始まり
春休みのある日だった。
二人の青年は、昔を懐かしく思い、通っていた田んぼの真ん中にある小学校への通学路を歩いていた。二人が通っていた小学校は田んぼの真ん中にぽつんと建っている。
ついさっきまで雨が降っていたからか、通学路の脇の用水路の水は勢いよく流れている。ふと一人の青年が覗き込むとカエルが用水路の周りをぴょんぴょん飛んでいる。
なんとなく、ただなんとなく捕まえようと身を乗り出すと、ぐらっと体勢を崩し、既に足が濁った水のなかに引き込まれていた。もう一人の青年が手を掴むも、雨の雫で濡れた草で、不幸にも足を滑らせた。そして二人の身体は一緒に増水した用水路の流れにさらわれた。
夜、月の光が照らす中、藍斗と万里は知らない湖のほとりで目を覚ました。
とうぜん混乱する。ここはどこなのか。自分達は用水路に落ちてそれからどうなったのか。まさか用水路によってここまで流されてきたのか。もしくは溺れて死んだのか。ならばここは死後の世界か。疑問は尽きない。
訳も分からぬまま、とりあえず人を探そうと二人は森の中に入って行く。どれくらい歩いたのだろう。夜明けとともに森を出た二人が見たのは、高い高い城壁だった。がっしりとした大きな門が埋め込まれている。
おそるおそる近づいていき、固く閉ざされた城門の前まで来ると、門が開かれ始めた。そして開かれた門の先には、見慣れない格好の人間が数人並んでいたのだった。
阿磨野雀です。毎週土日のどちらかに次話更新していきたいです。到らない点が多々あると思いますが、生温かい目で見守って下さると幸いです。