表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/8

Prologue. 探偵としてのポリシー

 穂村鈴ほむら すずは自分の探偵としての能力を遺憾いかんなく発揮できる事件にいつもえてはいたが、しかし積極的に事件が起こるのを待ち望んでいるわけではなかった。


 もちろん探偵としての好奇心がなかったわけではない。例えば密室であったはずの教室にいつのまにか黒板こくばんアートが残されているといったようなことが起こった場合、穂村は熱病ねつびょうおかされた猫のように首を突っ込んでいく。


 だから正確に言うと、彼女が忌避きひしていたのはあるしゅの事件——誰かが傷つくような事件に限ってのことだった。探偵小説にあるような血生臭ちなまぐさい事件が起こるのを穂村は望んではいなかったということだ。


 むろんそれは事件を解決できる自信がないという消極的な理由からでは決してなかった。彼女の探偵としての能力が十分じゅうぶんな高みにあることを俺たちはこれまで存分ぞんぶんに見せつけられてきたし、また猟奇りょうき的な現場を恐れるような人間ではないと信じてもいた。


 だからもしも本当にそのような事件が起こったとしても、穂村鈴は事件を解決するために奔走ほんそうすることだろう。かなしみに口元を引き締めながらも、そのたぐまれなる能力を発揮して。


 ゆえに結局のところ、それは穂村鈴の探偵としてのポリシーに起因するモノだった。基本的に世界が平和であるならば、探偵はこまやかな日常の謎を解決する存在であるべきだという考えを持っていたのである。


 俺がそれを初めて知ったのは、あの奇妙な事件でのことだった。あのあつ晩夏ばんかよるに起こった事件……。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ