第43話 幼馴染
「お前!?」
その光は、アルフのチームメイトが行う魔力供給のそれであった。
這い蹲りながらアルフへと真っ直ぐ手を伸ばし、魔力を譲渡する幼馴染に、アルフは驚愕の声を上げる。
「そんな、魔力供給は1回だけじゃ!?」
混乱するティアナは東ゲートの方へ振り返り、テレサを見る。
顔を真っ青にし、口を両手で塞ぐ親友の姿に、ティアナは状況を察する。
「バカ野郎!! 今すぐ止めろ!!」
「アルフ!!」
もう片方のチームメイトも起き上がり、レイへ向け魔術を発動した。
レイの周りの空気を圧縮し、気絶させようと目論んだ幼馴染の行動に、レイは間一髪のところで後ろへ跳ぶ。
「空間魔術の応用ですか……!?」
驚愕と称賛の声を漏らし、ハル達と合流するレイは、アルフ達から視線をさらさず、柄を強く握り直す。
「お前等!?」
「優勝するんだろ!?」
眼を見開き、愕然とするアルフに、幼馴染は叫んだ。
「お前、言ったじゃないか!! 3年連続優勝してやるって!!」
「誰が相手だろうと絶対勝つって、言ってたじゃないか!!」
幼馴染が口々に叫ぶそれは、アルフが1年の時、2人と交わした約束であった。
魔術格闘祭への出場を拒む2人に対して、条件として提示したそれを、アルフは思い出す。
「アルフ! 諦めんなよ!!」
「俺達が歴史を創るって! そうだろ!?」
アインフォード魔術学園創立以来、魔術格闘祭において、3年連続優勝を勝ち取ったものは1組として存在しない。
その歴史を塗り替えると豪語していたアルフは、幼馴染2人の手によってその時の感情を心の奥底から引っ張り出される。
「アルフ!!」
「勝てよ!!」
「「俺達の夢を、叶えろよぉ!!!」」
今までそばでアルフを支えてきたチームメイトの、幼馴染の、友の、親友の心からの叫びに、アルフは顔を上げた。
「……あぁ。そう、だったな」
アルフは、両の拳に力を込め、空を仰ぎ見る。
そして、アルフはハル達3人に向き直りニヤリ、と口角を上げて嗤った。
「我の導に従い、その力を示せ!! ゴーレム!!!」
両手を振り下ろしながら叫ぶアルフの声に、ゴーレムの亡骸が3つ、大きく揺れる。
「……ハハ、シャレになんねぇ」
3人は目の前の光景に冷や汗をかきながら、口を開け、愕然とする。
動き出したゴーレムの亡骸は、1体の巨大なゴーレムへと変貌していく。
全長およそ5メートルの大きさに加え、その重量はおよそ6トン。
まともにフィールドに立っていることさえ許してはくれないであろうその姿に、3人は後ずさりそうになった。
「俺達は、俺達が、絶対に勝つ!!」
巨大な怪物の足元で、アルフは腹の底から叫び、宣言する。
威圧力を取り戻したその姿に、3人はニヤリ、と口角を上げた。
「生憎、こっちも譲れないんでね」
真っ直ぐとアルフを睨み、3人は竦みかけている自身の足に力を込める。
ハルとティアナの残り魔力は僅か。
レイには少し余裕があったが、それでもゴーレムの前では微々たるものであった。
体力も限界に近づき、体の節々は悲鳴を上げる。
そんな状態で目の前の怪物2体を倒すなど、困難を極めていた。
しかし、強気に笑う3人に、アルフは両手を広げ迎撃態勢を取る。
「そんじゃ、ラストスパートだ」
右の拳を、左の掌に打ち付けながら、ハルは己の闘志を燃やし、気合を入れ直した。
4人は向かい合ったまま、それぞれの構えを取り、睨み合う。
「さあ、」
「「いくぞ!!!」」




