表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/136

第28話 3回戦


「「「我の導に従い、その力を示せ!」」」


 開始と同時に、対戦相手は全員魔術を展開した。

 発動までのリミットは5秒。

 普通なら相手に届かずにそのまま終わる。

 

(でも、ハルの蔦なら、5秒以内に相手を拘束できる!)


「ハル!!」

「お兄様!!」

「我の導に従い、その力を示せ! 蔦ァァァ!!!!」


 対戦相手と同時に、ハルは魔術を発動する。

 両手を振り下ろし、腹の底から叫ぶハルの声で地中に発生した蔦は、格闘場全体を揺らす。


(相手との距離は50メートル。私とレイが走ったとしても約4秒かかる。それじゃあわざわざ死ににいくようなもの。逆に2人同時に魔術を発動しても避けられたらそれまで。なら最初から動かずに、全部ハルに任せる!)


 直接対戦相手の足元に出現した多量の蔦は、ブレアの時同様、3人の体に絡みつき、強く締め付ける。

 その合計時間わずか4,5秒。

 突然湧いて出た蔦に、対戦相手は悲鳴を上げた。


「何!?」


 絡みつく植物を振りほどこうと魔術を展開するが、だか逆に魔力を吸われ、更に強く絡みつく蔦に、対戦相手は成す術もなくもがき苦しむ。


「ここまでは順調。あとは放り出すだけ、だが……」


 息を吐きだし、相手を見据えるハルは、しかし相手の纏う空気に身構える。

 蔦に拘束され俯く長髪の少女が、ポツリ、と呟いた。


「……やりなさい」

「はい、お姉さま」


 左端の長い髪の少女が小さく命じた。

 それに答える真ん中の短髪の少女は小さく、魔術を唱える。


「我の導に従い、その力を示せ」


 魔術を唱えると、短髪の少女が身に着けているペンダントが赤く光る。

 蔦に絡まれながら魔術を発動しようとする少女の行動に、ティアナはハルへ問いかけた。


「蔦に絡まれてたら、魔術は発動できないんじゃないの!?」

「蔦にだって許容量あんだよ!」


 蔦1本に対し、吸収できる魔力は意外と少ないものだった。

 それに加え、力加減をしているため、ブレアの時のように無数の蔦を使うことができず、少女に絡みつく蔦は1人当たり3本のみであった。


「「我の導に従い、その力を示せ」」


 両脇の少女は同時に魔術を発動し、自らを守るシールドを展開する。

 と同時、短髪の少女を中心に、爆発が起きた。

 短髪の少女は衝撃で場外へ吹き飛ばされ、そうでなくとも全身に大火傷を負い、身動きを取ることが叶わなかった。

 爆発により蔦から解放された両脇の少女は、自分達の妹を気に掛ける様子もなく、制服についた汚れを払う。


「あいつら、自分の妹に自爆させやがった……!」


 瞬時に状況を理解したハルは目の前の光景に激怒し、声を震わせる。

 ティアナとレイは、あまりの展開に口を開いたまま、立ち竦む。


「なんと!! 自爆です!! ハル選手の蔦から逃れるために自らを犠牲にするという、素晴らしい姉妹愛を見せました!!!」


 司会は的外れな発言で会場を沸かせる。

 その言葉にハルは更に興奮する。


「姉妹愛なんかじゃねぇ。あいつら、妹のことをなんとも思ってねぇ……!!!」

「お兄様、どうか落ち着いてください」


 今にも目の前の2人に飛び掛かりそうなハルに、レイは静かに声をかける。

 しかし、レイの声にもまた怒りが滲んでいた。


「……おい、我慢しろとかくだらねぇこと」

「言わないわよ、安心して」


 怒りに肩を震わせるハルに、ティアナは冷静に、それでも聞くものを凍てつかせるほど恐ろしく冷えた声で告げる。


「作戦なんてもう考えなくていいわ。今はただ……」


 ハルは右足を踏み込み、ティアナは右手を前に構え、レイは顕現させた魔術刀の柄を強く握る。

 そして3人は、声を合わせて叫んだ。


「「「あいつらを教育してやる!!!」」」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ