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第44話 起死回生を


「たあ!!」


 レイは迷わずアルフに切り掛かる。

 レイの動きを想定していたアルフは、口角を上げ、痛めた右腕を振り上げた。


「ふん!!」


 先程までその右肩に存在していた違和感は、今はすっかりと消え失せ、震えることなくレイへ襲いかかる。

 アルフの右腕を魔術刀の刃で受け止めたレイは、自分達の横を走り過ぎ、ゴーレムへと向かう自分の兄を認識し、微笑した。


「蔦ァ!!」


 ハルは魔術を発動し、己を嘲笑う。

 

(こんな大事な場面で、蔦1本しかだせねぇとか。ハッ、俺だってあいつのことバカにできねぇじゃねぇか。だが、今はこれで十分! レイはまた同じようにアルフの足止め。俺は残り少ない魔力でゴーレムの意識を俺へ向け、ティアナは……)


 ハルは、自分と反対方向へ走り出したティアナを一瞥し、ニヤリ、と笑った。

 

(アイツは!)


「ただ何もせず、逃げ回るのみ!!」


 ハルが防ぎきれないゴーレムの攻撃を華麗に躱しながら、ティアナは走る。

 まるで鬼ごっこでもしているかのように、止まることなく走る。


「おらぁ!!」

「はあ!!」


 今までの疲れを忘れたかのように速さを増すアルフに、レイは歯噛みする。

 

(このままでは、足止め仕切れない! こんなに大事なところで、またお兄様の足を引っ張ってしまう……!)


 再度、自分を支配しかけた迷いに、レイは思考を止める。

 先程諭されたばかりでありながら迷う己を、レイは静かに恥じた。


「……違う」


 刃を掴まれた魔術刀を離し下ろした右手に、柄を握ったままの左手に、レイは力を込める。

 

(私が任された。私に任された。私へ任された。私だけに任された。役立たずではなく、足を引っ張るだけのお荷物ではなく、1人の、チームメイトとして……!)


 右手に顕現させた新たな魔術刀を握りしめ、レイはその手を振り上げた。


「絶対に、止めきってみせる!!」

「上等だぁ!!」


 振り上げられた魔術刀をアルフは右手で掴み、刃をへし折る。

 2人同時に後ろへ跳び、距離を取りながら構え直す。

 両手の魔術刀を魔力へ変換し、レイは新たに二振りの魔術刀を顕現させた。

 大きく深呼吸するアルフは、左足を2歩分後ろへ下げ、両足に力を入れる。

 ゴーレムの打ち付けた拳によって発生した轟音を合図に、2人は跳びだした。


「蔦ァァ!!」


 か細く、力の弱い蔦をハルはゴーレムへ打ち付け、全ての意識を自分へと向ける。

 それでもティアナにも向けられる敵意に、ハルは唇を噛む。


「ハル!!」

「わかってんだよ!!」


 振り下ろされたゴーレムの拳に、ハルは転がりながら後ろへ跳んだ。

 みっともなく地へ這い蹲るその姿に、だが眼を離すことができず、観客は静観する。


「ッ、クソ……!!」


(俺にアイツを壊すだけの力は無い。だから二人を頼るしかない。クソが! なんてザマだ。……だが、これでいい。これがいい。これこそがいい)


 歯を食いしばり、ゆっくりと立ち上がるその姿に、誰もが息を飲む。

 圧倒的な力を見せる怪物の前でなお、闘志を燃やし続け、己を奮い立たせ続けるその姿は、まるで御伽噺(フェアリーテイル)の勇者そのものであった。


(俺はこれでいい。ただの雑魚でいい。クズでいい。だから、もう少し、あと少し。あいつ等が、レイが、ティアナが、必ず!)


「お前を、ぶっ倒す!!」




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