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第79話 無自覚

本日四話目の投稿です


「何のことだ?」


 首を傾げるハルに、ティアナは唇を噛む。

 

(……無自覚なのね、きっと)


 教科書を広げ、勉強をしているフリをしながら、ティアナはハルに話しかけ続ける。


「あんたが心配してるのは、レイの事? それとも、自分の事?」


 ピクリ、とハルの肩が揺れる。

 ティアナへと注ぐ視線を鋭いものに変え、ハルは口を開く。


「王族であるお前に、関係ないだろ」


 ここにきて、久しぶりにハルの口から出た王族という単語に、ティアナは唖然とする。

 ティアナは、手を止め、真っ直ぐにハルを見た。


「この件で、これ以上関わるな」


 再び窓の外へと視線を向けるハルに。

 冷たくあしらわれることに、ティアナは肩を震わす。


「な、何よそれ! 王族とは関係ないでしょう!?」


 ハルの腕を掴み、ティアナは抗議する。

 取り乱すティアナに、ハルは迷惑そうな声を出した。


「もういいだろ、放っておいてくれ」


 昼とは真逆の、ハルの対応。

 ティアナは歯噛みし、負けじと食い下がる。


「良くないの!」


 教室であるということも忘れ、叫ぶティアナの表情は、悲しげに、苦しげに歪んでおり、ハルは眼を見開く。


「……お前に、そこまでする理由なんてあるか?」


 静かに問いかけるハルに、ティアナは俯き、思考を巡らす。

 

(私が、関わりたいと思う理由……。私が、私の、理由……。レイが心配だから? ううん、今はハルだし。放っておけないから? じゃあなんで放っておけないの? 私は、ハルを、どう思って……?)


 改めて、考えさせらるハルの問いに、ティアナは混乱していく。

 見つからない答えに、ティアナは勢いよく顔を上げ、ハルへと言葉を投げつけた。


「そんなの、分かんないわよ!」


 顔は先程のように苦しげに歪めたまま、潤んだ瞳で見つめるティアナに、ハルは視線が釘付けになる。


「わかんない、けど……! 放っておいたら、なんか、後悔する気がするのよ! ……それじゃ、ダメなの?」


 言葉を工夫することもなく、真っ直ぐに訴えてくるティアナに、ハルは唖然とした後、自然と表情を緩ませる。


「なんだそれ」


 ようやく見せた飾らない笑みに、ティアナは涙を溢れさせる。

 突然泣き出したティアナに、ハルは慌てて彼女の涙を拭った。


「どうしたんだよ」

「そんなの、分かんないわよ……」


 声を震わせ、眼を潤ませるティアナに、ハルは困った様に笑う。

 ふと、ハルはティアナの髪飾りに眼を向けた。


「つけてんだよな」


 ティアナの頭で輝くティアラを模したそれにハルは優しく触れた。

 からかうように口角を上げ、ハルはティアナの顔を覗き込む。


「気に入ってんの?」

「うるさい」


 ハルから視線を逸らし、頬をうっすら赤く染めるティアナ。

 そんな彼女に、ハルは肩を抱き寄せた。


「ふぇ!?」


 ハルの行動に驚愕したティアナは眼を見開き、彼を見上げようと首を動かす。

 しかし、ハルがティアナの肩に頭を乗せたため、首を動かす事ができなかった。


「俺は、あの時、よく考えていなかった」




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