表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/136

第8話 侵入者

 無我夢中で走り、気が付けばティアナは南棟に来ていた。

 南棟は、学園の端の端に位置し、空き教室が多く人がほとんど来ない物置のような場所だった。


「私、こんなところまで……」


 息を整えながら辺りを見渡すティアナは、先程の出来事を思い返す。


(ハルが、あんなこと……。でも、何の理由もなくあんなことするのかしら……? いいえ、するわ。きっとするわ)


 頭を振り、疑念を追い出したティアナは頭を上げ。

 拳を強く握り思いを声に出した。


「だってド変態の最低野郎だもの!!!」


 我慢できずに叫んだティアナの声は、誰の耳にも届かず、放課後の空気に溶け込むだけ。

 の、ハズだった。


『警告、警告、侵入者です。南棟に侵入者が現れました。生徒は速やかに避難してください』


 突如鳴り響いた警告音に、ティアナは驚き飛び跳ねた。

 緊張感と警戒心が勝ったティアナは、混乱をなんとか飲み込む。


「な、何? 侵入者? 南棟? とにかく、逃げなきゃ……!」


 後先考えずに走り出したティアナは、曲がり角に差し掛かった時。

 何か、大きく硬いものにぶつかった。


「キャッ! な、何?」


 衝撃で跳ね返り、転んだティアナは、自分が衝突したものの正体を見極めようと顔を上げる。

 不運なことに、ティアナが見上げたその先には、


「……え?」

「可愛い子、みーつけた」


 見たことの無い、武装した男が立っていた。


    ***


「キャァッ!!」

 

 ティアナは、謎の男に腕を引っ張られ、空き部屋へと放り込まれた。

 その後、後ろ手に縛られ、ご丁寧にも魔術による制限も加えられた。


(今日はどうしてこんなにもツイてないの……!? でも、元の場所からはそう離れてないわ。こいつさえなんとかしてしまえば……)


「おーおー、近くで見るとやっぱ上物だなぁ!」


 ブレアと名乗った片目の隠れた男は、ティアナの顔を強引に掴み、じっくりと嘗め回す様な目でティアナを視姦してゆく。

 顔を歪め、不快感を隠そうともしないティアナの態度に、ブレアはますます興奮していった。

 その間、ブレアに最大限の注意を払いながらもティアナは手の拘束を解こうと様々な思考を巡らせる。


「はっ! 逃げようってかぁ?」


(バレてる! 他に注意を逸らさないと、逃げ切ることは不可能。どうしたら……)


 ブレアの言葉に、ティアナはますます混乱していく。

 状況を打破する方法を考える為、上手く働かない頭を、ティアナは必死に動かし続けた。


「なぁに、手の拘束を解いたところで、お前は逃げられねぇよ!」

「……なんですって?」


 途端に表情を変えたブレアに、ティアナは緊張感を募らせる。

 先ほどまでの下心を隠そうとしない目線とは打って変わって、愉快でどうしようもないとでも言いたいかのような目線に、ティアナは冷静さを欠いてゆく。


「さっき魔術でお前に制限をかけただろ? その内容は……」

「……内容は?」


(何? 行動の制限でしょう? コイツに逆らった瞬間に何処か怪我をするとか? それとも麻痺? まさか、自我がなくなるとか……!?)


 最悪のパターンを思い浮かべ、ティアナの顔は青ざめていく。

 唾を飲むティアナに、ブレアは口角を上げ、告げた。


「その内容は、『俺の許可なしに部屋を出たのならば、下着含め着用している全ての衣服が破け散る(ニーハイのみ除く)』だ!!!!!」

「な、なんて頭の悪い!!!!」


 頭の中を駆け巡った考えを全否定され、考えもしなかった頭の悪い発想に、ティアナは唖然とする。

 愉快極まりないと笑い声をあげるブレアに、ティアナから先ほどまで向けていた恐怖感は失せ、代わりに不快感と嫌悪感が増していった。


(な、何? この人、本当にそんなことで私の行動を制限できると思っているの? え? ……まさか、今の発言は全てダミーで、もっと別な効果が……!?)


「はっはっは! 驚きで瞬きすらできていないようだな! そんなかわいそうなお嬢ちゃんを、これから楽園に連れて行ってあげよう!」


 そう言って、おもむろにティアナの制服に手をかけるブレア。

 ティアナの体はびくりと反応し、表情は呆れが滲み出ていた軽蔑から、これから起こることへの恐怖に一瞬で変化した。


「あ、いや……」

「いいねぇ、その声。もっと嫌がってよ!」


 優しく服の上から体に触れていたブレアは、興奮を抑えきれないとでも言うかのようにティアナのブラウスを掴み、乱暴に引きちぎる。


「い、いやぁぁ!!」


 与えられたことのない屈辱に、ティアナは悲鳴を上げる。

 ティアナは今まで守り抜いてきた自身の純潔を簡単散らされることを想像し、思わず恐怖で震えあがった。

 覚悟も決まらぬままティアナが固く眼を瞑った、その時、


「あ?」

「……え?」


 空き部屋の扉が開いた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ