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ミメーシス・エイドロン  作者: すばる
1章

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10/33

浄化→堕落

1週間授業を耐え忍んだ学生にとっての心のオアシス、週末の休みに俺は…校舎に来ていた


「なんで土日返上してまで寮にお引越ししないといけないんだ…」


家具は部屋に備え付けのものがあるらしいから、俺の荷物はトランクに詰め込んだ私服と教科書だけだ。

昨日の帰りのホームルームで配られた寮室の鍵に書かれた番号に従って部屋を探す。

部屋に入ってーー


「……」


ーー俺は、絶望していた。

部屋が…広い…それはもう…王族の部屋かってくらい広い…ワンルームじゃん…いらないよ…共有スペースがあるんだからベッドと机と椅子だけでいいよ……

俺与えられた明らかに無相応な部屋に入った俺はすぐに部屋を出て共有スペースに向かった。

なぜかって?


「すみませぇん!やっぱり、俺が寮長って認められないですよねぇ!?」


そう、共有スペースで談笑していた先輩方に、寮長変更の署名をしてもらうためだ。

ここにいると言うことは、全員貴族なはずである。

平民の俺が上に立つなんて許せないはずだ。許さない……よね?

なんでそんな優しい目で見るんですか?先輩方?俺の頭は寺に置いてある異様に塗装が剥げた牛とは違うので撫でても頭が良くなったりしませんよ?


「ふふ、心配しなくて大丈夫よ。私たちが貴族だから、いじめられると思ってるんでしょう?」

「……(泣きながら首を振る)」

「お、おい!泣かなくて大丈夫だぞ!俺たちは平民だろうが貴族だろうが仲間だと思っているし、白の寮の誇りにかけていじめなんて低俗なことはしないと誓える!」


ち、違うっ!俺は、あんな無相応な部屋に住みたくないだけだ……!


「あ、あの…署名は…?」

「そんな署名、必要ないわよ。私たちは、あなたを歓迎しているわ。一緒に、白の寮を盛り上げていきましょう。ね、みんな」


髪の長い先輩が言うと、他の先輩方も「そうだぞ!」と同調し始めた。

ち、違う!俺はそんな謙虚の塊みたいなことがしたかったんじゃない!できるだけ自然に速やかにあの部屋を放棄したかっただけだ!


「せ、せめてあの部屋だけ誰か使ってくれませんか…?広すぎるんです…俺、あんな部屋もらっても持て余住んです…」

「それなら、私たちがあなたを支えるわ。あなたが寮長室に見合う寮長になるまでね」


……なんで?広い部屋だよ?使いたくないの?俺は使いたくないよ、クソが!

邪悪を浄化する共有スペースから逃げ出して部屋に戻った俺は、ベッドに突っ伏して絶望した…


「何、?あの人たち、大天使かなんかの生まれ変わりなの?それに浄化されかけた俺は悪魔の一種なんだろうな……お似合いだわクソが」




翌日、引っ越してきたルナが俺の部屋に飛び込んできた。


「な、何なの?この寮の人たち、危うく浄化されかけたんだけど?」

どうやら、ルナも被害にあったようだ。

「わたし、今体の半分くらいが愛と勇気でできてる気がする……」

「そんなに侵食されたの!?」

「このままだとわたし、綺麗なルナ・シェルブルームになっちゃう…!助けて、エルスくん!!」


浄化の光に包まれて、身悶えるその姿はまるでエクソシストに祓われる悪魔のよう…あれ?これ放置しといたら俺は救われるくない……? 


「ルナ、これまでありがとう。綺麗なルナになっても仲良くしような?」

「見捨てられた!?エルスくんひどい!わたしのこと嫌いなの!?」

「………………嫌いじゃないよ?」

「めっちゃ悩んだでしょ!今!」

「悩んでないけど?(真顔)」


光に包まれたルナは、そのまま光堕ちしーーなかった。

にっこりと笑って、こちらを向き直るルナに俺の背筋が凍りついた。


「ありがとうエルスくん、君に見捨てられた怒りでなんとかたえられたよ」

「……敵に塩を送ったと言うことか」

「残園だったねエルスくん…明日からはお姫様抱っこで通学しようね」

「絶対に嫌だが?」

「拒否できると思った?」

「応!!!!」

「何それ、うるさ」


ひどくない?巷の小学生には人気なんだぞ?これ

とびかかってきたルナと殴り合いの喧嘩をしていたら、寮長室のドアがノックされてガチャリと開く。


「あれ?あなた、今日来た子よね?寮長室で何をしているの?」


姿を現したのは、昨日談話室にいた髪の長い先輩だった。後ろに人影が見える気がするが、勘違いだ。勘違いったら勘違いだ。

ルナに質問を投げかけながら先輩は俺とルナの体勢を見て、合点が言ったように頷いた。


「あぁ、二人っきりで逢瀬を楽しんでいたのね?ごめんなさい邪魔しちゃって」

「違います」「そうです」

「「あ゛?」」


完全に答えが食い違った俺とルナはガンを飛ばしあって、二人同時に手が出そうになる……


「二人とも、喧嘩はダメよ?みんな同じ人間なのだから、意見が食い違ってもそれを含めて愛したらいいじゃない」

「「ぎゃあああああああ」」

「あら、二人とも全く同じ反応…お節介だったかしら?じゃあ、私たちは共有スペースにいるから、時間ができたらきてちょうだい。」


先輩から放たれた浄化の光に当てられた俺たちは、頭を抱えて悶えた。

どこをどう見てお節介という結論に至ったのかはわからないが、彼女は俺の部屋から出ていった。


「あれ、ルナ。お前、その前髪かわいいな。いつもそうだっけ?」

「わぁ、エルスくんって肩幅おっきいんだね、すごくかっこいい」

「「きっしょ……はっ!」」

「い、今…俺たち浄化されてたよな?」

「されてたね…あまりにもいつもと違いすぎて嫌悪感で目が覚めたけど、」

「これは、来週にはもう呑まれるな」

「「対策を打たないと」」


いまだに、輝いて見えるルナの顔をなるべく見ないようにしながら俺たちは話し合う。


「まず、先輩たちを少しでも悪堕ちさせるのは必須条件だ。俺たちがどう頑張っても、あの光に当てられたらジ・エンドだ」

「それはわたしも同意見。だから、私たちはどうやって先輩を悪堕ちさせるかを考えないといけない」

「まず、行うことで俺たちの今後に悪影響があるのはなしだ。流石に毎朝顔を合わせる人に暴言を吐いたりして嫌われるのは無しだ。」

「だね、備品を破壊したりするのもなし。私たちも困るし、私たち如きに弁償できるような額で済まないから」


顔を突き合わせて、あーでもないこーでもないと言い合って俺たちは一つの結論に辿り着く。 


「まず、死ぬほど民度の悪いネットゲームにハマらせる(できるだけ内容もクソなやつ)」

「そして、野良と一緒に潜りながらわたしたちがめちゃくちゃ下手なプレイをして野良の暴言を体験させる。あの人たちならその野良ごと浄化しかねないけど」

「その度に野良を交換し続ける。要は野良がいなくなるのが先か先輩が悪堕ちするのが先かのチキンレースだ。」

「「やるぞ」」


俺たちは、意を決して共有スペースに降りる。


「あ、きたわね。実は用事があったからきてくれなかったら困っちゃうところだったの」

「そ、そうなんですね(どうする、ネットゲームを提供する前に俺たちが浄化されそうだ)」

「(頑張って、わたしはエルスくんに隠れて浄化の影響を受けてないから)」

「(ずるいぞお前!?)」

「とりあえず、名前をお聞きしても?俺たちの名前はもう知ってるみたいなので、端折らせてもらいますけど」

「あぁ、ごめんなさい。忘れてたわ。私は、ミシェル・フェルラヴァースっていうの。ミシェ先輩って呼んでくれると嬉しいわ」

「ゴフッ…わ、わかりました。ミシェ先輩…」


微笑んだミシェ先輩に、俺は致命傷を負いながらもなんとか耐え切って話を進める…


「それで、話っていうのは…?」

「あ、そうそう話したいことっていうのはね総合ランキングのことなの!寮長さんには話しておかなくちゃと思って。まず、今年白の寮に入ってきた1年生は97人なのよ。大体、新入生全体の4分の1よりちょっと少ないくらいね」

「へぇ、そうなんですね。4寮あって、4分の1より少ないのはまずいんじゃないですか?」

「え?ううん。きてくれるだけでも嬉しいじゃない。みんなで頑張ればちょっと少ないくらいへっちゃらよ」

「ぐぁ……そ、そうですね…それじゃあ、それがどうしたのでしょうか?(満身創痍)」

「だ、大丈夫?なんだか、苦しそうよ?」

「ぐふぅ…だ、大丈夫です、ただの満身創痍ですから…」

「そ、それは大丈夫じゃないんじゃないの!?ど、どうしたらいいのかしら、とりあえずソファに座って?」


先輩が心配そうに座ったていたソファを譲ってくれる…やばい、あそこに座ったら終わる気がする…ルナ、助けてくれ……

振り向くと、真っ白になったルナが笑っていた……

怖い!いつも無表情なルナが笑顔だとだいぶ怖い!!

ど、どうしたら……あ、そうだ…ゲーム……ゲームをしよう

先輩に貸す予定だったスマホをルナに向けて録画を開始しつつ、もう一つのスマホでゲームを起動する。


「み、ミシェ先輩…お、俺は大丈夫ですから、ゲームしませんか?最近俺ハマってるんですよ」

「わぁ、一緒にやってくれるの?嬉しいわ」

「ねぇねぇエルスくん、わたしもやっていい?」

「お前はやれ…誰よりも先にやれ…傷薬は傷が浅いうちに塗らないと効果がないんだぞ…?」

「やったあ、エルスくんありがとう!」


うわぁ、きっしょお!

笑顔で純粋なルナとか解釈不一致すぎて無理…

さっさと、毒/破壊タイプのポケモンに戻ってくれ


「む、エルスくん今ひどいこと考えたでしょ(ポカっ)」

「わ、悪い…俺のことはいいから早くゲームを起動しろ?な?ルナがルナじゃなくなる前に」

「?わたしはずっとわたしだよ?」

怖い!ルナの攻撃でポカって言った!確実に弱体化されてる!!何?洗脳系の才能でも施されてるの?それかやばい薬が充満してる!絶対に!!!

「ふざけるな、鉛玉全部撃って半分も当てられないなら一生壁打ちしてろ雑魚が(バァン)」

「あ、戻った」

「え、エルスくん?なんかエルスくんの後ろに隠れてからの記憶がないんだけど」


録画を終了し、その動画をルナに見せる。


「……きっしょ。何これ?ほんとにわたし?」

「あぁ、誠に残念なことにそれはお前だ。そして俺はこれをクラウドに保存したので、一生消えることはない」

「……(ブォン!ブァン!)」


あっぶない…けどなんか安心するぅ…

拳から風を切る音がしていて安心したの初めてかもしれない…

ルナと、暴言を吐きあって精神を安定させていると部屋までスマホを撮りにいっていた先輩が戻ってきた…


「エルスくん、なんていうゲームか教えてくれる?」

「はい、もちろん(死体撃ちしてから屈伸煽り)」

「エルスくん、顔と画面があって無さすぎて気持ち悪いよ、戻ってきて」

「は?俺は正気だが?(死んだ敵の前でエモート連打)」

「あ、一致した…」

「ねぇ、なんの話をしているの?」

「あ、これがミシェ先輩とやりたいと思ってるゲームですよ。『シュートレウルグラム』っていうゲームです。出てきます?」


俺たちが先ほどからやっているのもこのゲームで、普段は何をやってもスマホを叩き割りたくなる衝動に襲われるゲームなのだが、浄化され続けるこの空間ではなんとか正気を保つための精神安定剤の役割を果たしていた。

先輩のスマホにダウンロードされたのを確認して、チュートリアルをスキップさせてチームを組む。

VC機能をオンにして、あちら側の声がこちらに聞こえるようにする。せめてもの抵抗として、こちら側の声は聞こえないようにしておく。これで、野良が先輩のキラキラワールドに取り込まれることはないはずだ


「それじゃあ、やりましょうか(ニチャア)」

「すごい楽しみね!足引っ張っちゃわないといいのだけれど…」

「エルスくん、その顔すごく気持ち悪いよ」

「あ゛ァ゛?」

「ひゃう!?え、エルスくん、どうしたの?」

「なんでもありませんよ…あのクソアマが全て悪いので」


結果、このゲームにどハマりしたミシェ先輩はちゃんと悪堕ちした。


「なんでそんなことをするの!?玉を当てることもできないなら一生壁打ちでもしていればいいのに……」

「まだ言葉遣いに純粋さが残っている…けど」

「あぁ、作戦は成功だ…これなら浄化されるようなことはないだろう」


先輩の体から溢れていた謎の光は消えていた

満足した俺たちは、部屋に戻り…翌朝地獄を見た。


「あ!エルスくん!ルナちゃん!私とっても上手になったわ!今度また一緒にやりましょうね!」


エナジードリンクを片手に、目の下にクマを作った先輩が駆け足で向かってくる。

俺とルナは、目を合わせて心を一つにする…


((あ、これ、やりすぎた))


寮長権限でミシェ先輩からスマホとエナドリを取り上げて、体調不良の連絡をさせた俺は共有スペースに降りて目を覆った。


「あぁ!今俺のショットガン取ったの誰!出てこないと打つよ!?」

「ワタクシのスタングレを空中で爆発されたの誰よ!ぶっ殺してやる!」

「死体うちは勝者の特権!屈伸煽りもまた然り!」

「その弾の無駄遣いやめろって言ってるでしょうがァ!」


共有スペースに暴言と台パンが横行している…

ミシェ先輩を通じて広がった悪堕ちの波は…思ったより大きかったらしい。


「私は、女子の先輩を寝かせるね…エルスくん」

「あぁ、頼んだ俺は男子の先輩を寝かせる…」


駄々を捏ねてないでさっさと寝ろやこのゲーム中毒ども…!エナジードリンクに1日を24時間以上に拡張する効果なんてねぇよ!

先輩方のスマホを没収して、寝かしつけた俺とルナが教室に着いたのは、3限目の終了をチャイムが告げてからだった…

投稿する直前によみかえしてたら、白の寮の誇りが白の寮の埃になってて焦って直しました。

多分、誤字脱字はこれからもこれまでも時々ありますがら見つけたら教えてくれると嬉しいです

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