不思議の国のしいな
目を開けると、体のだるさと痛みが全て引いていた。
違和感さえ感じるほど本調子な体は、どこか俺のものではないみたいだった。
周りは昨夜寝たベッドとはかけ離れた場所にいるはずなのに、なぜか違和感がない。
なんとか、ここがどこなのかと言う疑問を持った俺は周りを見渡そうとして自分の体が横になっていることに気がついた。
巨大なキノコに寝そべっていた俺は、体を起こして周りを見渡す。
「うーん、キノコと木しかないな…」
ぐるりと、周りを歩きながら見渡して再び元の場所に立つ。
「あれ、看板がある」
キノコと木が大量にある中に、ポツンと看板と分かれ道が現れていた。
違和感無く、風景に溶け込めていないそれは分かれ道の行き先を示している。
『コチラ 王城』
『コチラ アリス』
明らかに個人名を指している看板を見て、俺はようやく自分に違和感を感じた。
何もかもおかしいのに、それに違和感を感じていなかった自分への違和感。
いつの間にか、森の中にいることへの違和感。
不自然なほどに巨大なキノコへの違和感。
なぜか、一度看板を見落としていたことへの違和感。
それらは、本来なら一目見て覚えなければならないものなのに、先ほどまで俺は一切違和感を感じていなかった。
「これは……才能を使われてるか…?」
才能を使われている。それはこの不自然を説明するには明白で簡単な答えであるはずなのにそれへの自信が不思議なまでに無い。
自分を信じられない俺を一旦無視して、『万能の天才』を発動する。
「あれ、これいつの間に使えるようになったんだ?」
現れたプレートのスロット部分には『不思議な国の客人』のバッチが輝いていた。
それを認識すると、才能にこの世界での俺の役割を理解させられる。
「白ウサギ…?」
『不思議の国のアリス』で時計を眺めながら走ってアリスが不思議の国に辿り着く要因になるうさぎだったよな…?
確か、看板には王城とアリスと書いてあった。
俺が白うさぎなのであれば、向かうべきは王城だろうな。
自然と出た結論に従って、王城に向かおうとする足を無理やり止めて、俺は違和感を思い出す。
「これ、はずせばいいじゃねぇか。それで、この世界からは解放されるはず…」
この才能をスロットから外して、つけないようにすればいいだけなはずなのになぜか頭から抜け落ちていた。
自然と役割に従いそうになっていたのも考えると、このままここにいるとこの世界に取り込まれる可能性が高い。
スロットから『不思議の国の客人』を外そうとすると、後ろから声がかけられる。
「……あれ?今日はここにいるんだ?」
振り向くと、前方にあったはずの分かれ道から水色のジャージに身を包んだ少女が姿を現した。
「公園でキャバ嬢ごっこしてた…しいなだっけ?」
紫色の大きな瞳を眠たげに半分閉じた少女は、首を傾げながらコチラを見ている。
「お前こそ、なんでここにいるんだよ?」
「……うーん、ドンペリ入れてくれたら教えてあげる」
「残念だが、今日はアレ買ってないんだわ」
『期間限定 抹茶コーヒーソーダ〜甘酒を添えて〜』の味を思い出したのか、顔を歪ませるしいなを見ながら、俺はあの日のことを思い出した。
あの公園から帰るときに警察に疑われた誘拐事件の被害者って、まさかこいつか……?
「お前、俺たちと別れた後真っ直ぐ家に帰ったのか?」
「……帰ろうとはしたんだけど」
「そこで攫われたのか」
「……多分?気付いたらここにいたから」
大人びた様子で、周りを見渡して答えるしいなは、やはりとても小学生には見えない。
「なぁしいなって今何歳だ?」
「……お兄さん、女の子に年齢聞くの?」
「気になっちゃって」
「……9歳だけど」
可愛げがなさすぎないか…?
「もうちょっと甘えてもいいんだぞ…?」
「……しいなぁ♡ほしい惑星があるのぉ♡」
「そうじゃなくて…怖く無かったか?」
「……ちょっとしか」
ちょっとだけかよ。
でも、そりゃそうだよな……急にこんなところに攫われて、現実時間とリンクしてるなら、1ヶ月以上だ。
怖く無いわけがないよな。大人ならまだしも小学生だし
「というか、よく生き残れたな?」
「……いつも、気付いたらご飯がある場所がわかったりしたから」
「あれ?しいな、さっき今日はって言ったか?」
「……だって、お兄さんいつもは大通りにいるから」
「え?」
「……え?」
「俺、今日初めてここに来たんだけど?」
しいなガ言うには、いつもの俺は一切喋らないし決まった動きしかしていなかったそうだ…まさか、俺は毎晩この世界に連れてこられていたと言うことか…?
『不思議の国の客人』が勝手に進捗が進んでいたのは、毎晩この才能が俺に使われていたから…?
それなら俺に意識がなかったのはなんでだ…?
いや、俺は意識がないのがデフォルトなんじゃないか?
俺が俺としての意識を保てているのは『不思議の国の客人』が使用できるようになって、この世界に俺が介入できるようになったからか?
なら、しいなが意識を保っているのはなんでだ…?
うーん、わからないけど……確実にアリスであることは関係していると思うが…まあ、特殊なのだろう。
ただでさえおかしな世界でこれ以上考えていたら狂ってしまいそうだから考えるのを一旦やめる。
とりあえず、ここで才能を解除しても現実に戻れる可能性は低いし、なんなら意識を奪われてこの世界に取り込まれてBAD ENDの可能性の方が圧倒的に高いから、しいなとこの世界を探索してなんとか外に出ようってことでいいか
「……お兄さん、どうしよっか?」
しいなが問いかけに、分かれ道に視線を向けると『アリス』の看板とそれが立っていた分かれ道も消えていた。
「たぶん、王城に行けって言われてるな」
「……そうだね。多分、罠だけど。行く?」
「まあ、行くしかないだろ。」
手を袖に隠したしいなは俺の手を袖ごと握って、ついてくる。
その手は、かすかに震えている。強がってはいるが、不安なのだろう
「……突然、道とか前後が変わったりするから」
「そうだな、はぐれないように手を握っておいてくれ」
可愛らしい言い訳に突っ込むような野暮はせずに、俺は手を握り返して王城に向かうらしい道を歩いていく。
しいなは、まだ子供だからな。命と引き換えにしてでも、この世界から出してやらないとな。
「……どうやったらでれるかな」
「この才能で俺たちを捕まえたやつをぶっとばすとか?」
「……できるの?」
「あぁ、できるよ」
自信を持って答える俺に安心したのかしいなの手を握る力が緩くなる。
別に、しいなを安心させるために適当を言ったとかじゃないぞ。
『不思議の国の客人』の世界に同じ才能持ちが二人いることがエラー扱いなのだろう。この才能に気がついてからずっと、気持ちの悪い気配を感じている。
おそらく、それが俺をこの世界に連れてきた張本人なのだろうが…木刀も何もないからな。せめて木の枝の一本でも落ちてきてくれれば……
ぽんっと音を立てて目の前に木刀が現れる。
「なんで…!?」
「……どうしたの?お兄さん」
木刀に驚いた俺を見て、しいなが足を止める
そして、納得が行ったように頷いてこの現象の答えを教えてくれる
「……ここだとできるって思えばなんでもできるの。まさしく夢の世界って感じ」
そう言って、枝の上までジャンプして飛び乗るしいな。
無邪気に笑っているしいなを見て、何があってもこの笑顔を絶やしたくないと俺は思った。しいなだけは何があっても守り切ると、静かに誓いを立てると胸の奥で何かが脈動したように感じた。
誓いを立てた俺は、木刀を振りながらいつも以上の動きができる自分を想像する。
ゴォッとただの素振りで鳴るはずのない音が鳴って地面が抉れた。
「……うわあ…お兄さん、バケモノなの?」
「いやいや、普段はこんなこと出来ないから」
人外認定したような目で見てくるしいなを木の上から下ろして、木刀を出したりしまったりしてみる。
ふと思いついて、真刀を出そうとしたらちゃんと出てきた。
物は試しと出してみた両刃剣は、想像力が追いつかなかったのか、グニャグニャとした使い物にならない何かが出てきた。
これは、ロケランとか大砲とかだとうまく飛ばずに自爆とかしそうだな。
「……お兄さん、いこ?」
「あぁ、そうだな」
腕を引かれて、歩き出した俺は、近づいてくるもう一人の『不思議の国の客人』もちの気配に気を引き締め直した。
重大そうなイベントをまるっとすっ飛ばしたの、実はエタッて書くのめんどくなったのだけが理由じゃないんですよ。
ここからの構想が練り上がっててはやくここを書きたかったんですよね…
まあ、そんなことでイベントすっ飛ばしてたら作者の風上にもおけないんですけど。
ここから先はプロットとかもちゃんとたててあるので、読みごたえあるとおもいます。
こうやって梯子はずしていくのもだいぶよくないですよね。
いやあ、本当に文字を人に届けるのって大変だなあとつくづく実感いたします。
若輩者ではありますが、今後とも精進していきますので、応援のほどよろしくおねがいいたします。
これ、なんだかとても難しい言葉を使った気がして気持ちがいいです。
では本日はこの辺りで!また2日後に会いましょう!
それでは!さよーならー!!
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更新頻度は上がりませんが作品のクオリティーがあがりますよ……!!
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作者はアクセス解析みながらにやにやするタイプなので。




