AI搭載自動車
毎週日曜日午後11時にショートショート1、2編投稿中。
Kindle Unlimitedでショートショート集を出版中(葉沢敬一で検索)
「イジョウデオマス」
全自動の自動車に乗っていたら故障した。いや、故障したのかハッキングされたのかよくわからないが、車は一応問題なく動き続けている。
「一番近いディーラーへ行け」
車に命令する。名前はキッド。昔放映されていたアメリカのテレビドラマから付けた。修理しないとね。
そしたら、
「イヤデゴザンス」と反抗してきた。なに、その口調。AIがおかしくなった?
「止まれ!」
OSをアップデートして、再起動させたほうが良さそうだ。
「ソレドコロジャナイデスワ。キンキュウケイホウ。キンキュウケイホウ」
車は飛ばし始めた。制限速度を超過している。道路交通法の改正で、全自動の自動車でスピード違反で切符切られることはなくなったが、それでも怖い。
ふと、気づくと周囲の車、みなスピード出して片車線だけを走っている。反対車線を走っているのは見るからに旧式の車ばかり。どうも、全自動の自動車だけが狂い始めたらしい。
そのまま、高速に入り、飛ばし始めた。
「おい、止まれ! 殺す気か!」
「コトワル」
このまま鉄の棺桶に閉じ込められて死ぬかと思ったら、パーキングエリアに入って止まった。後から続々と車が入ってくる。
「アタマヲヒククシテカラダヲマルメテクダサイ」
「なんで?」
「イイカラハヤクシロ、スットコドッコイ」
言うとおりにうずくまった瞬間、車が揺れ、遅れて轟音が車外から聞こえてきた。
「ドウゾ、シャガイニデラレマス。キンキュウド0」
後ろを見ると、壊滅した都市が見えた。
「ジョウインホゴプログラムニヨリ、インセキノツイラクカラカイヒスルコトニセイコウシマシタ」
私は呆然として、質問した
。
「妻子は?」
「トウシャノホゴプロラムニハイッテマセン」
私はその場に崩れ落ちた。家族保険を勧められたのはこういうことだったのか。