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ミメーシス・エイドロン  作者: すばる
1章

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2/29

ドMのM

2話です。

目が覚めると、まず後頭部の柔らかい感触に意識を奪われた。

……あれ?俺気を失う前ってベッドとかに向かったっけ?

恐る恐る見上げると、太腿に俺の頭を置いて壁にもたれかかって寝ているめるが目に入った


「……ひ、膝枕?」


驚いてばっと頭を起こして、なんだか勿体無いような気がして頭を再び下ろす。

なぜ俺は膝枕されているんだ……罠か?(特性:臆病)

視線を感じてそっと上を向くと、眠っていたはずのめるがこちらを見つめている。


「……」

「……」

「……めるの足、痺れてるですけど」

「すみませんすぐにどきます」


怖い…殺される…?

飛び起きた俺を横目に、スカートを叩いて皺を伸ばしためるはじっと俺の目を覗き込んできた。


「目は、戻ってるですね。視力もちゃんと戻っているようで何よりです。それとエルスくん、君が見たのは未来だけです?」

「え?うん、多分?頭痛がひどすぎてあんまり覚えてないけど」

「そうですか、わかったです…おじいちゃん!いつまで寝てるですか!さっさと帰ってエルスくんのこと報告するですよ!」


ウェルチェさんを叩き起こしためるは、鉄の扉を開けながら振り返って言った。


「エルスくんも今日はもう帰るです。実験の時はまた呼ぶですからそれまでは『ラプラスの悪魔』は絶対に使っちゃダメです!次に会ったエルスくんが赤子だったとか嫌ですからね!」


扉が閉まってめるとウェルチェさんが見えなくなる。

……柔らかかった

静まり返った部屋の中で浮かんだそんな変態のような思考をふりはらって俺は立ち上がる。

スマホは机の上でタオルに包まれており、その横には我が家の最寄り駅へ向かう電車のチケットが入った封筒と今後の手続きの書かれた保護者向けの資料が置かれていた。

チケットを見ると電車の時間が迫っていたので、それらをカバンに詰め込んで部屋を出る。

無事電車に乗った俺は、急いで詰め込んだせいでぐちゃぐちゃになった鞄の整理を始めた

一度全て取り出して、カバンに入れ直す。

途中で、はらりと見覚えのないメモ用紙が落ちてきた。

そこには、11文字の電話番号と『めるに会いたくなったらここに連絡するといいです!』というメモ書きが記されていた。

これは、本当に連絡してもいいのか、それともただの社交辞令なのか…

別に連絡しなくていいか…

カバンの整理を終えた俺は、最寄り駅まで電車に揺られた。


「ただいまぁ〜」


家に帰った俺は、さっさと手洗いうがいを済ませてリビングへ向かう。

すでに連絡が入っているのか母さんは、赤飯を炊いていた。


「おかえりなさい。やったじゃない、エル。才能が発現したんでしょう?しかも、だいぶ有用なやつ。転校の資料はもらってきた?」

「もらってきたけど…俺、貴族用の学校とか行きたくないんだけど…いじめられる未来しか見えねぇ…」

「別に大丈夫じゃない?才能があるなら、エルも3年後には貴族なんでしょう?」

「そうだけど…」


違うんだよ…母さん…今の貴族は才能があるとかないとかじゃなくて、貴族かどうかで人を判断してるんだから…

電流でも走ったかのように、資料に目を通していた母さんが固まる。


「ねぇ、エル?この紙、転入先の高校の欄に、『緋凰学園』って書いてあるんだけど…間違ってない?」

「はぁっ!?ちょっ、見せて!?」


母さんからひったくるように奪った入学予定の高校から既定の高校へと転入してもらう旨が書かれた資料の転入先の高校の欄には、はっきりと『緋凰学園』と記されていた。


……俺の高校生活……終わった……目先の問題がいじめから学力に変更された……

絶望する俺を見て、母さんはオロオロとしながら慰めてくれる。


「え、エル?『緋凰学園』ってテレビとかでもよくやってる有名な学校でしょう?頭もいいところみたいだし、結構いいんじゃない?勉強頑張ってたじゃない!それに、お貴族様達もわざわざ平民にちょっかいなんてかけてこないだろうし…ね?」

「良すぎるんだよ…頭が…!あそこ確か偏差値72とかじゃなかった?俺が元々入学する予定だった高校の偏差値56だよ?授業にはついていけなくて、友達もできなかったら余裕で心が粉々になって春先の黄砂にまじって飛んでっちゃうよ!」


ぐちぐちと文句を言っていると、めんどくさくなったのか、母さんがパンっと手を叩いた。


「もう!ごちゃごちゃ言わないの!うだうだ言ったってどうせ変わらないんだから諦めなさい!」


怒られた。

ひどい…避けられないってわかってても泣き喚きたいお年頃なのに…

資料を母さんに返して、荷物を部屋に置きに行こうと立ち上がるーー


「お兄ちゃんおかえ……どーーーーーん!」


ーーと背骨が死んだ

……あぁ、そうか、『ラプラスの悪魔』はこういう致死量の奇襲を防ぐために必要だったのか…3時間越しに理解したよ…

そんなありがたい気づきは横に置いておくとして、無防備な俺の背中に挨拶という名の特攻を仕掛けてきた我が妹『リリィ・レルクレム(14歳)』にはどんな制裁を喰らわせてやるべきか…


「なぁ、妹よ…兄の背骨を破壊した感想はどうだ?(笑顔)」

「とっても爽快な気分!(爽やかな笑顔)」

「ギルティ(激怒)」

「ちょっ!お兄ちゃ…あははは!くしゅぐりゅのやめ…アヒィっ…」

「ぐあっ」


振り回されたリリィの足が鳩尾に入り、俺はうめいてソファから転げ落ちる


「え、何?やるの?(真顔)」

「うっわぁ、お兄ちゃん!気ぃ短ぁい!」


すくっと立ち上がった俺は、近くにあった新聞紙を丸めて武器にする。

それに対してすぐ近くにあったクッションを装備したリリィが応戦してくると飾ってあった花瓶が倒れて水がこぼれた。

こちらをじぃっと笑っていない目で見つめる母さんと目があう。


「「こいつがやりました」」

「……」

「「こいつがふざけてごめんなさい」」


互いを指さしながら責任をなすりつけあうと、怒髪天を貫く勢いで怒られた。リリィのせいで。

母さんのありがたい説教が終わり、3人で食卓を囲む。

父さんは……アホだからいつ帰ってくるかわからないと言うことで、満場一致で食卓からハブられることが決定した。


「あ、そうだ。お兄ちゃん才能あったんだって?」


赤飯にほぐした焼き魚の身を混ぜ込みながらリリィが聞いてくる。

リリィはなぜか食卓に焼き魚が並ぶとその魚の種類によらず全て身をほぐしてご飯に混ぜるのだ。正直俺は、魚が可哀想だからやめるべきだと思っている


「あぁ、お陰様でこれから暗黒の3年間だよ」

「えぇ?お兄ちゃんなんで嫌そうなの?3年我慢したら、貴族様の仲間入りなんだから喜べばいいのに」

「転入先が『緋凰学園』なんだよ……」

「ふぅん……ご愁傷様です」

「勝手に殺すな……おい!やめろ!俺の米に箸を突き立てようとするなァ!」


軍に内定とか言うめるの戯言は端折って今日あったことを話して、勝手に人の米をお供物へと昇華させようとする妹を撃退した後、食べ終わった俺は母さんから書き込みが終わった資料を受け取って部屋に戻る。

2時間後


「お兄ちゃあああぁぁぁぁぁぁぁ(ドップラー効果)」


風呂に入ったのか、下着姿で部屋に入ってきたリリィは、寝転がっている俺に飛びかかってこようとして、ベッドへの着地に失敗して闇に消えていった。

悪は去ったな……(暗黒微笑)


「甘いよっ!!お兄ちゃん!」

たんっと、背後から壁を蹴る音がして再び殺される俺の背骨(享年2時間)

「お、お前、この世で壁キックしていいのは赤い帽子にMがトレードマークの配管工のおっさんだけだぞ……!」

「だいじょーぶ!私多分ドMだから!」

「女の子がそういうこと言うのやめなさい…

そして多分あのMはドMのMじゃない」

「じゃあ、ドS?」

「あのおっさんは白昼堂々性癖を開示してるわけじゃねぇから。任◯堂に怒られるぞ」


ギャアギャアと騒ぎ立てる俺とリリィ。

いつまでも兄離れできないなんて困った妹だな。

そんなことを思っていたら、鳩尾に拳をねじ込んできた。


「なんで殴った?(怒気)」

「お兄ちゃんがムカつくこと考えたから(連続殴打)」


下着姿でマウントをとって拳をぶつけてくるリリィ……突然現代に拉致された原始人かな?

面倒くさくなってきたので、さっさと要件を聞き出して追い返すとする。


「で、なんのようだ?」

「え?あぁ!なんかお兄ちゃんに電話きたよ!夢乃さんって人!」


夢乃…?夢乃…あ!めるのことか。

あいつなんか初めて会った気がしないんだよな…どっかで見かけたのだろうか?


「わかった。降りるわ」

「ううん!折り返して欲しいって言ってた!」

「そうか、わかった…電話するから出ていけ」


すでに要件を伝えたのに出ていかないリリィ(下着姿、再掲するが14歳)

……こいつ、恥とかないのか?

テコでも動かなさそうなリリィを追い出すのは諦めて、俺はさっさとめるに電話することにする

カバンからメモを引っ張り出して、スマホのキーパッドを呼び出しタプタプと番号を打ち込んでいく。

プルルルルと、数度コールする音が鳴ってめるが電話に出る


『なんで電話してこないですか!?』

「いや、用事もなかったから…社交辞令だと思ったし」

『エルスくんが寂しがるから番号をあげたですのに!なんですか!?さっき電話に出た可愛い声の女の子がいるからめるはいらないってことですか!?ぶっ殺すですよ!?』


俺…寂しがってたかな…?

そして、めるに声が可愛いと言われたリリィがだいぶうざい感じに絡んできててめんどい…

えぇい!やめろ!耳元で「どうも、可愛い声でぇす!(囁き声)」とか囁くな!囁きながら叫ぶとかいう器用な技を編み出すな!鬱陶しい!


『なんか、女の子の声がするですけど…なんですか?めるなんか可愛い同居人の片手間でいいってことですか?そうですか、ふんっ!』

「え、何?なんで怒られてるの、俺?俺、めるの好感度上げるようなことした覚えないんだけど!?酒飲んでる!?」

『エルスくんの好感度なんて出会った時からカンストしてるですよ!それなのにエルスくんは女の子とイチャイチャイチャイチャ!めるもイチャイチャしたいですけど!?』

「飲んでんな!?お前!」


カシュっと缶から炭酸が抜ける音がして、電話口からごくごくと液体を飲み込む音が聞こえる…カァン!と金属がぶつかる音がして、電話先が静かになる。

……寝たか?

電話先は静かになったがリリィはいまだに鬱陶しく絡んできている。「お兄ちゃんは妹とイチャイチャしちゃうんだぁ禁断の恋ってやつ?リリィ困っちゃう」じゃねぇ!長いしイチャイチャしてないしお前は勝手に困っておけばいいと思う。


『ぃ…たいエルスくんはぁ!女の子と仲良くなりすぎなんです!』


何言ってんだこいつ…(困惑)

彼女いない歴=年齢の俺に対して…皮肉か?(ブチギレ)


「エルくんは彼女いない歴=年齢のパーフェクト童貞ですよ!」

「黙れカスがァ!お前普段俺のことエルくんなんてよばねぇだろうが!あと女の子が童貞とか言うな!」

『あぁ!!さっきの女の子!やっぱり一緒にいるですか!!めるなんて所詮都合のいい女なんですね!?エルくんはそう言うところがよくないです!もっとめるを大事にするべきです!』

「お前まだあって一日経ってねぇだろ!?そしてどさくさに紛れて呼び名の親密度を上げるなぁ!」

「エルくんと私は恋人より親密な関係なのでぇ…」

『エルスくんは私よりもその子を大事にするんだ!(素直)やっぱりおっぱいがおっきい子がいいんだ!うわあぁぁん!(妄想)』

「ツッコミがおいつかねぇから一回両方黙れやァ!」

『エルスくんの腐れ童貞ィィィィ!』

「おっけ、その喧嘩買ったわ!」

『え!それってデート!?やったぁエルスくんにデートに誘われたぁ!』

「誘ってねぇ!」


そのまま騒いでいると、不意に大きな音がして電話口からすぅすぅと寝息が聞こえ出した…

やっと寝たか……というか、めるって本当に成人してたんだな……そこが一番の衝撃だったかもしれない。


「お兄ちゃんはぁ、私のどこが好きぃ?ねぇねぇ、遠慮せず好きなだけ言っていいんだよ?可愛すぎて仕方ない妹を愛でたくて仕方ないんでしょ?ねぇねぇ?」


後はまだ隣で調子に乗っている酔っ払いよりめんどくさい素面(リリィ)を撃退すれば俺のノルマは達成だ…

その後風呂に入って寝れば今日のメインタスクは終了、爽やかな気持ちで明日の朝を迎えられるはずだ。

電話を切ってリリィの方に向き直ると、リリィが更に饒舌に話し出す


「どうしたの?お兄ちゃん、私の魅力に魅了されちゃった?」

「……妹よ、俺は今日疲れたから早く寝たいんだが?」

「添い寝してあげよっか?」

「……いらん。さっさと部屋から出ていけ」

「添い寝なんてしたら、お兄ちゃんムラムラしちゃって寝れないもんねぇ!」

「そろそろ手が出るぞ。お兄ちゃんの堪忍袋パンパンになってて今にもはち切れそうなんだわ」

「えぇ!?私の魅力にお兄ちゃんの性欲がはち切れそう!?いやぁん!お兄ちゃんの性欲の捌け口にされちゃうぅ!」

「人聞きの悪いことを言うなぁ!」


調子に乗っているリリィは俺の部屋から立ち退く気がないようなので、実力行使に出ることにする。

下着姿のリリィの脇の下に手を入れて布団でぐるぐる巻きにする。


「きゃあ!お兄ちゃんに押さえつけられていいようにされるぅ!」

「……」

「…お兄ちゃん?ねぇ、お兄ちゃん?その麻縄は何?」

「……」

「ねぇ、お兄ちゃん、私ドMとは言ったけど、縛ったりするのはまだ早いと思うの」


こいつ、まだ言うか…


「ね、ちょっと待って!やめて?担がないで?どうするつもり?」


騒ぐリリィを担いで、階段まで持っていく。

布団で頭までぐるぐる巻きになったリリィを階段の前に置く。

リリィにも何をしようとしているのかわかったのか、懇願を始める


「お兄ちゃん、肩揉みでもなんでもするからさ、やめよ?」

「……(ゆっくりと階段に向けて転がす)」

「ちょっとえっちなのでもいいんだよ!?10秒……10秒だけ待ってあげる!私になんでもさせれるのは後10秒だけだよ……!(開き直り)」


10秒間何も喋らず俺はずりずりとリリィを着実に階段に向かって押していく…


「も、もう1分くらい待っちゃおうかなぁ……!(震え声)」


リリィの声に本気の怯えが孕み出したのを確認して、麻縄を解いてリリィを簀巻きから解放してやる。

パッと顔を輝かせたリリィは、俺に抱きついてくる…下着姿で。

こいつは多分羞恥心をゴミ箱にダンクシュートしてきたんだろうな。普通年頃の女の子はこんなことできねぇよ……!


「私はお兄ちゃんが妹にこんな酷いことしないって信じてたよ!」

「はぁ、調子のいい奴め…次やったらほんとに落とすからな」

「わかった!もうしない!お兄ちゃん大好き!」

「やっすいな、お前の大好き」

「大特価で13円(税込)!」

「え、お前の大好きってうまい棒より安いの??」


リリィは抱きついたまま離れない。動けないんだが?


「重いんだけど?」

「知ってた?お兄ちゃん、女の子に体重と年齢の話はタブーなんだよ?」

「俺はお前が女の子だったことを今初めて知ったよ」

「あぁん?(怒)デリカシーのないお兄ちゃんには罰として私をこのまま部屋まで運んでもらいます」

「はぁ……俺の部屋までは連れてってやるから、そっから自分の部屋には自分で帰れよ」

「りょうかいっ!よぉし、進め!お兄ちゃん号!」


ネーミングセンスが絶望的だな…

ひっつき虫にジョブチェンジしてしまったうまい棒より安い妹の頭を撫でてから布団と共に部屋までデリバリーしてから俺は風呂に入るために脱衣所へと向かった。

個人的にリリィちゃんは好きなキャラクターです。

こんな可愛い妹が欲しかったです。

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