プロローグ
ぷしゅー、ガチャン!
電車に乗った俺は、向かって右側の座席に座った。昼過ぎの3時頃だからだろうか。電車に乗っている人はほとんどいなかった。
「へぇー、この時間ってこんなに人がいないんだ。」
隣に座ってきた女性は赤坂由菜。彼女は俺の幼馴染かつ現役高校生にして、日本で話題沸騰中の歌い手である。このことを知っているのは俺とあと二人だけだ。そして、由菜は高校で学校1の美人と言われるほどルックスがいい。一方、特技やビジュアルでは何一つ勝てるところの無い俺だったが、唯一勉強だけは彼女に負けなかった。由菜が特段頭が悪い訳でなく、ただ単に俺の方が上ってだけだ。まぁ勉強ぐらいは勝たせてもらわんと俺の心が持たねぇっての。
「いきなりそんなにドヤァって顔してどうしたの。気持ち悪いよ。」
いいの、いいの。少しぐらい俺にドヤさせてくれ。
乗客の乗せた電車は、ゆっくりと加速して駅を出発した。8月31日清々しい程の快晴で、上空には雲ひとつ浮かんでいなかった。
人間の心には希望がある。希望は前へと進み続ける自分の力となる。時には周りの人々にも影響を与え、より一層の強い意志となるだろう。そして、希望に相反するように絶望も人間の心に存在する。絶望が希望に繋がる糧となるか、病みへと進む道しるべとなるかは本人次第。壮大すぎる絶望を前に希望は一体どれほど輝けるのだろうか...