第51話 タイミング
「なんで俺がコイツと……」
「私のセリフよ!」
2人は、お互いの間に少し距離を取りながら商店街を歩く。
ティアナはチラリ、とハルを見上げた。
(テレサ、私にちゃんとお礼を言う機会をくれたんだろうけど……。だからって、こんな形じゃなくてよくない!?)
ティアナは、魔術格闘祭後、テレサにこっそりとハルへのお礼の仕方を相談していた。
学園へ変質者が侵入した日、1回戦での事故、合計で2回助けられている事実と、感謝を述べていない現実に、ティアナは揺れていた。
「おい、こっちでいいのか?」
「へ?」
呆けながら歩くティアナに、ハルは急に声をかける。
「あ、そういえば、編入生だったわね」
眉間に皺を寄せ、ハルが辺りを見回しながら尋ねる様子に、ティアナは思い出す。
クスリ、と笑った後、ティアナは1つの店を指さして言う。
「あそこよ」
今日初めて見せるティアナの笑顔に、ハルは気まずそうに視線を逸らす。
頭を掻きながら自分から眼を逸らしたハルを、ティアナは不思議そうに眺めた後、微笑みながら走り出す。
「ほら、いきましょ!」
惚けているハルを置いて走り出したティアナは、突如、足元の段差に躓いた。
「わっ!?」
急にバランスを崩した体に、ティアナは声を上げる。
咄嗟に伸ばした右手で、ハルはティアナを抱き寄せた。
後ろからハルに抱きしめられたティアナの鼓動は跳ね上がる。
「ハル!?」
「ったく、気を付けろよ」
溜め息を吐きながら、ハルはティアナの体を離す。
戸惑いながら顔を赤らめるティアナを見て、ハルは笑った。
「バカな奴だな」
「なっ……!?」
ハルの言葉に、普段なら起こる場面で、ティアナは言葉を詰まらせた。
(どうして……!? こんなにもムカつくのに、こんなにも、頬が熱い……)
「ほら、いくぞ」
立ち止まり、俯くティアナの手を、ハルは優しく握り、目当ての店へエスコートする。
「ちょっ……!?」
「お前、また転びそうだからな」
再度口角を上げて笑うハルに、ティアナの鼓動は治まることを知らない。
自分の手よりも大きく、ゴツゴツとした温かいその手を軽く握り返す。
「……バカ」
「お前ほどじゃねぇよ」
自分の言葉1つに、しっかりと反応するハルに、ティアナは視線を逸らす。
横から見上げたハルの顔が、ティアナの眼には輝いて見えた。




