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第13話 祭り


「はい、注目ー」


 面倒だという雰囲気を隠そうともしないドレットが、クラス全体の視線を自分に集中させる。

 ドレットは生徒名簿に挟んだ1枚の紙を取り出し、掲げてみせる。


「今年もこの時期がやってきた。出場を考えているものは応募を忘れずになー」

 

 ドレットが掲げた1枚の紙に、クラス中がどよめく。


「来たわね……」

「えぇ……、魔術格闘祭!」


 魔術格闘祭。

 それは、この学園で一番規模の大きい魔術競技祭である。

 組、学年、男女問わぬ3人1チームで出場するこの祭りは、トーナメント形式で行われ、優勝したチームには毎年異なる特典が与えられる。


「今回の特典は……、今年1年間の単位免除」

「「「はぁ!?」」」


 特典の内容に、更にざわめく生徒達。

 あたりを見回す者がいれば、立ち上がる者、ガッツポーズをとる者までいる。

 窓際の居眠り王子はもちろん寝たままである。


「そのかわり、脱落者は一か月の補修なー」

「「「えぇー!!」」」


 豪華景品と引き換えの代償が重いことに落胆し、先程までの活気は春風に流され消えていった。


「そして、優勝者は国王陛下謁見の名誉を賜る」

「……は?」


 ドレットから告げられた言葉は、あまりにも意外だった。

 この国の国王は、滅多に姿を現すことがないため、国民のほとんどが年齢すら知らぬありさまだった。

 再び起こったどよめきの中で、特に驚愕しているのは、ティアナだった。


(お父様が……? 人の前に立つ? いいえ、そんなことよりも、王族が国民に姿を……? 何故? どうして今そんなことを?)


「ティアナ、凄いわ! 国王陛下にお目にかかれるのよ!」


 興奮した様子で話しかけてくるテレサに、どう返していいのかわからぬまま、ティアナは曖昧な態度をとった。


「え、えぇ、そうね……」


(これは何か裏がある。そうに違いないわ。だって、あのお父様がそんなことするはずないもの。でも、一体……?)


「出場締め切りは今日の放課後まで。急ぎではあるが、ちゃんと考えてから応募しろよー」


 そう言い残し、ドレットは教室を後にした。

 落ち着くことのない生徒達には気もくれず。

 動揺するティアナはふいにハルに目をやる。


(先週、あんなことがあったから、やたら避けてたけど……。でも、王族のこと気にしてたわよね。国王謁見の件で、何もしない訳が……)


 そう考察しティアナが見つめたその先にいるハルは、珍しく体を起こし、頬杖を突きながら窓の外を眺めていた。


「……!」


 静かに、外を眺める彼の眼は、鋭く、遠目から見てもわかる殺気に、ティアナの背筋はゾクリと冷えた。




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