第127話 力量
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「我の導きに従い、その力を示せ! 蔦ァアア!!」
「風の女神、ゼピュロス!」
開戦の合図と共に、2人は同時に走り出す。
発生した多量の蔦を、ティアナは容赦なく切り裂いていく。
互いの手を知る2人は、初っ端から、かまし合った。
「ッ!?」
「……ッ」
風を蔦で受け、寸でのところで躱し。
蔦を切り裂き、蹴り飛ばしながら躱し。
2人は、拳を繰り出した。
「ハッ、所詮は読まれるような作戦ってわけか。お嬢様ァ!」
「あんたこそ、この私を相手に最初から格闘戦に持ち込もうなんて、いい度胸じゃない!」
2人は互いの拳を受け止め、後ろに跳ぶ。
間合いを掴みながら、ハルは嗤う。
(絶対に勝てない。誰も勝ったことが無い。それでいて、今から俺に負ける! いいねぇ)
「滾らねぇわけがねぇよな!!」
「さあ、かかってきなさい!!」
ハルの瞳孔が開く。
やる気に満ちた2人は、互いに挑発し合った。
「蔦ァアア!!」
「冬の女神、スカディ!」
ハルは多量の蔦をティアナに絡ませようとする。
だがティアナはこれを氷の塊で防ぎ魔術を重ねた。
「炎の女神、ヘスティア!!」
あらかじめ出していた氷の中にティアナは炎を灯す。
それにより、氷は溶けるよりも先に爆発した。
「なっ!?」
四散する氷の欠片は蔦を切り裂き、容赦なくハルへと飛んでいく。
細かく肌を切り裂く氷に、ハルは顔を歪めた。
(んなもんありかよ!?)
今まで見せたことの無かった魔術の応用に、ハルは反応を鈍らせる。
その間、ティアナはハルの目前へ迫った。
「しまっ!」
「はぁあ!!」
解いたハルの腕を掴み、ティアナはその体を投げ飛ばす。
飛ばされながら、何とか受け身を取ったハルに、ティアナは止まることなく攻撃を仕掛ける。
「風の女神、ゼピュロス!」
「っ、蔦ァアア!」
無理な姿勢から、ハクは蔦を召喚する。
豪風を蔦で受け止め、ハクは体勢を立て直した。
(あぁ、クソ。戦い馴れすぎだろ!! そりゃ勝てる訳ねぇよ!)
止まることなく発せられるティアナの攻撃に、ハルは苦笑する。
冷や汗が伝う頬を見ないふりをして、ハルは飛び出した。
(俺よりもティアナの方が圧倒的に魔力量が多い! いつまでも蔦で受け流していたら俺の方が先に魔力が尽きる!! なんとかして、無駄撃ちさせねぇと!)
止めることなく考え続けるハルは、立ち塞がるティアナを捉える。
その背後に、無数の炎を視認して。
「!?」
「炎の女神、ヘスティア!!」
己へ向けて飛んでくる炎玉に、ハルは口角を上げた。
(生憎だな、ティアナ。こっちは、火の扱いには慣れてんだよ!!)
眼を見開いたハルは、蔦を仕舞い込む。
魔術を発動することなく、ハルは炎の中へ猛進した。
「!?」
「ティアナぁあああ!!」
予想外のハルの行動に、ティアナはたじろいだ。
火傷を恐れず迫るハルに、今度はティアナが冷や汗をかく。
「馬鹿じゃないの!?」
「火傷程度の火力しか出せねぇで、俺を止められると思うなよ!!」
「……ッ、あんた、狂ってるわ!」
嗤いながら迫りくるハルに、ティアナも釣られて口角を上げる。
新たに炎を出現させながら、ティアナはハルを対峙する。
「褒めんなよ!」
「えぇ、今回は、褒めてるわ!」
ティアナはハルに向け、炎を再度発射する。
ハルはまたそれを生身で受け止め、ティアナへと殴り掛かった。
「おらあ!」
「ッ、冬の女神!!」
炎を纏った拳は、ティアナの頬を掠る。
ハルの猛攻を躱したティアナは、すぐさま魔術を発動する。
「スカディ!!!」
止まれないハルに、ティアナは真横から氷を打ち出す。
鋭く尖った氷に、ハルは眼を見開き、笑った。
「……そう来ると」
「!?」
「思ったぜ!!」
ギラリ、と光る瞳でハルはティアナを睨む。
その眼に、ティアナは不覚にも怯んでしまった。
(ティアナの攻撃は、他の誰よりも多様性がある。だが、コイツは、1パターンでしか魔法を発動していない!! であれば、そんなの、躱すのは誰より容易いんだよ!!)
「蔦あああああ!!」
突如として発生した蔦の壁は、氷柱を砕くことなく器用に掴み。
ティアナへと、投げ返した。
「……え?」
至近距離から返される氷柱に、ティアナは眼を見開く。
慌てて、ティアナは後ろへ跳びながら魔術を発動させた。
「ッ、ヘスティア!!」
詠唱を短縮し、無理やり展開させる。
距離がほとんどなかったために、目の前で起きた爆発に巻き込まれ、ティアナの身体は吹き飛んだ。
「ッあぁあ!!」
床に打ち付けられ、ティアナの身体には鈍痛が走る。
蔦の壁により爆発から護られたハルは、すかさずティアナの方へ飛び出した。
だが、底に待ち構えていたのは、笑みを浮かべた彼女。
「な!?」
「ゼピュロス!!!」
床に這い蹲りながら、ティアナは更に魔術を発動させた。
容赦なく吹き荒ぶ風は、ハルの二の腕を切り刻む。
「クッ、ああ!!」
体を伝う激痛に、ハルは足を止め両腕を抱く。
息を切らしながら立ち上がるティアナは髪を揺らしてハルを見つめる。
(こいつもコイツで、十分化け物じゃねぇか……!! 爆発に巻き込まれながら魔術展開とか、常人じゃできねぇぞ……!?)
互いに負傷し、2人は距離を取る。
ハルの方が重傷であったが、ティアナもまた体の至る所に傷ができていた。
「……やるわね」
「当然だろ」
投げられた言葉に、ハルは虚勢で返す。
(同じチームだったのに、くそ、手の内が読めねぇ!! ティアナはこんなにも、戦術に長けた魔術師だったのか!!)
相手の力量を図り損ねた自分に、ハルは悔しさで唇を噛む。
2人は、互いに相手の出方を窺った。
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