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不定期投稿
瞳を開けば
謎の空間に立っていて
そこには神がいて
特別な力を授けられて
やがて自分は世界で1番強くなる
そんな空想を彼はしていた。
だが、現実はそんなに甘くはなかった。
自分は異世界転移勇者だといっても誰からもチヤホヤされることもなく。
住む場所の提供はされず。
食べ物や、生活するための資金すらも提供されない。
こんなにも鬼畜な所業があるのだろうか。
なぜ自分はこんなにも苦しまなければならないのか。
その理由は単純かつ明快、彼の授かった能力があまりにも普通すぎたからだ。
転移した先、つまり異世界には彼の空想通り魔法や亜人といったファンタジー要素が存在し、庶民でも使うことのできるものもあるので、その存在じたいは一般に親しまれている。
そして、魔法というものは基本修練によって取得する事ができる後天的なものと、生まれた時に既に取得しているものつまり、先天的なものがある。
だが全魔法のうち7割は後天的なものと言われている。
従って、先天的なものより後天的なものの方が優れた魔法が多い。
それは一般常識であり、ましてや異世界転移者となれば人々の期待は大きくなる。
だが彼の得た能力は、後天的なものではなく先天的な能力の1つだった。
その名も〔能力名:高回復力上昇〕というもので、〔能力名:回復力上昇〕という能力の上位互換能力で、自らの外傷を治癒する速さが上がるというものだ。
一見すればものすごい可能性を秘めた能力ではあるが、彼にとって2つのデメリットがある。
1つは他者の回復力を向上させることが不可能という点。
もう1つは勇者でありながら非戦闘系能力だということ。
勇者であるのならば戦うことが望まれる。
必然的に彼は役立たずとして、人々からその存在をなかったかのように、最初からいなかったものとされた。
彼=薊 終助は現在帰る場所がない。