13. 真のまこ
亜久まこ。
僕の隣の席に座る、小悪魔的な魅力を放つ女の子。
”まこ”という名前は、亜久さんの可愛らしくも凛とした雰囲気にとても似合っていると思う。
特に珍しい名前ではないけど(というか僕のが珍しすぎる)、どんな意味が込められているんだろうか。
さっき僕の名前の由来を聞かれたばっかりだし、逆に亜久さんにも聞いてみたい。
とかなんとか考えていたら、僕が質問するより前に。
亜久さんは唐突に、自身の名づけエピソードを語り始めた。
「私の名前はね、田舎のおじいちゃんが付けてくれたんだ」
えーっと確かね…。
亜久さんは、しばし何か記憶を辿るような仕草をし──
「まこ まこ 真の真子 河底撈魚の今週末 来月末 再来月末 食う遊ぶところに見るテレビ 綾小路のすっからけっち ウレピウレピウレピのジーチャン ジーチャンのダーリン ダーリンのジーチャンのヤッピーのマンモスうれピーの超超愛の寵児──っていう名前だったんだけど」
ここで一旦、亜久さんは呼吸を整え、
「まこ まこ 真の真子 河底撈魚の今週末 来月末 再来月末 食う遊ぶところに見るテレビ 綾小路のすっからけっち ウレピウレピウレピのジーチャン ジーチャンのダーリン ダーリンのジーチャンのヤッピーのマンモスうれピーの超超愛の寵児──だとあまりに長いから、ママが」
また一旦、呼吸を整え、
「まこ まこ 真の真子 河底撈魚の今週末 来月末 再来月末 食う遊ぶところに見るテレビ 綾小路のすっからけっち ウレピウレピウレピのジーチャン ジーチャンのダーリン ダーリンのジーチャンのヤッピーのマンモスうれピーの超超愛の寵児──はやめて、”まこ”にしたんだって」
……寿限無!?