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第16話 出場と特典


「出場チームが1組足りなくてな。3人いるんだからちょうどいいだろ」

「ちょおっ! テレサは?」


 3人、という言葉に引っかかったティアナは、本来突っ込むべきではない場所に質問を投げかける。


「あ、私は実行委員会だから」


 テレサはそう笑って、委員会腕章を取り出しティアナに見せる。

 何一つ知らされていなかったティアナは腕章を見せつけられ、呆然とする。


「まぁ、そういうことだ」

「あら? でも、ハル君は魔術を使えるの?」


 その場にいる誰もが流されそうになった時、テレサがふと思い出したかのようにハルに話しかける。


「ハルでいい。それと俺は、」

「使えますよ」


 ハルの言葉を遮って口を開いたのは、レイだった。

 テレサの質問に答えたにもかかわらず彼女の視線はハルに向かっており、その表情は真剣そのものだった。


「そ、そう……」


 レイの反応に疑問を持ちながらも、それ以上踏み込まず、テレサは口を閉じた。


「それで? 出るよな?」


 3人が肯定も否定もしないがためにその場を去ることのできないドレットは、結論を催促する。

 既に出場が決定しているにもかかわらず3人が曖昧な反応をする理由、それは、他人に言われて出場した時のリスク。

 もし優勝できなければ、補修への参加を余儀なくされる。

 

「先生が出ろって言うなら、何か特典あるよな?」


 各々が考えるリスク。

 それを覆すだけのメリットを、ドレットが提示できるか否か。

 当然問いかけられると考えていたであろう彼は、気怠げに口を開く。


「自主出場ではないからな。補修期間は半月に免除。魔術倉庫にある宝石を1人1つずつやろう。それから……」


 ドレットは、ちらりと4人の囲むテーブルの上を見、続けた。


「毎日、ここで茶を飲むらしいな。その代金を1ヵ月肩代わりしてやろう」

「ティアナ!」


 思いもよらなかったメリットに、テレサは驚喜の声を上げる。

 しかし、まだ出場を渋る3人をみて、テレサは知恵を絞った。


「ほ、ほら。2人って生徒達に比べられるほど魔術の腕が立つでしょう? だから、この機会に相手の技量を見極めるのはどうかしら?」


 テレサの言葉を聞いて、ティアナとレイはピクリと肩を揺らす。

 2人はお互いに視線を交わし、思考を巡らせた。

 

(初対面にも関わらず罵声を浴びせてきたからには多少腕が立つのでしょうけれど、この間は後ろを向いてたから、ちゃんとこの人の魔術を見たことはない)

(あの時はハルに邪魔されたから、ちゃんと勝負できなかった。それに、私の魔術に変な反応をしたし……。今回の魔術格闘祭は、)


「この子に、」

「この人に、」


 ――私の実力を見せつけるチャンス!!


「「私、出ます」」


 ティアナとレイは同時に出場の名乗りを上げる。

 互い顔を見合わせ、不敵に笑う。

 ハルはそんな2人を見て、溜め息を吐き、右手を上げる。


「しょうがねーから、俺も出てやるよ」

「ありがとうございます、お兄様」

 

 本当に面倒くさそうに吐き捨てるハルに、レイは嬉しそうに笑う。

 全員が名乗りを上げたことで、放課後に楽しみが増えたテレサは歓喜の笑みをこぼした。


「自チーム内で争うのは、一発退場だからな」

「チッ」

「今舌打ちした!?」


 一応、と念押しするドレットの言葉に、レイは舌打ちを漏らし、それを聞き逃すことのなかったティアナが抗議の声を上げる。

 そんな2人を眺めつつ、ハルは3人分のパンフレットをドレットから受け取った。


「んじゃ、各自準備は怠らぬよう」

 

 お茶代は俺につけとけ、と言い残し、ドレットは食堂から姿を消した。

 3人は顔を見合わせ、各々の覚悟を示し、テレサは楽しそうに笑う。


 今、魔術格闘祭の幕が上がる!!




魔術格闘祭編、本格始動です!

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