番外編 Envy
私の名はエンヴィ 嫉妬の名を与えられし邪神の使徒。
邪神様、愛しき我が主。
暖かな手を持つ優しきお方。
私は非道な王子に仕え、尽くして尽くして、最期は身代りに呪いを受けて死んだ。
私の大切な王子様。
私は心から仕えていた。
私の唯一の主に。
主にとって私はその他大勢でしかなかったけれど。
呪いを受けた私は…役立たずとうち捨てられた。
嗚呼、なぜ、なぜですか王子よ。
私の忠誠に一点の曇りなどなかったのに。
なぜ、なぜ私ではだめだったのですか。
そう思うたびに私は人の形をうしなっていった。
ちっぽけなちっぽけな鳥になった。
虚しさを抱えながら召喚された私は優しい掌を狂おしいほどに求めた。
側にいたい。
今度こそは最期まで側に。
けれど与えられた能力ゆえに側に侍ることは赦されなかった。
優しく、美しく、寂しい。その方の役に立ちたいと思ったのに。
優しいその手に触れたいと思ったのに。
見送る邪神様の側に侍ることを赦された犬への嫉妬に赤紫の胸がじりじりとやけた。
そして高らかに歌う我が神を称える歌を。
嫉妬に胸を焦がしながら。
苦しい苦しい苦しい。
身震いするほどの苦しさ、なぜ、なぜ私はあの方の側にいられないのか。
あの方を包める被毛が羨ましい。
あの方を守れる大きな獣の身体が羨ましい。
あの方の役に立つ手のある身が羨ましい。
あの方を喜ばせる長い尾が、あの方を舐められる舌が…
ああああああああああああ
なぜ、なぜ、なぜ。
私の方がずっとずっとずっとずっと…
あの方を愛しているのに。
なのに、あの方を満たすものが何ひとつ無いなんて。
あああ、なんて、なんて、なんて羨ましい。
なんで私はこんなにも何もないのか。
あの方を満たすものが、なにひとつ、なにひとつないなんて。
ずるい、恨めしい、憎い、苦しい。
あああ…あぁ、けれど…
この苦しさこそ我が神に捧げるにふさわしい。
嫉妬の名を与えられし私に相応しい。
この胸を焦がす苦しみが
身を震えさせるその苦い甘さが、
神が私にくださったもの。
私が神に捧げられるもの。
私は高らかに歌う。
邪神を讃える歌を。
我が神の素晴らしさを。
けして届かない歌を嫉妬に胸を焦がしながら歌う。
我が名はエンヴィ
嫉妬に身を焦がし高らかに鳴く、邪神の使徒。




