表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/53

19. 走れとなり

(帰るべきか、少し待つべきか…)


僕は迷っていた。

今、校舎の外はバケツをひっくり返したような大雨。

いわゆる夕立っていうやつだろう。


学校から最寄りのバス停までは、徒歩でおよそ5分。

ほんの短い距離だが、この降りではずぶ濡れになること疑いなし。

かといって、ここで雨宿りをしていては、夕方のアニメに間に合わなくなる。

弟と一緒に見る約束をしているから、破るわけにはいかない。


う〜ん。

と、唸りながらしばらく考えあぐねていると。

そんな僕に声をかけてきたのは、クラスメイトの亜久さんだった。


「なにしてるの、百々瀬くん。帰らないの?」


「いや、ちょっとね。傘が無くって。どうしたものかなぁと…」


「私のでよければ貸してあげるよ!ちょっと待ってね──」


そう言いながら、亜久さんはカバンの中を探してくれている。

いつも物持ちのいい亜久さんのことだ。きっと予備の折り畳み傘なんかを持っているのだろう。

まさに僥倖。


ありがとう、亜久さん。本当にありがとう──


「はい、これ合羽。返すのはいつでもいいからね」


じゃあね、また明日!

亜久さんはそう言い残すと。自分の傘を広げ、降り頻る雨の中に消えていった。


……


やや逡巡した挙句。

僕は、合羽の入った巾着をカバンへしまった。


なんというか、越えてはいけない一線というか。

亜久さんの貸してくれた合羽を着るわけにはいかなかった。

僕の中の何かがそれを許さないのだ。


ゴロゴロ…ピッシャァン!


雷さえ落ちる豪雨の下。

僕は一心不乱に、バス停へ向かってひた走った──。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ