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悪役令嬢が天使過ぎて攻略対象が目に入らない!  作者: 宵宮祀花
三章◆予測可能回避不可能

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タッグバトル

「―――……お……お願い、もう許して……」


 膝から崩れ落ち、エリシアちゃんのおみ足に縋り付く格好で、私は白旗を揚げた。

 満面の笑みでそれはもう楽しそうに、しあわせそうに私の良いところ、好きなところを挙げていくエリシアちゃんは今日いち輝いていたけれど、そろそろ限界。

 なんかで恋人に「私のどんなところが好き?」って聞くシーンを見たことがあるけど、エリシアちゃん相手にしてはいけないと、強く心に刻んだ。


「残念ですわ。まだまだありますのに……」

「うぅ……十分伝わったよ……ありがとう」


 よろよろと立ち上がり、エリシアちゃんと一緒にソファに腰掛ける。と、落ち着くのを見計らっていたかのようなタイミングで、カミルさんが軽食とお茶を手に戻ってきた。


「ねえカミル。あなたもニーナのこと、素敵だと思うでしょう?」


 お茶の用意を調えているカミルさんに、突然エリシアちゃんが追撃命令を出した。私があっと思う間もなく、カミルさんは恭しく「ええ、もちろんでございます」と言って……そこから暫く、記憶がない。


「もう……ふたりして、そういうこと……いう……」


 エリシアちゃんの肩に埋もれて、頭から湯気が出そうになりながらやっとの思いでそう呟くと、カミルさんもエリシアちゃんと同じく「まだございますが、よろしいのですか」なんて恐ろしいことを言った。

 私がすっかりとけているのを見て、エリシアちゃんは大変満足そうにしている。


「これほどの魅力を、ニーナが気付いていないなんてもったいないことですわ。カミルもそう思うでしょう?」

「ええ、お嬢様の仰る通りでございます」


 カミルさんはちょっと楽しそうにしてるふうではあるけど、エリシアちゃんは本心からそう思ってるものだから、照れのダメージが大きい。心臓が爆発するかと思った。

 二人とも、私が私自身で努力してきたと思うところも見てくれているし、自分では全然気付きもしなかったところも褒めてくれた。


「エリシアちゃんって努力家で優しい上に、周りのことまでよく見てて凄いなぁ……」

「ふふっ。わたくしがよく見ているのは、ニーナだからですわ」


 一つ褒めると十倍の火力が返ってくることを、私はいい加減学ぶべきだと思う。


「ていうか、なんでこんなことになったんだっけ……?」


 まだ熱い顔を手のひらで扇ぎながら、記憶を辿ってみる。ここに来たときは確か、裸に剥かれて……そうだ。聖女の印を確認してもらったんだっけ。歴代の聖女様の中でも一番絵に描かれて、たくさんのひとに愛された綺麗な聖女様の次が私ってところで私が余計なことを言ってしまったんだ。


「複数の人と契約するかどうかはわからないし、抑も一人の相手も見つかるかどうかって感じだから……」


 照れ殺される前にと、私は最初の話題に立ち返った。


「それに、聖女って騎士からの、ええと……口づけ? で、力を取り戻すとか……そんな話だったよね」

「ええ。そこは例外なく皆同じですわ」

「それって、王子様がお姫様にするみたいな、指先とかになるの?」

「そこは人によりますわ。というより、基本的には印の位置ですわね」

「えっ」


 にっこり笑って、エリシアちゃんが私の胸の真ん中に触れた。


「以前に、わたくしが口づけをした箇所をお忘れですの?」

「あ……」


 そういえばそうだった。って、ちょっと待って。それじゃあ、もしロザリオ先輩と契約することになったとしたら、腰のど真ん中にキスされる場合があるってことなの?


「だとしたら……なんでこんな場所に……」

「一説には、聖女様に惹かれた騎士候補が抱く想いの種類によるそうですわ」

「種類?」

「ええ。友情、恋慕、信愛、忠誠……人が変われば心も変わりますもの」


 エリシアちゃんは指折り数えながら、色々な感情を並べていった。永遠を共にしたいと願う相手に抱く感情は、なにも恋とか愛とかだけに限ったことじゃないんだ。


「……といっても、複数の印を現したのは過去にお一人だけ……この説も、例の聖女様と周りの方を見ていた人たちが抱いた印象に過ぎませんわ」

「そっか……そうだよね」

 

 何だか、自分で思っている以上に大変なことになってきている気がする。なにより私はロザリオ先輩に好かれる覚えがない。

 でも考えたら、もしかしたらだけど、永遠を共にってプラスの感情だけじゃないのかも知れない。ストーカーとか、敵討ちとか、そういうのだって言ってしまえば一生最期までその人を追っかけ続けたい気持ちなわけだし。


 そこまで嫌われることをした覚えも、ないんだけどな……知るのが怖い。


「ニーナ。ご本人にしかわからないことを考えていても、終わりがありませんわ。今日は休みましょう」

「うん……そうだね。ちょっと疲れたし。じゃあ……」


 部屋に戻るね。

 そう言って立ち上がりかけた私を、三つの視線ががっちり縫い止めた。一つはいつものエリシアちゃん。もう一つは私の夜着とお風呂セットを用意していたカミルさん。そして最後の一つは、すっかりエリシアちゃんに馴染んだ可愛い小鳥さん。

 因みにフィリアは、とっくにふかふかのラグで寝ていてお構いなしって感じ。


 ペットは飼い主に似るって言うけど、使い魔もそうなのかな。


「……今日もお世話になります」

「ええ、ご一緒しましょう」


 観念すると、エリシアちゃんの表情がきらきらと輝いた。

 私は、エリシアちゃんのこの笑顔に弱い。

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