9. 通学さばいばる
(うわ…超満員…)
通学のために利用しているローカルバス。
人がスシ詰め状態のその車内に、僕はげんなりした。
家の近所のバス停を出発すると、程なくして始まったのは。
それはそれは激しい、おしくらまんじゅう合戦。
バスが右へ左へ曲がる度に、大勢の乗客たちの体が波のように揺られて、その狭間で僕の体は押しつぶされそうになる。
「この先急カーブのため、大きく左に揺れまーす。ご注意くださーい」
バスの運転手の、あの独特なイントネーションが車内に響いた。
まもなく大きな波がやってくるらしい。
(しっかり掴まってないと…)
僕は慌てて吊り革を握りしめる。
うっかりしていると転びかねないから、気をつけねばならない──
ドシン!
何かが僕の背中を直撃した。
驚いて背後を振り返ると、なんだか甘い香りが。
「…亜久さん!?」
僕にぶつかってきたのは、クラスメイトの亜久さんだった。
「いてて…あれ?百々瀬くんだ!」
僕は絶句した。
なんと亜久さんは全身キズだらけじゃないか!
頬を擦りむき、頭には小さなタンコブ。よく見ると、手には打身のような跡もたくさん。
いったいどうしたってんだ。
「ちょ…亜久さん大丈夫なの!?」
「うん、大丈夫」
額の擦り傷をさすりながら、亜久さんはあっけらかんと語る。
「今日はママの仕事の都合で、車で送ってもらえなくて。だから初めてバスに乗ったんだけど…バス通学って大変なんだね…!」
いや、そんなサバイバルしてるのは君だけだと思う。
とにかく。
学校に着いたらすぐ保健室へGO!!!