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第20話 懺悔


「ティアナ!!」


 テレサは東ゲートから退場したティアナに駆け寄る。

 憂色を濃くし、涙を浮かべた瞳で見つめられたティアナは、どうしようもないように笑う。


「心配しすぎよ、テレサ。この通り、なんともないんだから」


 そう言って1度、くるりと回って見せるティアナに、テレサは思い切り抱き付き、泣き声を上げた。


「よかった、本当に良かった……!」


 大げさな反応をするテレサに、ティアナは嬉しそうに息を吐く。

 泣き続ける親友を宥めるように、ティアナはテレサの腰に手を回した。


「大丈夫だってば、ね?」

「えぇ……」


 抱き合う2人を後ろから見ていたレイは、俯き、その場で足を止めた。

 自分の失態が招いたテレサの涙に、レイの胸は締め付けられる。


(あの時、お兄様が私の斬撃を防いでくださらなければ、この人は……)


「レイ」


 最後に退場したハルは、俯くレイの頭を優しく叩く。

 ハッ、とレイはハルを見上げ、また俯いた。


「……申し訳ありません、お兄様」


 沈んだ声で、レイはハルに謝罪する。

 その言葉にハルは目を細め、レイの頭を少し乱暴に撫でた。


「想定済みだった、そう言えば満足か?」


 普段より僅かに低い声でハルはレイに問うた。

 レイは自分の愚かさに眼を見開き、拳を強く握る。


「私は……」

「レイ」


 言葉を遮る様に優しく自分の名を呼ぶ声に、レイは顔を上げる。

 視線を向けた先には、優しく笑いかけるティアナがいた。


「レイ、私は大丈夫よ」


 落ち込むレイに歩み寄り、ティアナは優しく手を取る。

 ティアナの行動に、レイは瞳に涙を滲ませ、顔を逸らした。


「私は……」


 震えた声で呟くレイに、ティアナは一瞬視線を逸らし、またレイを真っ直ぐと見て、告げた。


「どうせハルは、こうなること分かってたんでしょ。なら、それを注意しなかったお兄様の責任じゃない。貴女は俯かなくていいのよ」


 ね、と笑うティアナ。

 先程とは別の意味で眼を見開いたレイはティアナを見つめる。

 ティアナは視線を逸らすことなく、優しく微笑んだ。


「俺のせいかよ」


 ハルは頭の後ろで両手を組み、面倒くさそうに声を上げる。

 レイはハルを見上げ、ハルはレイを見下ろした。


「だってそうでしょう? あんたが一言注意していれば、レイが落ち込むことはなかったじゃない」

「お前、どうせ注意しても聞かなかっただろうが」

「さすがに私だってそれは聞くわよ!」


 傍で言い争いを始める2人を見て、レイは呆然とする。

 そんなレイにテレサはそっと歩み寄り、レイの肩に優しく手を置いた。

 テレサの行動に驚き振り返るレイに、テレサは優しく微笑みかける。

 再度涙が滲むのを、やっとの思いで堪えたレイは、ティアナに向き直り、頭を下げた。


「申し訳ありませんでした」


 腰から垂直に折られたその姿勢に、言い争いをしていた2人は、ピタリと動きを止め、顔を見合わせる。


「この度は、私の不注意で……!」


 震える声で懺悔するレイに、ティアナは慌てて声をかけた。


「あーもういいってば! 事故だったんだし、何よりこいつの責任! もうおしまい! ね?」


 レイの体を起こさせそう告げるティアナに、まだ罪悪感を拭いきれないレイは、ハルに視線を送る。

 それを受け取ったハルは、呆れたように笑う。


「本当に、良いのですか」

「バカね。いいって言っているでしょう?」


 再度笑いかけるティアナに、レイは涙を拭い、真正面からティアナを見て、


「……はい!」


 最高の笑顔を零した。




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