなにすぐには死にませんからぁ」

「ぐゥッ!」


振るわれた爪で、肩がえぐれて、声が漏れる。

……ッ!?今のは絶対に届く距離感じゃなかったはずッ!?

尻尾が揺れて、男が霧に紛れるたびに距離に違和感が生じる。


「くそっ!なんだってんだッ!?」


当たるはずの刀が当たらず、当たらないはずの爪が当たる…拭えない違和感が体を蝕み、男の爪が、ついに俺の腹を貫いた。


「うぐぁッ!!」


腹に穴を開けた俺は倒れて、男に頭を踏まれる。


「森の中でぇ、そう簡単に笑い猫を見つけられるわけがないでしょお?」


頭の上で、グリグリと踵を詰った男はため息をついて足を上げた


「これでぇ、エルス・レルクレムはじきに死ぬぅ…あとはぁ、アリスを殺すだけですねぇ」


アリス…はしいなのことか…?

どうして、しいなまで殺される…?俺が死んだら終わりじゃないのか…?

俺は、しいなを守れずに死ぬのか…?


一度、諦めようとした心臓が、再び、鼓動を始める


「確かぁ、そこの木の裏…でしたかねぇ?」

「ま、て…」

「うぅん?どうしましたぁ?」


鼓動を始めた心臓が、少女を守れない自分を否定した。

胸の奥底で、燃える何かがそれを肯定させなかった。

木に寄りかかりながら立ち上がりーー


「まだ、俺は死んでない…」


ーー力が入らない手に刀を突き刺して固定して、振り返った男の背を切りつける


「うぐッ!?」

「油断して…やられちゃあ、世話…ねぇだろうよ…」


背中から霧を吹き出しながら、再生していく笑い猫は首を180度回してギョロリと目玉をこちらに向く


「もう、ボロボロなのにぃ…立ち上がっても無駄ですよぅ〜死にかけの人が死体に大変身するだけですよぅ?」

「るッせぇんだよ…まだ…俺はたてる、から…立ち上がるんだよ…」


ろくに動かない肩を爪が貫いて、俺の口から声とすら言えない音が漏れる。

笑い猫が腕を振って、俺は吹き飛んで壁にぶつかる


「うぐぁッ!」

「……お兄さんっ!?」

「出て…く、るなッ!死ぬ、ぞッ!?」

「……ひぅッ!」


つい、怒鳴ってしまって、頭を出したしいなが縮こまる


「ダメですよぅ?ちっちゃい女の子に怒鳴ったらぁ。怯えちゃってるじゃないですかぁ」


しいなの隠れている木に近づいていく笑い猫の足を切り飛ばすと、男が転倒する。


「おおう、まだ動けるんですかぁ?」

「動けるに、決まってる…だろ…まだ、ま…もるものが…まだ、あるんだよ」

「あなたぁ、どうして未だ自分の死をイメージしてないのでしょうかぁ…あなたぁ本当にぃ人間ですかぁ?」


自分が死んだら…しいなを守れないだろ……!


「無理はダメですよぅ。ご自愛なさってぇ?殺し外がないじゃないですかぁ」

「お前、を…殺、したら…い、くらでも…自愛して、やるよ…」

「あらつれませんねぇ!」


爪が反対側の肩に刺さるが、すでに痛みすら感じない。

俺の肩を爪で弄りながらニタニタと笑った男の肩にナイフが刺さって、血が吹きだす。


「……やめてッ!」

「んなッ!?どうしてアリスがッ!?」


俺の肩から爪を抜いてしいなの方を振り向いた、笑い猫の首を切り飛ばす

男の首が、くるくると霧を吹き出しながら宙をまって、ギョロギョロと蠢く目玉が、こちらを捉える。


「あぁ、あぁ、予想外っ、理解不能は笑い猫の特権ですのにぃ…残念だぁ、体ももう持ちませんしぃ、またどこかで会いましょぉねぇ」

「二度と…出てくんなよ…クソ猫が…」


笑い猫が霧に溶けて、緊張が解けた俺はそのまま倒れる


「……お兄さんっ!?」

「だいじょ、ぶだ…もう塞がるから…」


なんとか、表面上だけ取り繕って立ち上がる。

学園の生物の授業…こういう時に役に立つんだな…一般高校と違って人体の構造を一番最初に学ぶ理由がわかったぜ…


「……本当に大丈夫?」

「あぁ。完全復活!パーフェクトエルス様だゼっ!」

「……(お腹を押す)」

「…………!!(声にならない系の痛み)」

「……休んで」

「はい……」


自分より6歳も小さい女の子に真っ当な指摘をされた上に怒られた…俺って……


なんとか体の修復が終わって、ハンプとダンプの体を、丁寧に埋葬する。

帽子屋の首は戻って体と一緒に埋めてあげたかったが、案内なしでは戻ることもできなさそうだったから一緒にそこに埋めた。

しいなが、ハンプとダンプが好きだと言っていた木の実をポッドから取り出して一緒にうめていた。

いつか、これた大きな木になってたくさん実をつければ、二人が好きなだけ食べられるから、らしい。

墓碑がわりになるものを探していた俺は、それを聞いてやめた。


そのまま、森を出ると…巨大な城が俺たちを出迎えた。


「…え?こんなん森の中から見えなかったけど?」

「……なかったはず」


呆然と、城を見上げていると突然声をかけられた


「貴様らっ!王城に近づいて何をする気だッ!」


抵抗する暇もなく、俺に閉じ込められた俺としいなはそのままどこかに運ばれてしまった…

では、2日後に会いましょう!

それでは!さよーならー!!


コメント・評価ぜひおねがいします!!

作者のモチベーションがアップします!

更新頻度は上がりませんが作品のクオリティーがあがりますよ……!!

あ、コメント評価できない方も大好きですよ。

作者はアクセス解析みながらにやにやするタイプなので。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ