水瀬雫は引き抜きたい2
なんだこれ?手のひらの割れた陶器のようなこの欠片。私をおちょくる犯人への貴重な手がかりだ。
「あたまが、あたまが!!お、覚えてろっす!!!」
先程の気配は、どこかに消えてしまったようだ。一体なんだったんだ?手に残ったそれをどうしようか悩む。んー、捨ててもいいんだけど、なんか気になるな。
なぞの欠片はいつも、首から下げているお守りのはいった小さな巾着にしまう。学校に行く準備を急いでしなければ、雫は鏡を見つめる。
困り眉の少女が、自信なさげにこちらを見つめ返す。くせっ毛の強い青みがかった髪が肩にかかる。ぶかぶかな制服は自分の身の丈にはあっていない。奇跡的に推薦がとれたこのお嬢様学校で浮かれていたら、この有様だ。この腕で、どうやって、学校にいくのか。
うぬぬぬぬ。
「とりあえず…」
救急箱の中に、入っていた包帯を腕にぐるぐる巻きにする。ふぅ。とりあえず、左手は白い布に包まれた。左手、包帯。うむ。友人はいま、部活でいない。なら、やることはひとつだな。息を吸い込み、喉の調子を整える。さて。
「ふはははは!我が左手に、封じられし、真の力。解放されれば、あたり一面が灰燼と化すだろう!や、やめろぅ?!深淵が、深淵が、こちらを観ているぅ!くっはっは!!」
がちゃ
「雫さん、ただいまですわ。今日も、疲れましたわ。まずはシャワーを浴びて、」
「はっはっは!はひゅ?!」
「雫さん、学校い、、、きませ、、、んか?、、、、」
スポーツシャツ姿で部屋に入ってきたルームメイトは、目を丸くする
空気がとまった。
「な、な、な、」
「ひ」
「なんですか!そのかっこいいセリフは!わたくし、学園で真似しても?!雫さんから、教えていただいたと、ちゃんと声を大にして、宣伝致しますわ!!」
「や、やめてぇ!!!」
雫は絶叫した。