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>>>>>1年4組
蘇芳「う…う…ぅ……」
蘇芳はずっと教室の教卓の下に隠れていた。
隣の教室で磯波と澪都が鬼と鉢合わせし、二人が負傷した声も聞こえていた。
蘇芳「(最低だ…僕。後衛部隊の二人が危ない目に遭ってるのに…動けず、ずっと隠れていた…。怖い…怖い…動けない…)」
_____ザッ…ザッ…
蘇芳「…………っ」
鬼の足音は蘇芳の隠れる教卓の目の前で止まった。
鬼は鉈を大きく振り上げ、教卓に突き刺した。
間一髪のところでずれ、蘇芳は助かった。
しかし、声を出してしまったことで、鬼は教卓の下を覗いた。
鬼と目が合う。
蘇芳は慌てて起き上がると、足を滑らし転んでしまった。
蘇芳「あ……あ……あ……」
鬼は蘇芳に斬りかかる。
運よく避けたが太腿に傷を作った。
鬼は蘇芳の肩を掴み床に押し付ける。
蘇芳の胸元に鉈が当てられる。
蘇芳「(あ……もう、駄目だ…このまま、僕は死ぬ…)」
________鬼が鉈を振り上げたその時。
_____ガッ
樹「大丈夫か!?」
樹が鬼を吹き飛ばし、蘇芳の手を引き走り出した。
蘇芳「い、樹先輩…!?」
2人は二階に駆け上がり多目的ホールに入った。
樹「もう大丈夫だ…足見せてみろ」
樹は手際よく包帯を巻いていく。
樹「保健室から持ってきてよかったよ。痛くないか?」
蘇芳「浅いので大丈夫です。…その、樹先輩……助けて頂きありがとうございました」
樹「貴方が無事ならよかった!!少し、ここでゆっくりしてろ。僕が見張っておく。寝ててもいいぞ」
蘇芳「そ、そんな…樹先輩もお疲れでしょう…」
樹「僕の事は気にするな。後輩を守るのも僕ら先輩の務めだ」
蘇芳「…………先輩」
樹「そんな心配そうな顔をするな!こんな時は笑顔だぞ!」
樹は人差し指で自分の口角を上げる。
樹「ほら、貴方もやってみろ!にぃー!」
蘇芳「に、にぃ」
今度は蘇芳の口角を上げる。
樹「まだまだ、笑顔が固いぞ!もっともっと!」
蘇芳「に、にー」
樹は満足そうに笑う。
蘇芳「樹先輩はいつも笑顔ですよね」
樹「そうだな!この間、村雲にも言ったが…笑顔が一番の良薬だから!痛くても苦しくても…笑顔で居れば幸せになれる。僕はそう思ってる!!……だから辛い時ほど笑うんだ」
蘇芳「村雲も樹先輩に感謝してましたよ。先輩のお話聞いて……」
樹「それは嬉しい!村雲にも幸せになって欲しいぞ!」
蘇芳「…………僕は、こんな状況で…笑えません……」
樹「………………」
蘇芳は涙を流した。
蘇芳「僕は生きてる資格なんかない…僕のせいで兄貴の目を傷つけた…!さっきも…仲間を見捨てた……こんなの、こんな僕は……もう死んだ方が……」
樹「それは違う」
蘇芳が見上げた先にはいつもの様な笑顔の樹ではなく、真剣な表情をしていた。
樹「死んだ方がいい人なんかこの世に居ない。…皆、欠かせない大切な命だ。思い出してごらん、蘇芳が居なければ最初の暗闇の階段を進むことは出来なかった。隠しボタンを探すことは出来なかった。命令を遂行できなかった。貴方は気付かぬうちに沢山の人を笑顔にしている。……それに大切な家族だって。蘇芳、僕には貴方が必要だ。……だから生きて帰ろう?」
蘇芳「…………っ!そんなこと言われたの初めてです。僕は生きてていいんですか…?皆とずっと居てもいいんですか?」
樹「当たり前だ!僕が保証する!」
蘇芳は樹に抱き着き、涙が枯れる程泣いた。
樹は優しく抱きしめ返した。
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暫くすると蘇芳は我に返ったように顔を赤らめた。
蘇芳「す、す、すみません!!」
樹「気にするな!ははっ、貴方は村雲と似てるな。同じ反応だぞ!」
蘇芳「ええ!?」
_________ガッガッ
樹「静かに……足音が……」
_________ガッガッ
樹「…………」
_________ガッ
樹「…………」
_________ガシャンッ
鬼は鉈で窓ガラスを割って来た。
樹は鬼の攻撃を受け止める。
樹「蘇芳!走れ!」
蘇芳は部屋から出ようとすると、
________ガンッ
もう一体の鬼が扉の前に立っていた。
蘇芳「ひっ!?」
樹「…………っもう一体!?……くそっ」
樹は鬼の腹を蹴り上げ、もう一体の鬼の攻撃から蘇芳を守った。
そして、蘇芳の手を掴むと鬼と扉の隙間に投げる。
蘇芳は廊下に出ると、樹は言い放つ。
樹「蘇芳……!ここは僕が引き留める……!早く行くんだ!」
蘇芳「はい!!」
逃げ出す蘇芳を鬼が追いかけるが、樹は鬼の腕を掴んで阻止した。
樹「お前の相手は僕だ」




