22. 平和なせかい
僕は粘土細工が結構得意だ。
子供の頃からよく何かを作っては、両親や幼稚園の先生に褒められていた。
(いい感じだな…だいぶリアルになったぞ)
美術の授業、『自分の手』を成形するという課題。
僕は自分の左手を隈なく観察しながら。
指の関節部や細かな皮膚のシワまで、とことん拘って作り上げた。
頑張った甲斐あって、こりゃ世紀の傑作になったんじゃ──
「あらあら。亜久さんと百々瀬くんは今回も共作なの」
完成した作品を見た美術の先生は。
またしても、僕と亜久さんが共同で作ったと勘違いしている。
ただ隣同士ってだけなのに。
「亜久さんのはとても綺麗な”人の手”ね。そして、百々瀬くんは”猿の手”を」
”猿の手”って…!
確かに亜久さんの作った完璧な”手”に比べりゃ、僕のはボコボコしてて汚いですけど!!
にしたって、あんまりじゃないですか…。
「ちょうど右手と左手になっているから…こうするとほら!」
よりにもよって。
亜久さんは右手を、僕は左手を作ってしまったもんだから。
僕らの作品を繋げると、まるで握手をしているかのようにみえてしまう。
「人間と猿。種族は違えども同じ動物同士、平和に仲良く暮らしましょう。そんなメッセージを感じるわ。なんて素敵な作品なんでしょう!」
先生はやはり独自の観点から、僕の作品を賞賛してくれた。
けれども。
僕はもう、芸術というものが分からなくなってしまった。
芸術は爆発…なのか。
2025/08/26
※諸事情により、エピソード内容を変更致しました。ご了承ください。




