第15話 マカロン
「何よ」
「いえ、何も?」
レイの訝しむ表情にむっ、とティアナは頬を膨らます。
ふい、と視線を逸らしたレイは、自分の前にあるお茶菓子達に眼を留め、表情を変えた。
「これは……!」
「アフターヌーンティセットよ。何か食べたいものはあるかしら」
色とりどりのデザートに、ソワソワと落ち着かないレイを面白そうに眺め、微笑みながらテレサは声をかけた。
「私もいただいてもよろしいのですか……?」
「えぇ、もちろんよ。ね、ティアナ?」
いきなり名前を呼ばれたティアナは少し驚いた表情でレイを見る。
小動物のような仕草をするレイを見て、ティアナはたまらず微笑んだ。
(なんだ、この子、こんなにかわいい仕草もできたのね。ちょっと意地悪してやろうかとも思ったけど……。なんだか、悪い気がするわね)
「いいわよ、別に」
頬杖をつき、2人の様子を眺めるティアナの表情は、とても穏やかなものだった。
「で、では、こちらを……」
「マカロンね?」
レイが小さく指し示した、白と紫のマーブルカラーをしたマカロンだった。
テレサはマカロンを小皿に移し、レイに差し出す。
「はい」
「ありがとうございます……!」
小皿を受け取り、皿の上にちょこんと座っているマカロンを、レイは色々な方向から眺める。
そして、レイはマカロンを両手で掴み、恐る恐る一口だけ口に含んだ。
「……!」
ぱぁ、と明るくなった顔で、レイはテレサを見る。
思わず笑みがこぼれたテレサは、食べていいのよ、と1つ頷いた。
その様子を見て、レイはマカロンに顔を戻し、もう一度、1口だけ食べた。
「お兄様! これ、この、まかろん? ってお菓子、すごく美味しいんですよ!」
「あぁ、知ってる。ゆっくり食べろ」
そう言ってレイの頭を優しく撫でるハルの姿は、妹思いの温和な兄そのものであった。
(この2人、こんな表情するんだ。お兄様って呼んでるし、すごく仲がいいんだろうな……。いいな……。って何を考えてるの私!!)
突然頭を横に振る親友を見て、テレサは首を傾げる。
ティアナに声をかけようと口を開きかけ、テレサは動きを止めた。
「お、ここにいた」
そこに響いたのは聞きなれた低い声。
教室以外では姿を見ることのない幻の存在、ドレットがそこにいた。
「「ドレット先生…!?」」
教室の外にいる姿を初めて見るティアナとテレサは驚きを隠せず、後ろに仰け反る。
そんな2人を迷惑そうに見た後、改めてテーブルを囲む4人をそれぞれ順に見つめたドレットは、1枚の紙を差し出した。
「ティアナ、ハル、あと銀髪。お前ら、魔術格闘祭に出ろ」
紙を受け取った4人は、内容を確認する。
それは、既に名前を書き込まれ、申込み処理を済まされたエントリーシートだった。
「「「はあぁあぁぁ!!!!???」」」
力なく告げられた言葉に、既に終えられた申し込みに、3人の奏でるハーモニーは食堂全体に轟いた。
第7話の内容を大きく変更いたしました。
よろしければご確認くださいm(__)m




