第115話 観客視点
本日二話目の投稿です
「アルフえげつねぇ……」
「フン、これくらい当然だろう」
西ゲートにて、シークとハイドがフィールド上のアルフを見つめ、それぞれの感想を述べる。
「俺らのとこまで風来たぞ?」
「それだけ、アルフが化け物という事だ」
眼鏡に手を添えながら、ハイドはシークに言い放つ。
幼馴染とはいえ、アルフを化け物呼ばわりするハイドに、シークは呆れながら肯定する。
「追いつけねぇなあ……」
「アイツには、到底かなわないさ」
眩しそうにアルフの背中を見つめる2人は、幼い頃の彼を重ね、眼を細める。
寂しそうに笑うシークの背中を叩きながら、ハイドは眼を逸らす。
従弟の行動に、今度は嬉しそうに口角を上げながら、シークはハイドの肩を叩く。
「やっぱ、観客席で見ねぇ?」
「今更。空いてる席なんてないぞ」
ゲートからフィールドは見渡せるが、観客席程見通しが良くない。
惜しいことをした、と肩を落としながらシークは溜め息を吐く。
「だよねぇ……」
極端に落ち込むシークを放置し、ハイドはアルフに眼を戻した。
同時刻観客席にて、フォーネとドレットはフィールドを眺めていた。
2人の周りには誰も座っておらず、特等席ともいえる最前列で自分の娘の勇姿を眼にし、フィーネは眉を顰める。
「この様とは。やはり、魔力回路を移植など無謀だったのだろうな」
「まぁ、もうちょっと見てから見切ろうぜ」
脚を組み、口元を扇子で隠しながらレイを見るフィーネに、ドレットは宥める様に声をかける。
その言葉に、表情を無くし、ゴーレムをまた1体切り刻んでいくレイを眺め、フィーネは足を組み替える。
「落ち着かないのは分かるが、信じてもいんじゃねぇのか?」
「……誰が落ち着かないと?」
レイから長時間眼を離さぬ様、横目で見てくるフィーネをドレットは指さす。
自分に向けられた指に、フィーネは目元を僅かに細め、ドレットの手を扇子で叩く。
「それにしても、ハルにはもうちょい言い方があったのでは?」
「あれでよい」
叩かれた手を撫でながら、ドレットはフィーネに問う。
扇子を口元に戻し、レイに視線を送るフィーネは、反応することすら煩わしいように断言した。
「そうですか」
諦めたように肩を竦めるドレットは、ふとフィーネの隣へ眼をやる。
「そういえば、お前の執事どこ行った?」
「なにやら準備があると言ってどこかへ消えた」
アルフへ斬りかかり、横に飛ばされたレイを見てフィーネは僅かに肩を揺らしながらドレットの問いに答える。
チラリ、とドレットへ視線を送り、呆れたようにフィーネは呟いた。
「お前は、話題が尽きないのだな」
「まぁ、一応教師やってるんでね」
教師とは、一定時刻喋り続ける職業である。
それなりに能力がつく、と簡単に説明しながらドレットもまたレイへ視線を送る。
「それにしても寒い」
「耐えるがいい」