第14話 初対面
「ティアナ、出場するの?」
「うーん……」
放課後、2人は食堂のテラス席でアフターヌーンティセットを楽しんでいた。
日課であるこの行いは、2人が食堂に入り、席に着くと同時にデザートが運ばれてくるほど浸透しているものだった。
いつもならば笑顔の絶えない談笑をするところだが、今日の話題は魔術格闘祭についてだった。
テレサの質問に、曖昧にしか返事を返せないティアナを見て、親友は表情を曇らせる。
「なにかあったの? 今日のティアナ、何か変よ?」
「え? いや、別に何も?」
ギクリと肩を震わせ、適当に誤魔化そうとするティアナに、テレサはますます表情を曇らせる。
「……ただ、出場しようか迷ってるだけよ」
「……そう?」
乾いた笑いでどこまでも誤魔化すティアナに、不服ながらもテレサは納得しようと疑問を無理やり飲み込む。
珍しく2人の間を流れる沈黙を破ったのは、高すぎず、低すぎず、凛々しい男の声だった。
「おや、お嬢さんたち、奇遇ですね。お隣よろしいですか?」
2人は、声のした方へ同時に視線を向けた。
そこにあったのは、レイを連れて立つハルの姿だった。
「ハル……!?」
その姿に、露骨に嫌そうな顔をするティアナを、面白そうにハルは眺める。
テレサは、ハルの後ろ、レイの姿を見つけ、眼を見開いて驚いた。
「まぁ……!」
「あ、テレサは初対面よね。この子は……」
小さめの口を両手で覆い、驚喜の声を漏らすテレサに、紹介しようと声をかけたティアナの言葉は、テレサ自身の言葉で遮られた。
「貴女ね! 銀髪の剣士は!」
立ち上がり、笑顔でレイに詰め寄るテレサは、驚いて一歩引くレイを捕まえて飛び跳ねる。
「嬉しいわ! 会ってみたかったのよ」
笑顔で話しかけてくるテレサに、困惑でレイはハルに助けを求める。
何故テレサが興奮しているのか理解できないハルとティアナは、お互いに顔を見合わせた。
数分後、ようやく興奮が収まったテレサは、恥ずかしそうに俯き、身を縮める。
ハルはティアナの隣に、レイはテレサの隣に座り、再び訪れた沈黙に、ティアナは気まずそうに3人を見比べる。
「改めて、俺の前に座ってる彼女は妹の」
「レイと申します」
コホン、と咳払いをした後、口を開いたのは、ハル。
もう一度、と名を名乗り場の空気を改善させようと努めるレイ。
そんな2人を見て、テレサは更に申し訳なさそうに身を縮める。
「本当にごめんなさい……。貴女の話を聞いてから、一度会ってみたくて……」
そう弱々しく語るテレサを、レイは不思議そうな眼で眺める。
「私の噂、ですか」
小首を傾げて問うレイに、すかさずテレサは食って掛かる。
「そうよ。なんでも魔術の成績がとても高くて、去年のティアナにそっくりだって」
「貴女に……」
テレサから聞いた自身の噂に、レイはティアナと比べられたことに対する不快感を隠そうともしない表情でティアナを見る。