5. 購買めいぶつ!
”購買名物!巨大カツサンド”──。
僕は、そう書かれたポスターの前に立っていた。
100円玉を2枚握りしめて。
『百々瀬くん、お願い。購買で買ってきて欲しいものがあるの』
午前中の授業が終わり、昼休みに入ってすぐのこと。
僕は亜久さんからお使いを頼まれた。
彼女のお望みは、ウチの学校の購買部で売られている”巨大カツサンド”である。
一つ200円というお手頃価格ながら、分厚いパンにはみ出んばかりの大きなチキンカツがサンドされた、非常にボリューミーでコスパ抜群の逸品なのだ。
このカツサンドが以前から気になっていたという亜久さんだが、
『女の子が買うにはちょっと…ね?』
とのことである。
そんなわけで、僕が代わりに買いに行くことにしたのだ。
「巨大カツサンド、ひとつ下さい」
購買部のおばさんに200円を渡し、無事カツサンドをゲット。
そして、教室へと戻ると。
亜久さんは、凛とした佇まいで僕の帰りを…否。カツサンドの到着を待っていた。
まさかこんな可憐な少女が、”購買名物”を欲しているとは誰も思うまい──
「買ってきてくれてありがとう。さあ百々瀬くん、召し上がれ」
へ…?
カツサンドを受け取った亜久さんは、それをそのまま僕の眼前に近づけてきた。
ん???
ドウイウコト…?
「こんな凄いの自分じゃ食べられないから…。私は百々瀬くんが食べてるのを見てるだけでいいの」
言われるがままカツサンドを頬張る僕を。
亜久さんは、すごく幸せそうな表情で見守っている。
本当に、なぜなんだ…。
”いっぱい食べる君が好きなんだ”的な?いわゆるデブ専的な…?
意味がわからないよ、亜久さん。




