邪神とおでかけ 3
完全に諸々、不思議現象である。
まあ、この程度の不思議現象は慣れっこなので細かく考えてはいけない。
空気がすごくおいしいな〜ってことだ。
なぜなら俺は邪神だから。
そもそもこの場所への俺の出入りが社会の窓…いや、それはもう仕方がないわけで今度からは扉でもつけるか?花が美味しいし景色は綺麗、扉さえあればラストが留守番しなくてもいいわけだ。
扉をつけるとなると家も必要だろうか?
大きな買い物になるからポイントをしっかり貯めないといけないな…
首を傾げた俺の頬を髪がくすぐった。
こそばゆい。
不思議現象満載な邪神になっても髪はのびるんだな。
伸びる必要ないだろうに…つうかもうこれ結べるんじゃね?
肩を超すくらいある…ん?
微妙な違和感を感じる。
なんだろう?まあいいや、そのうちヘアゴムでも手に入れるか。
たしかコスメとかスキンケアとか飾りって部門がカタログにあったから…
今度ちゃんと見てみるかな、興味がなさ過ぎて完全にスルーしてたわ。
ラストに合うケアクリームとかあるかもしれない。肉球がよりぷにぷにになるかもしれない。
それにさんぽに出るなら必須だよな首輪とリード。
ペット用品だな。
気を抜いてるとリードってかいてあるのにキッチンペーパー出てくる的な…あり得るがキッチンペーパーは出ても困らないから試す価値はありそうだ。
お値段と要相談だな。
あ、待てよ、ラストは狂犬病ワクチン打ってないな…俺は邪神だから絶対大丈夫そうだけど獣医っていんのかな?
まあいいや、今日はこの白くなった花をラストへのおみやげにしよう。
ふと、何かを感じた。
見渡す限り白くなった邪神花が咲く幻想的な景色、遠く、地平線の端で人影らしきものが…
と思った次の瞬間その人物はバシュッ!!と特撮ヒーローみたいな音をさせ白くなった邪神花を散らした…と思ったら、俺のすぐ近くにいた。
俺とそいつの間にある距離はあと数歩で埋まる。
ーーーこれは俺を殺す者。
俺の直感がそう告げた。それは邪神としての直感。
俺が敵と認識した瞬間、男に散らされていた足元の邪神花がザワッと一斉に男に飛びかかった。
と同時にラストのぷに触手が俺を包み繊細さゼロで俺を回収した。
そう、それは完全に投網漁。
魚は俺だ。
「うわっ!」
引き上げの猛烈な勢いにバランスを崩した俺は網のなかで倒れ、花を持っていた手がぷに触手網目からズボッと抜けてしまった。
倒れてもぷにぷにだから痛くない。良かった…
慌てていたせいだろうかラストのぷにハンドがちょっとぬるついている。
もしかしたらフローラルマウスワンコなラストの体液はほとんどでないと思ってたのにやっぱあるんだな…あいつよだれつけないように気を使ってたんだな。
ぐんぐんと引き上げられていく俺。
ぶらりと無防備に隙間からでた俺の手を掴もうとするかのようにジャンプしたソイツに一斉に邪神花が覆い被さる。
俺はぷにハンドの網越しに、そいつは邪神花の蔦の隙間から、
バチッと目があった。
空のような青に金が散る瞳。目力が強すぎる超絶イケメン。
こ、怖えぇぇ
相手との距離が開いていく俺と入れ替わるように手にもっていた邪神花が落ちていった。
しゅっぽん!
と部屋に回収されおれは慌ててぷにハンド投網から抜ける。
「はやく、はやく!!」
警戒してグルグルと唸るラスト。
俺は急いでオープンしていた邪神社会の窓にかけより、チャックを震える手で大急ぎで閉めた。
隙間から見えた男は青い炎で巻きついていた邪神花を既に灰にしていた。燃える邪神花の中心で俺が落とした白い邪神花に顔を近づけていた。
まるで花に口づけているように見えた。
「あれが…敵か…」
本能が危険を告げるとはこういうことなのか。
震える掌を見ながら、は…は…と震えながらも奇妙なな笑いが起きた。
あれは勇者だ。
邪神を討つとさだめられた者。
俺を殺す者。
俺のーーー敵。
なにあのゴリラみたいな逆三角形ボディ、勝てるわけないじゃん。
なにあのイケメン、顔面凶器だろ、怖い。
花持ってるの絵になりすぎる。怖い。
怖い。
……イケメン滅びろ。
俺、邪神だけどこれからも引きこもりでいいや。
ちょっとお外に出ただけなのに社会マジ怖えぇ…
きゅーん
ラストの心配そうな声で俺をペロペロ舐めてくる。
「…んん?」
プニハンドがまだ全体的にしっとりしてる。
ふむ、なるほど、ぷに触手には汗腺があるのか。
猫の肉球とおなじだな。
俺はいつもよりしっとりしたぷにハンドをもみながら心を落ち着かせた。
邪神ちゃぶ台の上ではちゃぷん!と珍しく鯛の鯛が金魚鉢ではねた音がした。
出かける前に見たときには沈んでたのに。
なんだか心配されたみたいでこそばゆい。
もう一生外なんかいかない。
俺は引きこもり邪神道を極めよう。
そう心に誓った。




