2. 消しゴムがかり
ポロっ。
消しゴムが欠けた。めちゃくちゃ小さな塊になった。
なんてことだ。原稿用紙いっぱいに書いた読書感想文を、これから全て消さなければならないというのに。
迂闊だった。予備の消しゴムも無いし。
「あの…亜久さん。消しゴム、ちょっと貸してくれないかな…?」
おこがましいとは感じつつ、隣の席のマドンナに消しゴムの貸与を懇願した。
「いいよ。これ使ってないから。そのままあげる」
亜久さんは筆記具の入ったポーチから、消しゴムを取り出して僕にくれた。
なんと貸してくれるだけでなく、”そのままあげる”なんて。
もはや、隣の席の少女が女神様に見えてくる。
亜久さんにお礼を言って、僕は彼女にもらった消しゴムをさっそく。
…使おうとした。
が、しかし。
この消しゴム、”使ってないから”っていうか──
まるっきり未使用じゃん!
フィルムみたいなのも付いてんじゃん!
「さすがに新品を使うのは悪いよ。もっと使いかけのでいいのに」
僕がそう申し出ると、亜久さんはポーチを開いて、
「じゃあ、好きなの選んで」
ひぃ、ふぅ、みぃ、よぉ…ウンヌンカンヌン…35。
大小さまざまな消しゴムが35個。
亜久さんの筆箱の中は、消しゴムでいっぱいだった。
「なんでこんなに沢山…?」
「これだけあれば、クラスの皆んなが困らないかなぁって」
亜久さん。
あなたはうちのクラスの、”消しゴム貸してあげるよ”係の人なんですか???
用意が良すぎるよ…。